第197回
『仕事の壁はくぐるのだ』発刊しました!
2025.08.21更新
本日8月21日(木)、『仕事の壁はくぐるのだ』が発売となりました!
本書が発刊となった経緯について、巻末に収録した編集部からの言葉を、こちらにも掲載いたします。
刊行によせて
本書は、二〇二一年の秋頃から三年ほどかけて、著者の川島蓉子さんに書き下ろしていただいたものです。二〇二四年秋に脱稿し、刊行に向けての準備を進めていた矢先、二〇二五年一月、川島さんは事故で急逝されてしまいました。あまりに突然のことに茫然としておりましたが、ご友人のみなさまのサポートもあり、ご遺族と相談のうえ、予定どおり、本を刊行することとなりました。
女性が大企業の第一線で仕事をする、最初の世代であった川島さんの経験が綴られた本書は、その鮮やかで貴重な記録であり、自伝でもあります。
と同時に、今、会社で奮闘している方々に、ぜひ届けたい一冊でもあります。
人が集まり働く、そこに起こるさまざまなトラブルや葛藤を「壁」と呼ぶならば、いつの時代にも「壁」はあります。「女性が企業で活躍する」というと、男性社会、競争社会の中で、そんな「壁」を乗り越えたり、ぶち当たって突破したり、という勇ましいサクセスストーリーが語られがちですが、川島さんの「壁」との付き合い方は、ある種独特です。
くぐったり、ずらしたり、かわしたり......。それは戦略的な手段ではなく、声高な権利の主張でもなく、あくまでも真しん摯し に楽しく仕事を続けようとする日々の中で、編み出された実践の数々です。
柔らかでしなやかな、川島さんからのエールが、たくさんの方に届きますように。
川島さんのご冥福を、心よりお祈りいたします。
――編集部一同
正直なところ、今でもまだ、川島さんが亡くなられたことが現実ではないような、とらえどころのないような心持ちもしています。ただ、生前に交流のあった寄藤文平さんに装丁をデザインいただき、このカバーをまとった見本が手元に届いたとき、きっと喜んでくださっている、という感覚を持つことができました。
生前の川島さんをご存じの方はもちろん、本書で初めて川島さんに出会う方にも、できるだけたくさんの方々に、届くようにと願っています。
「はじめに」を公開します
本の内容については、「はじめに」を読んでいただくのが一番伝わるかと思い、ミシマガの連載「仕事の壁のくぐり抜け方」の初回にも掲載した内容ですが、ここに再掲いたします。
はじめに
みなさま、こんにちは。ライターの川島蓉子と申します。
一九六一年生まれの六十二歳。小さい頃から服が大好きで、日々、カラフルな服(ちょっとチンドン屋さんのようかも)を自己流でコーディネートするのを楽しんできました。フリーライターとして、物書きを生業としながら、企業とブランドにまつわるプロジェクトを手がけています。
最初からフリーだったわけではありません。四年前までは、大きな会社で "会社員" をやっていました。大学を卒業して就職した会社に居つき、一度も転職することなく、三十六年も働いてきたのです。
「ファッションが好き、ファッションにまつわる仕事をしたい」という一心で入社した会社でした。世に名前が通っているファッションの会社で働ける――入社前は「どんなキャリアが築けるだろう」とワクワクしたのを覚えています。
ところが入社し、自分の甘さを思い知ることになりました。当時は男性と女性の区別がはっきりとあった時代。男性社員と女性社員の待遇格差に始まり、上司や同僚との人間関係、やりたいことと利益のバランスなど、仕事にまつわるなんやかやは、まさに悩みだらけ......。
「女性だけ制服を着なくてはならないのはなぜ?」「子どもを産んで仕事を続けるのはよくないこと?」「仕事はつらそうにやらなければならない。おもしろがってはいけないの?」「新しいことをやるのは、会社に迷惑をかけることなの?」。さまざまな壁に突き当たりました。
一方で私の年代は、会社と女性の関係が変わっていく先頭に位置しています。
一九八五年に男女雇用機会均等法が、一九九一年に育児休業法が成立したのと、私の結婚・出産の時期は、ほぼ重なっていたのです。その波に乗った私は、結婚して仕事を続けた第一号、子どもを産んだ第一号、年子で産んだ第一号、管理職から役員になった第一号など、良くも悪くも一番手を担ってきました。
最初だから、会社もどうしていいかわからない。私もどこまで主張していいかわからない。わからない同士がなんとか折り合いをつけ、やってきたのです。
しかも私は、小さい頃から規則に縛られるのが嫌いで、新しいことやおもしろいことをやるのが大好き――障害があっても、その向こうにある景色を見てみたい、怖さより好奇心が勝ってしまうタイプです。小学生の頃、有刺鉄線が張ってある空き地に何があるか知りたくなり、無理やりくぐり抜けたら鉄線に引っかかって傷だらけになって、母に叱られた、なんてこともありました。
だから、会社でも新しいことをやってみたいと提案しては撃沈続き。「なんだかハズレものかも」「会社員の常識がないのかも」と不安を感じたことは数知れず――ただ会社は、そんな私を時に受け入れ、新しいことやおもしろいことをやらせてくれました。
そして六十歳を前に「会社でやれることはやった」と心の区切りがついたので、会社を辞めることにしたのです。いざフリーになってみると、何もかも自由だから、嬉しいこと、楽しいことがある一方、悩みがなくなったかというとそうでもありませんでした。
そんな私が、今まで歩いてきた、そしてこれから歩いていこうとする道について書いてみました。会社で何かの「壁」に囲まれ、困ったり悩んだりしている方々の、ちょっとしたヒントや助けになれたら幸いです。
銀座の森岡書店にて、
「川島蓉子のことば」が開催されます。
本書の発売を記念して、また、川島さんとのお別れの場として、ご友人のみなさまが事務局となり、川島蓉子さんの本と言葉の展示が開催されます。詳細は下記のとおりです。ご縁がありましたらぜひ、足をお運びください。
川島蓉子のことば
<日時>
2025年8月26日(火) ―31日(日)
10:00~19:00 | 入場無料・予約制
<会場>
森岡書店 銀座店
〒104-0061 東京都中央区銀座1丁目28-15 鈴木ビル
本の発売に際して。また、毎朝3時に起きて原稿を書く生活を愛した川島さんらしいお別れの場として。川島蓉子さんの本と言葉を展示します。
予約制です。きっと大きな会は望まないであろう故人の気持ちに寄り添い、お店のスペースは小さく、一回の定員は8名ほどです。予約なしでご来店の場合、入店できないこともありますのでご了承ください。
会場では「わたしの心にのこる川島さんのことば」も展示します。川島蓉子が語ったことばと、川島蓉子を語ることばが織りなす6日間。川島さんへの想いと共に、ぜひお立ち寄りください。
展開の様子
ジュンク堂書店 池袋本店さんは2箇所で展開 ①ビジネス書 話題書売り場
②仕事術の本コーナー
オリオン書房 ルミネ立川店
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書店店頭では、本書の目じるしとしてPOPとパネルを設置しているお店もございます。
ぜひ、ビジネス書売り場、もしくは文芸書のエッセイ本コーナーをご覧ください!
POP
パネル