夏休み特集(1)三浦豊さんに訊く、夏におすすめの木

第4回

夏休み特集(1)三浦豊さんに訊く、夏におすすめの木

2018.07.27更新

 毎日「これでもか!」というほど暑い日がつづきますね。

 でも、まだまだ夏はこれからが本番。

 せっかくの夏を楽しもう! ということで、2回にわたり「夏休み特集」をお届けします。
 特集1回目は、『木のみかた』(ミシマ社)の著者であり、森の案内人として日本全国3000箇所以上もの森を知り尽くす三浦豊さんに、夏はこれだ! という木を3つ教えてもらいました。

0727-1.jpg

『木のみかた 街を歩こう、森へ行こう』三浦豊(ミシマ社)

 今年の夏は暑い。テレビのニュースを観てもネットニュースを見ても、街なかで出会う人々の表情を見わたしてみても、世間は猛暑に覆われている。

 ところが一歩森の中へ入ってみると、途端に涼しくなる。 森がなぜ涼しくなるのかというと理由は2つある。木々が直射日光を塞ぐのと、風が吹きやすくなるからだ。

 なぜ風が吹きやすくなるのかというと、日当たりが良いところと日陰になるところは気圧が変わるので、木々が日差しを塞いで薄暗くなるところには風が吹きやすくなるというわけだ。

 草木の葉が風に揺れているのを見ると、心が和んで、なんとなく猛暑に襲われている人間界から遠のいていくような気がする。

 そこでずばり、今回は夏におすすめの木を紹介します!

 夏におすすめの木、1本目はエノキです!

0727-2.jpg

 なんといってもこの木、漢字で書くと「榎」となる。なぜ木へんに夏で榎なのか。ずっと謎だった。でもある日、この木の下に佇んでいると謎が解けた。ものすごく居心地が良いのだ。とくに夏に。

 「えのき」の語源は「えだのき」で、枝ぶりが細かいことから名づけられている。根元で横になって見上げると、その細かい枝葉の隙間から、木漏れ日がまるで星空のようにキラキラと視界いっぱいに広がる。

 枝ぶりが細かいだけあって、夏は葉がびっしりと生い茂って、この木の木陰は暗くなる。

 そして1本で、まるで森のように大きくなるのも榎の特徴だ。広い原っぱに1本で生えていると、 長寿番組「世界ふしぎ発見!」のCMに出てくる「この木なんの木」のような樹形になって、その木陰は、どんな真夏の昼間でも昼寝ができるような居心地になる。

 昔の日本人も同じことを感じたようで、東海道や中山道などの街道の一里塚には榎を植えて、行き交う人々がゆっくりと休めるようにしていた。

0727-3.jpg0727-4.jpg


 2本目はサルスベリ!

 この木は中国南部に自生をしている木で、木登りしているサルが滑るくらい樹肌がつるつるとしている。日本には約1000年くらい前に渡ってきたようで、宇治の平等院鳳凰堂が完成した1053年にはお堂の近くに植えられたことが発掘調査でわかっている。

 サルスベリはあまり大きくならずに剪定にもよく耐えるので、最近は街なかの並木や公園で植えられることが増えてきた。夏になると、赤やピンク、ときには白色の花を咲かせて、すごくよく目立つ。この圧倒的なまでに華やかな花をなんと約3カ月くらい咲かせつづけるので、原産地の南中国では百日紅(ひゃくじつこう)と呼ばれている。

 最近は街中がヒートアイランド現象で年々暑くなってきている。街に生えている多くの木も、行き交う人と同じように暑さにげんなりとしているように感じるが、このサルスベリは自生地が亜熱帯なので、のびのびと元気いっぱいに酷暑の街で生きている。まさに夏にふさわしい木だ。


 3本目は、ネムノキ!

0727-5.jpg

 この木もサルスベリと同じように、夏になるとたくさんの花を咲かせる。ただ、木の葉っぱと花は独特でファンも多い。たしかに愛らしい姿をしていると僕も思う。

 シダのような形をした葉っぱは夜になるとペタンと閉じて、それが眠りの木と呼ばれ、ネムノキの語源となっている。

 北は秋田県まで自生しているが、ネムノキの仲間の多くは亜熱帯や熱帯地方に自生していて、横に広がる樹形は南国情緒を醸し出している。川沿い自生することが多く、川風を受けて、さわさわと葉を揺らせていることが多い。

 驚くべきことに、このネムノキの花は1日花で、先端がピンク色がかった白い花を、次から次へと夕方くらいから咲かせはじめて、次の日の昼過ぎになると萎んで落下する。

 なぜ夜になって葉を閉じるのか謎だったが、つい先日、月夜に照らされた川沿いを散歩していたときにネムノキの姿を見て衝撃を受けた。葉っぱが閉じて、たくさん咲いている花のまわりに、 たくさんの羽虫(たぶん蛾の仲間だと思う)が飛びまわり、花の蜜を吸っていた。

 夏といっても夜になると涼しくて、川のせせらぎとともに吹く風も少し冷たかった。

 酷暑でぐったりとしている人間界とはちがう世界が、たしかにそこにあった。

0727-6.jpg0727-7.jpg

 もともと日本は森に覆われていたので、夏といってもそれほど暑くなかったことだろう。森の中にいると、日本に本来あった夏の空気を感じることができる。

 みなさん、暑い夏こそ、ぜひ森へ行きましょう!


プロフィール

三浦 豊(みうら・ゆたか)
1977年京都市生まれ。森の案内人、庭師。日本大学で建築を学んだ後、庭師になるために京都へ帰郷。2年間の修行を経て、日本中を巡る長い旅に出た。 2010年より「森の案内人」として活動をはじめる。

ホームページ https://www.niwatomori.com


おすすめの記事

編集部が厳選した、今オススメの記事をご紹介!!

  • 尾崎世界観×寄藤文平 いま、表現者であるということ(1)

    尾崎世界観×寄藤文平 いま、表現者であるということ(1)

    ミシマガ編集部

    2018/9/26(水)に発売されたクリープハイプの新アルバム『泣きたくなるほど嬉しい日々に』。そのデザインを手がけた寄藤文平さんと尾崎世界観さんは、4月にミシマガで対談しています。ミシマ社とも縁の深いお二人の対談、この機にぜひお読みください。(実は、今回の新アルバムの特装版の詩集と、タワーレコード特典の豆本の編集をミシマ社がお手伝いしています!)

  • 西村佳哲×ナカムラケンタ 最近〝仕事〟どう?(1)

    西村佳哲×ナカムラケンタ 最近〝仕事〟どう?(1)

    ミシマガ編集部

    みなさん、最近、仕事どうですか? ナカムラケンタさんの『生きるように働く』と、『いま、地方で生きるということ』の著者でもある、西村佳哲さんの『一緒に冒険をする』(弘文堂)の2冊の刊行を記念して、2018年9月18日、代官山 蔦屋書店にてトークイベントが行われました。「最近〝仕事〟どう?」をテーマに、それぞれの角度から「仕事」について考え続けてこられたお二人が、自著の話、人が働くことの根っこについて、そして「働き方改革」までを語り合いました。そんなお話の一部を、前・後編2日間連続でお届けします。どうぞ!

  • 町田 康×江 弘毅 「大阪弁で書く」とはどういうことか(1)

    町田 康×江 弘毅 「大阪弁で書く」とはどういうことか(1)

    ミシマガ編集部

    2018年6月22日、編集者であり長年街場を見つめてきた江弘毅さんがはじめて「ブンガク」を描いた、『K氏の大阪弁ブンガク論』が刊行になりました。司馬遼太郎や山崎豊子といった国民的作家から、黒川博行、和田竜など現代作家まで縦横無尽に書きまくっている本作で、2章を割いて江さんが絶賛しているのが、作家・町田康さん。本書の刊行を記念して(そして江さんが熱望して!)、紀伊國屋書店梅田本店にておこなわれた、お二人の対談の様子をお届けします。

  • 前田エマ×北野新太 将棋に恋をした。(1)

    前田エマ×北野新太 将棋に恋をした。(1)

    ミシマガ編集部

    2017年12月に発刊された『等身の棋士』。静かに燃える棋士たちの世界が著者の北野新太さんによる熱い文章で綴られています。この一冊に、ミシマ社に来て間もない新人ノザキは衝撃を受けたのでした。そして、この本が刊行された当初から、いつかはこのお二人の対談を、と願い続けて半年。念願の企画が今回ついに実現しました。

ページトップへ