第32回
『今夜 凶暴だから わたし』発刊に寄せて(高橋さん、濱さん、装丁、編集担当のコメント)
2019.12.18更新
こんにちは、ミシマガ編集部です。
いよいよ本日、『今夜 凶暴だから わたし』が発刊日を迎えました!!
『今夜 凶暴だから わたし』高橋久美子・詩/濱愛子・絵(ミシマ社)
今年スタートのレーベル「ちいさいミシマ社」ならではの、全ページフルカラー印刷、上製で色々な用紙を重ね合わせた装丁などなど、やりたいこと全部盛り! な造本も見所です。
本日は発刊記念として、詩を書かれた高橋久美子さんと絵を描かれた濱愛子さん、デザインを手がけてくださった鈴木千佳子さん、担当編集のホシノからの「本書に寄せて」を掲載します。
著者のお二人が3年かけて作り上げたこの一冊、ぜひお手にとっていただけたらと思います。
私にとって出版社を通して発表される詩画集は気づけば約10年ぶりとなっていました。この詩達は私の10年間の落とし物、きっともう会えないもう一人の私の置き手紙かもしれません。そして、届けられる全ての方々への応援歌...いえ座談会なのだと思います。いじけたり、歓喜したり、理不尽に思ったり、自由になりたかったり、怖かったり、焦ったり、もう遅かったりすることもたくさんたくさんあるでしょう。それでも、こうやって何かを感じることを諦めずにいましょうね。感じることだけが私達の最大の自由なのだから、しんどいけど感じながら生きていきましょうね。
ページをめくると10年間の私が静かに袖をひっぱります。日めくりカレンダーを逆再生するみたいに募っていく思いは、声もあげず、静かにここに鎮座します。おかしくて恥ずかしい。けれど、本になったことで、私はこの感じた日々からいつしか教えられる日が来るでしょう。ちいさいミシマ社さん、トライしてくれてありがとう。濱さん、三年半も一緒に走ってくれてありがとう。読んでくれたみなさん本当にありがとう。これからもよろしく!
高橋久美子
勤めていたデザイン事務所がクローズする2016年、
知人から「本を作ってうちで展示しませんか」と声をかけてもらいました。
その後まもなく出会った高橋さんを
本作りに誘ったものの、
私の絵はなかなか動き出しませんでした。
高橋さんとやり取りを重ねるうちに
自分の衝動を大切に、観察しながら
体が自然にうごく方へ遠慮せず素直になってみようと思えるようになって
少しずつ見えてきたのは子供時代のリズムでした。
それは頭で考えるんじゃなくてもともと備わっているもの、体が覚えている感覚。
自分の絵をコントロールできないことに
後ろめたさを感じてきたけどそれは健全なことでもあるのかも。
そんな時は楽観的に挑戦したいと、
この三年間、いろいろな人に出会い支えられながら、一歩を踏み出せた本です。
濱愛子
はじめて作品を拝見した時、
高橋さんの詩の冒頭にある、「三十五歳の女」にどきっとし、
濱さんのペンギンの絵に、にやりとしました。
時折、お二人の作品の中からみえかくれする鋭さや、かわいらしさを、
言葉と絵、それぞれからばらばらに感じてもらうのではなく、
かといって、単に組み合わせたものとしてでもない形を、
デザインではあらわしたいと考えていました。
制作過程でも、その距離感に一番悩みました。
詩や絵との距離が近づいたり離れたり、
読みながら、一つの作品が編まれていくような、
一冊になった気がしています。
鈴木千佳子(装丁担当)
詩画集の編集を担当するのは、今回がはじめての経験でした。
普段、編集することの多い単行本では、言葉の意味を中心に仕事が進むのですが、
詩画集となると、高橋さん、濱さん、デザイナーの鈴木さんとの打合せで飛び交うのは、
イメージ・感触・雰囲気・・・といった感覚的なやりとり。
「正統派だけど尖っている」「尖っているといっても、そっちの尖っているではない」・・・
それぞれの感覚が、制作の過程で練り込まれて、一冊の作品になってゆくのは、とても面白く、得がたい経験でした。
冒頭の一篇には、「三十五歳の女」、あとがきの一篇には「三十七歳のわたし」という言葉が出てきます。
自分自身、そこに近い一読者としても、何度もページをめくりたい一冊です。
ミシマ社 星野友里(編集担当)
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