第39回
『小田嶋隆のコラムの切り口』刊行記念特集(1)まえがきを公開&『小田嶋隆のコラムの切り口』ラジオ
2020.03.20更新
こんにちは。ミシマガ編集部です。
本日いよいよ、天才コラムニストの技がいかんなく詰まった小田嶋隆さんの傑作コラム集、『小田嶋隆のコラムの切り口』が発売となります!
小田嶋さんといえば、時事問題などに、読み手がうなるような角度から切り込むコラムの数々を思い浮かべる方も多いと思います。一方で、掲載される媒体、コラムの長さ、編集者に与えられるテーマなど、そのときどきによって、どんな設定でも切ることができる、その変幻自在さにもまた、小田嶋さんの凄味が宿っています。
本書は、後者にスポットを当て、昔のものから新しいものまで、長さや掲載された媒体も様々なコラムを、使われている技法ごとに分けて編んだコラム集です。文体や切り口は、本当にさまざま。そのバラエティから、小田嶋さんの、そしてコラムという形式の奥深さを、味わっていただけたらと思います。
本日は刊行を記念して、『小田嶋隆のコラムの切り口』のまえがきを公開いたします。
まえがき
この二十年ほどの間に執筆した原稿は、書きかけのものから中途で投げ出したも断片も含めて、すべて、クラウド(←雲)上に保管している。クラウドとは、インターネット回線に仮設されている記憶領域のこと。私は、いくつかの企業が運営するクラウドサービスと契約している。まるで雲をつかむような話なのだが、じっさい、データの保管場所として最も信頼できるのは、架空の領域なのである。
本書は、その雲の上に積み上げられたあれやこれやの半端仕事を再構成したものだ・・・という言い方は良くない。誤解を招く。ご近所の奥様方が不用品を持ち寄って開催するバザーのようでもあれば、ゆうべのハンバーグをもう一回煮込んで弁当のおかずに仕立て上げた間に合わせのミートボールみたいでもある。どっちにしてもケチくさい。
違う。本書はそういういいかげんなものではない。ミシマ社の優秀なスタッフが、オダジマの二十年間の全仕事の中から最上級のテキストを厳選して、丁寧にホコリを払った上 で、テーマ別に陳列展示したリミックス版のコラム集が、すなわちいまあなたが手にとっているこの本なのである。
章ごとのテーマは、二〇一二年にミシマ社から刊行した拙著『小田嶋隆のコラム道』の中で、私が「コラムの書き方」として提示したメソッドをほとんどそのまま持ってきている。 ということはつまり、本書は、「小田嶋隆のコラム道・実践編」ないしは「書き方から学ぶコラム執筆のABC」とも言うべき実例集としての機能を備えたサブ・テキストでもある。
もちろん、通常のコラム集として読むことも可能だ。
いずれにせよ、執筆者の意図や技巧を軸に、書く側の視点からコラムの種明かしをした 書籍は、これまでに本邦では出版されていなかったものだと自負している。
一読すればわかることだが、本書に集成されたコラムは、章ごとに手触りも読後感もまるで違っている。バラけていると申し上げても良い。とはいえ、本書の作風が醸している統一感の欠如は、そのままコラムという形式の懐の深さの証明でもある。 各章の冒頭に、簡単な解説を付してある。 また、各コラムの初出の出典と執筆時期は、それぞれページの末尾に付記している。 読者の皆さんが、本書をご自身のコラム執筆のテキストとして利用してくれるのであれば、著者としてこれ以上の喜びはない。あるいは、食後の消化促進に、運動後の疲労回復のために、でなければ受験勉強の合間の逃避先として適宜利用してくださっても良い。三冊ほど重ねれば、枕にもなる。ぜひ、お役に立ててほしい。
ミシマガラジオ:『小田嶋隆のコラムの切り口』ラジオ
このラジオでは、小田嶋さんに、本書が完成して思うことや、ブログやSNSでコラムを書く方へのアドバイスなどを語っていただきました。
コラムにおいて、紙媒体とウェブ媒体はどう違うのか? 説明不足と説明過剰は、どちらがより悪いのか?・・・ぜひラジオを聴いてみてください。
〈聞き手:編集チーム ホシノ〉
編集部からのお知らせ
小田嶋隆さんの本『小田嶋隆のコラム道』『上を向いてアルコール』も好評発売中です!
小田嶋さんは『コラムの切り口』の前にもミシマ社から2冊の本を出されています。
1冊目が『小田嶋隆のコラム道』です。『コラムの切り口』のまえがきに〈本書は、「小田嶋隆のコラム道・実践編」ないしは「書き方から学ぶコラム執筆のABC」とも言うべき実例集としての機能を備えたサブ・テキストでもある。〉とあるように、『コラムの切り口』といわば一対になる本で、ぜひ合わせて読んでいただきたい一冊です。
2冊目が話題作『上を向いてアルコール』です。こちらは小田嶋さんが自身の「アル中」体験を赤裸々に書かれた衝撃の一冊です。
小田嶋隆さんの新刊『ア・ピース・オブ・警句』(日経BP)が発刊しました!
桜を見る会、検事長定年延長、新型コロナ対策。
延々と続く無責任体制の空気はいつから始まった?
現状肯定の圧力に抗し続けて5年間
「これはおかしい」と、声を上げ続けたコラムの集大成。