& BOOKS

第2回

【& BOOKS 】UNITÉ(東京・三鷹)

2023.04.08更新

 こんにちは。営業チームのニシオです。

 本日のミシマガジンは新企画「& BOOKS」です。本の届け方、出合い方が多様化している中で、「本屋」もまたどんどんと新しい形が生まれています。そんな中、「○○と本」という独自の取り組みをされている魅力的なお店を紹介させていただくのが今回の企画です。

 前回に続いて、第二回目は、三鷹にある独立系書店UNITÉ(ユニテ)の大森さんにお話をうかがいました。大森さんは現在、若冠28歳にして書店を経営されながら、UNITÉ channel【三鷹・本と珈琲の店】というYouTubeチャンネルを運営されています。

 そもそも「書店をやっていくのは難しい」と言われる中、どのように本屋を運営されているのか。動画を通じて、本の世界を、魅力を伝えていく可能性とは。この時代の読者としての本、書店との付き合い方とは・・・etc、これからの「届け方」について大森さんからたっぷりお話をうかがいました!

(構成・写真:西尾晃一)

バイト代はすべて本代に

ーー 昔から本はお好きでしたか?

大森 いえ、じつは20歳の頃から本を読み始めたんです。数学は得意だったんですが、国語が全然できなくて、それも現代文がまったく(笑)。本を読むことにかなりのコンプレックスを抱いていて、それを克服しようと思い、読み始めたのがきっかけですね。

ーー そうだったんですね!

大森 大学時代、法学部に在籍していたので、法律の条文を読むことが多かったんですが、その文章が硬かった。でも逆に、その硬い文章がスタートで読書が始まったので、条文よりはおもろいなあ、という感じで、思想、歴史、政治、小説、エッセイ、と読みやすいものに下っていけましたね。

IMG_1341 (1).jpg小説、思想、絵本、アート、サイエンス・・・分野にとらわれずに本が並んでいます。

ーー 小説から入ると、思想系はしんどいかもしれないですね・・・

大森 そうだと思います。大学の頃は、月に30〜40冊買ってました。大体、毎月6〜7万は使っていたんじゃないですか。当時、書店でアルバイトをしていて、バイト代も6〜7万だったので、異常な量を買っていたと思います。本屋で働いて、そのお金を本屋で落とす。いい店員でしょ(笑)。

ーー はい(笑)。社会人になってからはどうですか?

大森 毎日、欠かさず本屋には行ってましたね。平日、休日、問わず1日に4店舗行って、2冊は買うみたいな生活をしてきました。もう歯磨きのように習慣として、行ってましたね。
 でもそうしていくと、大体わかってくるんです。「この本はこのくらいの冊数が動きそうだな」とかデータが徐々に蓄積していく。今、書籍を仕入れるときも、「自分が買うか?」という判断基準を大切にしているんです。いいなあと思った本と実際に自分が買った本には大きな違いがあるんです。結極、いいなあ止まりの本はあんまり売れないですね。そういう実際にお金を払わせる何かしらを本からキャッチできるのか、それが肝要かと思います。

本の冊数を減らしたい

ーー 今ある本の冊数を減らしたい、と以前おっしゃっていたのが印象的でした。

大森 そうですね。今、店舗に4000〜5000冊あります。端的に言うと、うちはお客さんの選択にかかる「思考のコスト」を下げてあげたいんです。目当てのものがある人はいいですよ。大型書店に行けばいいわけですから。でも、目当てのものがなく来てくださっているとき、負担なく見つけられるようにしてあげたい。冊数を減らしたい、というのはそういう意味です。

ーー そういうことだったんですね。

IMG_1339 (1).jpg

入り口のそばに、大森さんおすすめの書籍が並んでいます。

大森 今の書店業界は傾向として、なんでも仕入れてなんでも売る、という状況をつくってしまっていると思うんです。でも普通、バイヤーってそうじゃないと思うんです。
 自分が目利きをして、仕入れてそれを売る。その目利きに価値があるわけで。それには知識や時間がかかることだとは思うんですが、いかにそこの原点に戻るかが、大事だと思います。

YouTubeを観て来てくれるお客さん

ーー バイヤーとしての姿勢がユニテさんのYouTube配信からも伝わってくる気がします。YouTubeはどんな経緯で始めたのでしょうか?

大森 当初はお店と関係なく、収益化できればと思って始めたんです。ユニテの開店前からやっていて、その当時はやることがなかったから、やってみるか、と。

ーー そんなラフな感じだったんですね。ただYouTubeでユニテを知る、という方も少なくないように思います。

大森 ええ。実際、YouTubeを観て、来てくれる方は多いですね。はじめはYouTubeを観る層と客層は全然違うと思っていたので意外でした。でも意外とみんなYouTubeを観ている。

ーー ええ。

大森 「若い人は本読まないからね〜」とか「YouTubeばかり観てますからね」とか言われますけど、「じゃあ本屋としてどうする?」ってことだと思うんです。
 それに、YouTubeはTwitterで投稿する以上の目の留まり方があるように思います。動画をあげるのはうんと労力がかかりますし、匿名のテキストデータではないので、動画で顔出して本の紹介をするって、バリバリ責任を負うことになる。そこは自分のことを賭けているわけです。1冊の本を、20分くらい時間かけて話してますけど、普通はこんなに話せない。よくこんな話しているなあと自分でも思いますね(笑)。

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実際に、YouTube配信を観て来店された方に遭遇!

大量生産、大量消費の倫理が残っている

―― これまで既存の書店では、書籍を卸す際は「委託」という返品可の条件で卸してきましたが、ユニテさん始め最近の独立系書店は「一冊!決済」を使って、「買切」で仕入れていただいています。お客さんの立場から見たときに、本や書店との付き合い方にも変化はあるでしょうか?

大森 買切になると、返品ができないので、本が傷むと、不良在庫になってしまうわけです。乱雑な置き方をされたり、癖がつくような本の開き方をする人がいるとそうなってしまう。特に年配の人に多いんですけど。

ーー どうして年配の方が多いのでしょうか?

大森 それは大量生産、大量消費の時代の倫理観が残っているからだと思います。僕らの世代は、斜陽をずっと生きてきているので、そういう考え方はないんですが、やはりその時代を生きてきた人は、雑に扱ってもOKという感覚があるんだと思います。でも今は、そういう時代じゃない。

ーー 「委託」だからこそできた倫理観ということですね。

大森 そうですね。それやってもいいや、という空気を本屋が出しているのも良くないと思っています。

腕時計のように本を置く

ーー そういう空気を出さないための工夫はありますか?

大森 置き方はひとつありますね。詰めすぎないとか。あとは、戻し方が雑な人には、教育しています。雑にされたら無言で、すぐ戻しに行くんで。でも根本的には、本の価値を低く見ているから、発生することだと思うんです。たとえば腕時計でも雑に扱うの? という話で。単価上げるというのもひとつですけど、本の価値そのものを見つめ直さないといけないですね。

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本と本の間隔が空いているのがユニテの特徴

―― 本そのものの価値を見つめ直す、本当に大切なことですね。

若い人が本屋のできる環境作りを

ーー オープンして半年(2022年9月1日)ほど経ちましたが、いかがですか?

大森 ありがたいことにメディアからも注目を浴びている中で、僕より若い人から「本屋やりたい!」という相談が増えてきたんですが、まだ単純に「やったらええやん」とは言えない。
 なので、そういう人たちのために「ビジネス」として、成立する環境を作ってあげたい。版元に対する条件しかり、人を雇うことができる環境などを作ることができれば、より一層、自分のお店だけでなく、本屋業界も面白くなると思うんです。

―― ありがとうございました。

***

〜取材を終えて〜

 UNITÉの選書の魅力は、大森さんの圧倒的な読書量と身銭を切った経験が下支えしていることを改めて痛感しました。また「委託」から「買切」という出版業界の商習慣が変わろうとしている中、私たち自身の倫理観も変わっていかなければいけない、というお話はとても印象的でした。YouTubeの登場で、ますます本が読まれなくなっていると言われる中、ユニテが今後、どのような取り組みをしていくのか。これからがますます楽しみです!(終)                                    

                                                       

UNITÉ(ユニテ)
〒181-0013
東京都三鷹市下連雀4-17-10 SMZビル1F(JR中央線・三鷹駅南口 徒歩10分)
営業時間:11:00〜19:00
休:月曜定休
YouTube:UNITÉ channel【三鷹・本と珈琲の店】
Twitter@unite_books

ミシマガ編集部
(みしまがへんしゅうぶ)

編集部からのお知らせ

4/27(木)開催!一冊トーク!本屋の本音、版元の煩悶 vol.1

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 2020年、「一冊!取引所」という新しいプラットフォームが立ち上がりました。書店・出版社間のコミュニケーション、精算、流通をもっとスムーズにし、街の中で本に出会える場面を増やしたい。そうした思いから始まった一冊!が、今回、初めてリアルイベントを開催。テーマはずばり「本屋の本音と版元の煩悶」。
 街の本屋が、より持続可能で創造的な商売になるためには? 版元(出版社)が継続的に本をつくるには? 
 当日は、昨年三鷹にオープンしたばかりの書店(UNITÉ)にて、店長・大森さんと創業15年を迎えるナナロク社の村井さん、この秋、初めての書籍を出そうとしている新規出版社・出雲路本制作所の中井さんとともに、一冊!代表の三島が進行役を務め、大いに語り尽くします。

・今の時代、書店経営は「本を売る」だけではむずかしい? 本だけで経営するには何が要る?
・書店として、出版社に求めるものは?
・売れる本、本当に届けたい本。どのように棲み分けて仕入れている?
・この地域にある店として、意識していることは?
・出版社は、印刷、製本、流通費や、印税など、さまざまな支払いに追われる立場。お金に関して、こうなったら良いのにな、とか、これはうまくいっている、ということは?
・出版社にとって、書店とは?
・これから出版社をたちあげるに際し、これだけは気をつけたほうがいいというものはある? etc.

 書店と版元、双方の本音と煩悶をぶつけあった先に見えてくる出版の未来は?
 責任を担いながら現場仕事を日々実践する人たちが、「小売」と「ものづくり」のこれからの関係、あり方を本気で探ります!

日時:4月27日(木)19:00~20:30
会場:UNITÉ|東京都三鷹市下連雀4-17-10 SMZビルディング 1F
参加費:会場参加:2200円(税込)オンライン参加:1650(税込)
配信:アーカイブ有 


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