『生きるように働く』装丁デザインBAUMさんインタビュー(1)

第2回

『生きるように働く』装丁デザインBAUMさんインタビュー(1)

2018.09.18更新

 いよいよ発売日が迫ってきた『生きるように働く』(ナカムラケンタ著)。

0908_1.jpg『生きるように働く』ナカムラケンタ (ミシマ社)

 今回は装丁をお願いしたBAUMさんのオフィスへお邪魔して、スタッフの國影志穂さんと木下由梨さん、そして代表の宇田川裕喜さんにお話を伺いました。

 前回も少し触れましたが、宇田川さんとナカムラさんは、10年も前からのお知り合いで、BAUMさんの求人は、ほとんどをナカムラさんが運営する日本仕事百貨で行うなど、親交の深いお二人。WORKとLIEEが溶けあっているような今回の表紙のデザインが生まれるまでに、どんなイメージややりとり、思考があったのか。そして「場生む会社」BAUMさんの考える、「場」とは? 2日間にわたり、お届けします。

(聞き手:星野友里、構成・写真:須賀紘也)

本棚は「わからなかったことの歴史」

―― 初めてこのオフィスに来させていただいたときに、入り口から入った正面にずらっと本棚が並んでいるのが印象的でした。

宇田川 名前やコピーをつくったり、ブランディングの戦略をつくるためには、深く対象を理解しなければいけないんですが、そのときわからないことがあったら、本屋さんに行って、本を買って。そういう意味で言うと、この本棚は「わからなかったことの歴史」ということになりますね。

―― なるほど。

宇田川 あとは、たとえば「仕事」というテーマを扱うブランディングをするときに、仕事の本だけ読むのではなく、その周辺で関わりそうなこととか、あえてあさっての方向の本を買ってみることもあります。

―― 本を読むことで、依頼されたテーマの周辺を掘ってみる感じですね。

宇田川 そうですね。

―― よく行かれる本屋さんってありますか。

宇田川 青山ブックセンター本店も行くし、会社の隣にあるワタリウム美術館の地下とかShelfも気分転換によく行きます。それに、下北沢の古書店ビビビ。ディスクユニオンのとなりの古本屋なんですけど。図録とかも多いし、なんかこう、いいんですよね。すごく買っちゃいます。古本なので買いやすいお値段なんですが、1万円とか使っちゃうんですよね。でも、おまけしてくれるんですよ。

―― 割引はいいですね(笑)。みなさんも、お気に入りの本屋さんはありますか?

國影 高円寺のあゆみブックスですね。品ぞろえが良くて、よくトークショーとかもやっていて。関西に住んでいた頃は行商で販売されている青菁社大阪さんにもお世話になりました。

木下 私は「こういうのが読みたいな」とふわっとした感じで、池袋のジュンク堂や新宿のブックファーストといった大型の本屋さんに行って探すことが多いです。

―― もし今名前があがった本屋さんの書店員さんが記事を読んでくださっていたら、喜んでくださると思います。

宇田川 もっといっぱい言えばよかった(笑)

ちょっと不思議だけど、ギリギリちゃんとしている

―― 宇田川さんとナカムラさんの出会いについて教えてください。

宇田川 ケンタくんが日本仕事百貨(当時、東京仕事百貨)を始めるころだったと思います。ケンタくんも僕も、グリーンズが月1回開催していた「グリーンドリンクス」っていう飲み会に、わりと行ってました。なんか、ケンタくん、不思議な人だなという印象で。

―― ナカムラさんは、ひとことで言うと、どんな人ですか。

宇田川 謎めいてますね。なぜそんなに行動力あるのか。なぜイヤホンかかってるのか。

國影 あと、黒い服以外まだ見てない。

木下 私も見たことないです。一緒に打ち合わせをしたとき、アイデアが溢れだすようにたくさん出てきて、とても楽しそうに話しているのが印象的でした。いつも元気でパワフルですよね。松岡修造的な。

―― たしかに。「ネガティブになっているナカムラさん」を見たことがないです。

國影 私は日本仕事百貨がきっかけでBAUMに入社しました。いろいろ記事を読んでいて私が想像してたナカムラさんは、とにかく忙しそうで、ハツラツとした人なんだろうと。たしかに「やってみよう」というアクティブさも感じるんですけど、その反面、物腰やわらかで落ち着いている感じもします。そのギャップが不思議に思えます。

木下 本を作っている間は、疲れていたり、イライラしたりしているナカムラさんも、ちょっとは見えましたか?

―― 見なかったですね。製本についてアイデアが出たときも、その日のうちに直接業者さんに掛け合ってくださって。この本の中で「トライ&エラーが大切」という話が何回か出てきますが、完全に有言実行されているなあというのを実感する日々でした。

宇田川 まとめると、不思議だけど、ギリギリちゃんとしてる。

一同 (笑)

『生きるように働く』はどういう部屋に置かれるだろう?

―― BAUMさんによる本のデザインは、まず昨年発刊されて話題となった小倉ヒラクさんの『発酵文化人類学』があって、今回の『生きるように働く』が2冊目ですね。本をデザインするときと、それ以外のデザインするときの違いってありますか?

宇田川 タイトルが決まっているかどうかですかね。

―― へぇ~、そこですか。

宇田川 たとえば食品をつくるときは、現地の人と一緒に味をみたりとか、商品の企画を立てることから始めることが多いですから、ある程度できたものを形にしていくっていうのは、BAUMとしては珍しいやり方です。

―― 本は、タイトルや原稿などがある程度できあがったところから、デザインがスタートする。

宇田川 そうですね。とくに今回は『生きるように働く』ですからね。画面で見るとそうでもないですが、印刷すると、インパクトが相当強いんですよ。言葉の熱がある。対義語は「死にたい、働きたくない」ですからね。

一同 (笑)

―― 最初の打ち合わせのときに、「この本ができあがったら、どういう部屋に置かれるだろう」というお話をされていたのが新鮮でした。

宇田川 あのとき言っていたのはたしか、「近郊に住んでる20代の社会人の六畳一間にこの本があって、その人は各駅停車に乗って夜、部屋に帰ってきて」という感じでしたよね。

―― そうでした。

宇田川 この本を読む人の気持ちになってみようって思うんですよね。たとえば「その人の家の本棚はどうなってるかな」と考えて、「自己啓発書がいっぱい並びすぎてるわけでもなく、隣には『キングダム』もきっとあるし、『進撃の巨人』もあるよな」とか考えます。あとは、この本が売られている棚まで来る人の気持ちになって、「棚の前でどんなこと考えるのかな」と考えたり。

(つづく)

ミシマガ編集部
(みしまがへんしゅうぶ)

編集部からのお知らせ

出版を記念して、イベントが続々と決まっています!
蔦屋書店様の以下2店舗では、本書に登場する方との対談イベントと、先行発売を実施します。

「最近〝仕事〟どう?」『生きるように働く』ナカムラケンタ ×『一緒に冒険をする』西村佳哲 出版記念・ダブルトークイベント
 →西村佳哲さんは、ミシマ社刊『いま、地方で生きるということ』の著者でもあります。
■日時:2018年09月18日(火) 19:30~21:30
■場所:代官山蔦屋書店

詳しくはこちら

日本仕事百貨 ナカムラケンタ×DRAFT 宮田識 『生きるように働く』刊行記念 ―自分たちでつくり、自分たちで届ける仕事
■日時:2018年9月25日(火) 19:30~21:00
■場所:銀座蔦屋書店

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■日時:2018年9月28日(金) 19:30~21:30
■場所:スタンダードブックストア心斎橋
■参加費:1,500円(1ドリンク付)

■予約方法:
1.お電話(06-6484-2239)
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