「はじめに」を掲載します

第1回

「はじめに」を掲載します

2018.09.08更新

 今月の20日に、ナカムラケンタ著『生きるように働く』が発売になります。

0908_1.jpg『生きるように働く』ナカムラケンタ (ミシマ社)

 このコーナーでは、『生きるように働く』とはどんな本か、著者のナカムラケンタさんとはどんな方か、ナカムラさんの会社が運営する「日本仕事百貨」とはどんなサイトなのか、などなど、本書にまつわるエトセトラをお届けしてゆきます。

 第1回目の今回は、じつは日本仕事百貨がきっかけでミシマ社に入社した担当編集ホシノの小話と、本書の冒頭「はじめに」を、発売に先がけて、お送りします!


 あれはもう、9年ほど前のこと。当時まだ別の会社で働いていたホシノは、とくに積極的に転職をしようという意志をもっていたわけでもなく、ただ何かのきっかけで知った「東京仕事百貨」(当時)というサイトにときどきアクセスしておりました。

 そこには、「離島の管理人を1名募集します」といった、妄想を刺激する採用募集の記事が、素敵な写真とともに紹介されていて、「世の中は広い。いろんな仕事があるものだなぁ」と思いながら、雑誌のページをめくるような気分で記事を読んでいたのでした。

 そんなある日、「ミシマ社」という名の出版社の採用募集記事が載っているのを発見。いつものように「ほほー、ちゃぶ台で会議をするのか」などと思いながら記事を読むうちに「そういえば、私は本が好きなのだった」とういことを思い出し、自分でもなんだかよくわからない勢いに乗って応募、面接を経て採用してもらい、今にいたっているのでした。

 著者のナカムラケンタさんが率いる株式会社シゴトヒトは、現在ではいろいろな仕事を展開していますが、メインはこの独特の求人サイト、「日本仕事百貨」の運営です。給与や福利厚生といった、いわゆる「条件」よりも、その会社を運営する人や働く人たちの生の声や、現場の写真がたくさん盛り込まれていて、閲覧していて純粋に面白いので、ぜひご覧になってみてください。

 ここで、本書の冒頭、そんなサイトをつくったナカムラさんの想いが綴られている「はじめに」の全文を、ご紹介したいと思います。

働いているときも、そうでないときも、自分の時間を生きていたい。

そんな漠然とした思いを持っていたけど、身近にお手本となるような人はいなかった。相談する人もいないし、求人サイトを見てもモヤモヤするばかり。噓じゃないんだろうけど、いいことしか書いていないように感じられるし、「プライベートも充実している」とか書いてあるけど、そんなことよりも仕事そのものを知りたいし、みんなカメラ目線で仲良しアピールしてるけど、普段の職場の様子が知りたい。

自分のなかに漠然とした思いはあるものの、真っ暗なトンネルを歩いているようで、その手がかりとなるようなものに、なかなか出会うことができなかった。

ぼくは「日本仕事百貨」という求人サイトを運営している。

職場を訪ねてインタビューし、それを求人の記事にまとめる。大切にしているのが、仕事のあるがままを伝えること。このサイトを通して、たくさんの生き方に出会ってきた。なぜこの仕事をはじめたのか、今はどんな仕事をしているのか、これからどうしていきたいのか。職場を訪ねて、仕事のいいところも大変なところも引き出していく。

そうやって取材していると、一本の木を眺めているような気分になる。取材で聞いた言葉の一つひとつが、木に生えている葉っぱのように見えてくる。

たくさんの言葉はばらばらのようでいて、生き方の根底にある何かへとつながっている。葉が枝につき、枝は幹から伸び、幹が根っこへと通じているように。すべての葉っぱを届けることはできないから、このひとつの根っこを届けようと思って求人の記事を書いている。

求人というと、募集要項がメインとなることも多い。もちろん、福利厚生や給料だって、大切なこと。けれどそれだってひとつの枝葉に過ぎないんじゃないか。それよりも根っこに共感できるか。こちらのほうが大切なんじゃないか。この根っこさえぶれていなければ、きっと納得して働くことができると思う。

たくさんの取材を通していろいろな木を眺めていると、何か共通する部分があるように感じはじめる。枝の張り方や幹の太さなど、樹形はそれぞれなんだけど、どれも根っこからまっすぐに伸びている何かがある。

植物にとって、生きると働くが分かれていないように、取材をした人たちにもオンオフのない時間が流れている。生きるように働いている。

この本は、生きるように働くとはどういうことかを、考えた本です。いろいろな人たちが、芽を出し、枝を伸ばして、一本の木になっていくまでの話を聞きました。何か自分と共通することが見つかったり、同じようなことが書かれた文章を思い出したり、新しい発見をしたりすることがあるかもしれません。発見したことは、お会いしたときに教えていただけたらうれしいです。

 本書の装丁は、ミシマ社の書籍では初めて、BAUMさんにお願いしました。初めての打合せのときにご挨拶した3人のスタッフのみなさんは、なんと全員、日本仕事百貨経由で入社されたそうで、本書は偶然にも、"チーム・日本仕事百貨"で製作をした1冊となりました。次回の本コーナーでは、そんなBAUMを率いる宇田川裕喜さんとスタッフのみなさんに、本書のデザイン秘話や、本をデザインすることについて、お話をうかがい、掲載する予定です。そちらもどうぞお楽しみに!

ミシマガ編集部
(みしまがへんしゅうぶ)

編集部からのお知らせ

出版を記念して、イベントが続々と決まっています!
蔦屋書店様の以下2店舗では、本書に登場する方との対談イベントと、先行発売を実施します。

「最近〝仕事〟どう?」『生きるように働く』ナカムラケンタ ×『一緒に冒険をする』西村佳哲 出版記念・ダブルトークイベント
 →西村佳哲さんは、ミシマ社刊『いま、地方で生きるということ』の著者でもあります。
■日時:2018年09月18日(火) 19:30~21:30
■場所:代官山蔦屋書店

詳しくはこちら

日本仕事百貨 ナカムラケンタ×DRAFT 宮田識 『生きるように働く』刊行記念 ―自分たちでつくり、自分たちで届ける仕事
■日時:2018年9月25日(火) 19:30~21:00
■場所:銀座蔦屋書店

詳しくはこちら

『生きるように働く』刊行記念 ナカムラケンタ×中川和彦(スタンダードブックストア代表)-熱や香りを伝える「場」づくり
■日時:2018年9月28日(金) 19:30~21:30
■場所:スタンダードブックストア心斎橋
■参加費:1,500円(1ドリンク付)

■予約方法:
1.お電話(06-6484-2239)
2.ご来店(スタンダードブックストア心斎橋レジカウンターへお越しください)
3.メール
以下のフォームをコピーして記入いただくか、
メール本文に【予約イベント名】【お名前】【電話番号】【人数】を入力して、info@standardbookstore.comへお送り下さい。

詳しくはこちら

おすすめの記事

編集部が厳選した、今オススメの記事をご紹介!!

  • 尾崎世界観×寄藤文平 いま、表現者であるということ(1)

    尾崎世界観×寄藤文平 いま、表現者であるということ(1)

    ミシマガ編集部

    2018/9/26(水)に発売されたクリープハイプの新アルバム『泣きたくなるほど嬉しい日々に』。そのデザインを手がけた寄藤文平さんと尾崎世界観さんは、4月にミシマガで対談しています。ミシマ社とも縁の深いお二人の対談、この機にぜひお読みください。(実は、今回の新アルバムの特装版の詩集と、タワーレコード特典の豆本の編集をミシマ社がお手伝いしています!)

  • 西村佳哲×ナカムラケンタ 最近〝仕事〟どう?(1)

    西村佳哲×ナカムラケンタ 最近〝仕事〟どう?(1)

    ミシマガ編集部

    みなさん、最近、仕事どうですか? ナカムラケンタさんの『生きるように働く』と、『いま、地方で生きるということ』の著者でもある、西村佳哲さんの『一緒に冒険をする』(弘文堂)の2冊の刊行を記念して、2018年9月18日、代官山 蔦屋書店にてトークイベントが行われました。「最近〝仕事〟どう?」をテーマに、それぞれの角度から「仕事」について考え続けてこられたお二人が、自著の話、人が働くことの根っこについて、そして「働き方改革」までを語り合いました。そんなお話の一部を、前・後編2日間連続でお届けします。どうぞ!

  • 町田 康×江 弘毅 「大阪弁で書く」とはどういうことか(1)

    町田 康×江 弘毅 「大阪弁で書く」とはどういうことか(1)

    ミシマガ編集部

    2018年6月22日、編集者であり長年街場を見つめてきた江弘毅さんがはじめて「ブンガク」を描いた、『K氏の大阪弁ブンガク論』が刊行になりました。司馬遼太郎や山崎豊子といった国民的作家から、黒川博行、和田竜など現代作家まで縦横無尽に書きまくっている本作で、2章を割いて江さんが絶賛しているのが、作家・町田康さん。本書の刊行を記念して(そして江さんが熱望して!)、紀伊國屋書店梅田本店にておこなわれた、お二人の対談の様子をお届けします。

  • 凍った脳みそ

    特集『凍った脳みそ』後藤正文インタビュー(1)

    ミシマガ編集部

    『凍った脳みそ』。なんとも不思議なタイトルである。いったい何の本なのか? と題名だけ見てわかる人はかなりのゴッチファンにちがいない。ぞんぶんにお好きなように本書を楽しんでくださいませ! 実は、アジカンファンだけど「この本はどうしようかな」と思っている方や、必ずしもアジカンやゴッチのファンでもないけど音楽は好きという方や、ゴッチもアジカンも音楽もとりわけ好きなわけじゃないけど面白い本は好き! という方にも、本書はおすすめなのです。その理由の一端に迫ることができればと思い、著者の後藤正文さんに直接お話をうかがいました。

ページトップへ