偶然の装丁家、多聞さんの個展にレッツゴー!

第3回

偶然の装丁家、多聞さんの個展にレッツゴー!

2019.05.17更新

 5月9日、ミシマ社京都オフィスから地下鉄東西線に乗って10分、太秦天神川駅に降り立ったヒゲのミシマンの代理、ミシマ社代表・ミシマ。早足で向かった先は・・・?

 ミシマ「いや〜多聞さん、なんだかすごい人みたいだなあ・・・。」

 視線の先には、広いギャラリースペースに、どどんと大きな展覧会のメインパネル。

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 2019年3月30日(土)〜6月19日(水)の期間、京都dddギャラリーにて、「本の縁側――矢萩多聞と本づくり展」が開催中です。ミシマ社から刊行している本のなかでも、『ちゃぶ台』『奇跡の本屋をつくりたい』などの装丁を手がけてくださっている多聞さんに、展覧会を案内していただきました。

●案内してくれた人
矢萩多聞(やはぎ・たもん)
1980年、横浜生まれ。画家・装丁家。中学1年で学校をやめ、南インドと日本を半年ごとに往復。ペンによる細密画を描き、横浜、東京などで個展をひらく。2002年から本づくりの仕事にかかわるようになり、これまでに500冊を超える本を手がける。現在は京都に暮らし、ちいさな暮らしと働き方について考えている。著書に『偶然の装丁家』(晶文社)、『たもんのインドだもん』(ミシマ社)、共著に『タラブックス』(玄光社)、『本を贈る』(三輪舎)などがある。

●案内してもらう人
三島邦弘(みしま・くにひろ)
1975年、京都生まれ。ミシマ社代表。「ちゃぶ台」編集長。2006年10月、単身で株式会社ミシマ社を東京・自由が丘に設立。時折、「ヒゲのミシマン」の代理として取材に出かける。

(構成・写真:野崎敬乃)

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壁にも机にも、本だらけ。

 多聞さんがこれまでに装丁を手がけた本はなんと500冊。今回の展覧会では、それらのほぼ全てが展示されています。そして、展示されている本は、実際に手に取ることができます。紙の肌理や印刷の細かな工夫など、「装丁」をまるごと目で見て、手で触って、楽める。カバーや帯をめくって現れる表紙にも注目です。

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 会場をまわってみると、こんなものもありました。ミシマ社のサポーター特典として、サポーターさんのためだけに制作した、完全非売品の「紙版ミシマガジン」。なかなか目にすることができないバックナンバーをここでは一挙にながめるチャンスです!

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「偶然の」装丁家

 多聞さんは、2014年に『偶然の装丁家』(晶文社)という本を出版されています。「偶然、装丁家になったってこと?」「そんなことあるの?」そう思った方のために、ここからは「偶然の」の真相に迫ります!

*装丁をはじめた当時

ミシマ 初期のもので、これはいいぞ! っていうのはどの本ですか?

多聞 いや〜初期のほうなんて、そんなのないですよ。はじめは本当に、どうやってつくったらいいのかわかんなかったから。

ミシマ それでよくやってましたね。最初の1冊目は春風社から出ている、『インド・まるごと多聞典』ですよね。

多聞 そうそう。だから、とにかく本屋に行って、こんな感じが本なんだなと思って、それを真似してつくったりしてましたね。
 はじめはどうしても、かたちとしてデザインの真似ごとをしてただけだったんだけど、だんだんやっていくうちに、本を手に取った人がどういうふうに読むかとか、どんな気持ちになるかとか、そういうことを考えるようになっていきましたね。
 あとは安原顕さんの『乱読すれど乱心せず』(春風社)とか、『ハラに染みるぜ!天才ジャズ本』(春風社)とか、この辺の仕事をしてるころにはじめて、本をつくるときの、わーっと人が巻き込まれていく感じとか、みんなが熱を帯びて本をつくっていることとかが実際に感じられたんです。

*『いのちを「つくって」もいいですか?』の話

多聞 これなんかも、結構気に入ってるんですよ。最初は別のものを切り絵でつくっていたんですが、なかなかいいものができなくて、ぼーっとしていたら、机に散乱してるきれはしや紙くずが、なんだか人間の身体にみえてきて・・・。それを組み合わせて、こうなったんです。

ミシマ へ〜、この感じいいですね。

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*偶然が重なった『本を贈る』の制作裏ばなし

ミシマ この本、増刷の度に表紙の色が変わるやつですね。

多聞 実はこれ、最初は3刷の色(オレンジ)でいこうと思ってたんですよ。だけど、そのデザインのやりとりをしていたのが、ぼくがちょうどインドにいる時で、刷り色を指定するときに番号を間違えちゃった。それで初版の表紙の色(あか)で見本が届いたんですよ。
 でも見本を見てたら、間違えちゃったけどこれもいいなと思いはじめて・・・。出版社の人と話して、結局これで出そうっていうことになったんです。これこそ偶然(笑)。

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ミシマ えーそうだったんですか!

多聞 それとこれ、初版と2刷以降で判型が違うんですよ。2刷のがちょっとだけハンディなんです。もともと意図してたわけではなくて、制作上の都合でこうなったんだけど、結果的には話題にもなるしいいよね。

ミシマ ハンディなのはいいですね。タイトルに金の箔押しをほどこしてるのは、贈り物感があってすごくいいと思います。

多聞 色のバリエーションを出したことで、自分はこれを買ったけど、こっちの色をだれかにプレゼントしようとかもできるしね。あとね、ぼくは全然気がついてなかったんだけど、「贈」の文字の右上の部分が、プレゼントの箱に見えるって。

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ミシマ ほんとだ!

多聞 読者の人が連絡をくれて、はじめて気づいたっていうね。

ミシマ こういうことをまさに「偶然の装丁家」って言うんですね(笑)。

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(たくさんの装丁ラフも展示されています)

展覧会は、成長中

 3月末からはじまった展覧会、会期中にも日々成長をとげています。たとえば、窓ガラスにも楽しいイラストが加わっていたり、iPhone/Androidアプリの「カタログポケット」にて多聞さんが会場を案内する音声ガイドのサービスもはじまっています。まだ行ってないというかたも、すでに行ったという方も、何度でも足を運んでみてください!

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(多聞さんによれば、「これ描いているときは夜で、よく描けた!と思ったんだけど、昼はほとんど見えません」とのこと。訪れる時間によっても会場の雰囲気が変わります!)

京都dddギャラリー第220回企画展
本の縁側 矢萩多聞と本づくり展
2019年3月30日(土)―6月19日(水)

■交通アクセス
京都dddギャラリー
〒616‒8533 京都市右京区太秦上刑部町10
TEL:075-871-1480  FAX:075-871-1267
地下鉄東西線 太秦天神川駅1番出口 徒歩3分、嵐電嵐山本線 嵐電天神川駅 徒歩5分
市バス・京都バス 太秦天神川駅前下車、駐車場無
■開館時間
11:00-19:00 ※土曜日と6月9日(日)は18:00まで
■休館日
日曜・祝日休館(※4月28日(日)~5月6日(月)は祝日につき休館となります)※特別開館6月9日(日)
■入館料
無料

特設サイトはこちら

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(ひげのみしまん)

ミシマ社のメンバーのひとりと思しき人物。しかし、すべては謎に包まれている。

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