第2回
京都のキリム&トルコ雑貨屋さん KILIM ANATOLIA (キリムアナトリア)
2019.10.04更新
(左が今回お話を伺ったアブドゥラさん、右がオーナーのムスタファさん)
はじめまして、デッチの武尾です。
ミシマ社京都オフィスに向かうために河原町通りを歩いていたときのこと。ディズニー映画の『アラジン』を連想させるような色とりどりのランプや絨毯が並ぶ、エキゾチックな雰囲気のお店が目に入りました。
「中に入ってみたい。でも、高級そうな商品に、いかにも手が届かなさそうな私が入って大丈夫だろうか・・・」と悩んでいると、
「どうぞどうぞ、中に入って見ていってくださいね」と、フレンドリーなトルコ人の店員さんが出てきて声をかけてくれました。
その日から私はそのお店に度々立ち寄るようになり、親切な店員さんはあまり高い買い物もしない私にコーヒーまで出してくださったりしました。
それが、今回紹介するキリム&トルコ雑貨屋さん、キリムアナトリアさん。ミシマ社京都オフィスから歩いて5分ほどのご近所さんです。
また、13年前からお店をやられているということで、ミシマ社と同い年のようです。今回は、トルコ出身の店員さんであるアブドゥラさんにお話を伺いました。
(聞き手・構成:武尾香菜、写真:長谷川実央)
遊牧民の想いが込められた生地、キリム
(壁にかかっている大きな二つの生地がキリム)
ーー お店の名前にも入っている、「キリム」って何ですか?
アブドゥラさん キリムというのは、織り方の名前です。平織りですけど、独特の模様と独特の織り方があって、何千年も前からずっと遊牧民がつくっているものです。キリムは、遊牧民として羊を放牧するために、夏は高地の涼しいところで、冬には山から下りて暮らしてきた人たちの伝統です。
ーー なるほど。トルコには今でも遊牧民がいるんですか?
アブドゥラさん もちろんいます。今でもトルコの国内で移動しながら生活をしています。
ーー キリムは一般的な「絨毯」とは異なるんですか?
アブドゥラさん 街の人が家に敷くような絨毯には別の単語があります。キリムは元々遊牧民が使うものなので、移動するときに持ち運びやすいようにつくられているんです。薄いから、畳みやすい。街の人が使う絨毯は、移動する必要がないからちょっと厚めですね。
ーー キリムの柄はとても綺麗ですね。独特な柄には何か特徴があるんですか?
アブドゥラさん キリムは元々、遊牧民が、売るためではなく自分たちで使うためにつくっています。自分が子供を産むからゆりかごに使うためにつくろう、とか、誰かが結婚するときに一つつくってプレゼントしよう、とか。そのときに、「幸せになれるようにこの柄を入れよう」「お金に困らないようにこの柄を入れよう」「安全に生きていけるようにこの柄を入れよう」という風に、一つ一つの模様に意味を込めるんです。その模様は、大昔から伝わってきているものです。キリムには型がないので、全部つくっている人の好みで自由に模様が入れられているんです。キリムというものは作品です。キリムはものすごく面白いんですよ。私がこの仕事を始めたきっかけもキリムです。自分でちょっとずつ買って、集めて、コレクションしたりとか。
ーー とても面白いですね。型がないということは、織り方は誰かに直接教えてもらうんですか?
アブドゥラさん 親か誰かに教えてもらいます。そこらへんに羊がいるようなテント暮らしをしていく中で、自分のキリムは自分でつくらないといけませんから。色も、その辺に生えている植物などで自分で染めます。
ーー 店内に並んでいる敷物は全てキリムですか?
アブドゥラさん 全てではないですが、キリムの方が多いです。絨毯もあります。また、この店に置いてある商品は、キリムも絨毯もランプも、全て1つ1つ職人の手づくりです。現地から輸入しています。
「家」を大切にするトルコ人
ーー お店にあるようなキリムや絨毯は、トルコではどのお家にもあるものなんですか?
アブドゥラさん 誰でも持ちたいものですね。持っているかどうかは人によりますが、みんなの愛するものですから。イスタンブールのグランドバザールなんかに行けば、雑貨、敷物、ランプなどいろんなものが売っています。みんなが憧れて、あそこのものが欲しいと思うようなものです。
ーー みんなの憧れなんですね。トルコには、家具屋さんが多いんですか?
アブドゥラさん 多い多い。みんな、結婚する前から家具や家電を集め出すんです。貯金で家具を買ったり、冷蔵庫、洗濯機とか、結婚する何年も前から準備します。私の甥は、結婚するって言ってずっと集めて、まだ結婚していません(笑)実家の一部屋には、結婚を準備してる男の子のものがいっぱいあります。
ーー 面白い(笑)トルコ人は、家のインテリアにとても力を入れているんですね。
アブドゥラさん トルコ人は、家に力を入れて、仕事の方はさぼりがちです。日本人は、その逆だと思いますね。仕事に力を入れて、家はさぼっている。トルコでは、外から見てボロボロの家だったとしても、中に入ったらとても綺麗なんですよ。
ーー ということは、日本人よりもトルコの人の方が家で過ごす時間も長いんでしょうか?
アブドゥラさん 長い。私が小さいとき、故郷では、暗くなったらみんな家に帰っていました。みんな仕事場から家まで歩いて10分くらいのところに住んでいたので、お昼ご飯を食べるために一旦家に戻って、また仕事に行って、夜ご飯の時間には家に帰ってくる。ご飯は家族みんなで一緒に食べる。私の故郷での生活は、夢のような生活でした。
新しい考えを受け入れにくい日本人
ーー 他に、日本人とトルコ人で違うなぁと感じることはありますか?
アブドゥラさん 来たときに一つびっくりしたのは、日本人は新しいアイディアを受け取るのに時間がかかるところですね。元々持っている考えに合わなかったら、相手の話が正しくても、なかなか受け取らない。納得するまでにかなり時間がかかる。トルコ人が一瞬の間、5分くらいで新しい考えを受け入れるとすると、日本人は3年くらいかかります。また、トルコ人は、一旦受け入れた考えを手放すときも一瞬です。日本人は、一度受け入れると、その考え方が悪かったとしてもパッと切れないですね。信じていることから離れるのが、なかなか難しい。
ーー 確かに、日本人は新しい考えをすんなり受け入れるタイプではないですね。トルコ人は、どうして新しい考えにすっと馴染むことができるのでしょう?
アブドゥラさん どういう理由かはわからないけどね。例えば日本人は、赤い信号機を見たら、青に変わるまで必ず止まる。トルコ人は、左右を見て、車が来ていなければ通る。でも、青でもパッと渡らない。まず左右を見てよく確認してから渡る。ルールというよりは、自分で自分の頭で運転する。日本人はルールをよく守りますね。ルールを守るのにはいいことがたくさんあります、国も安定する。でも、日本人は、ルールを守って車に轢かれてしまうようなことが結構あると思います。そういう違いですかね。
(店の外観と、前に立つアブドゥラさん)
アブドゥラさん
トルコのコンヤ出身。半年ほど前から、キリムアナトリアで働き始めた。オーナーさんとは友人の間柄。30年前、日本語を勉強するために来日。以来ずっと日本に住んでいる。
編集部からのお知らせ
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また、サポーター制度の具体的な活動について知りたい方は、こちらをご覧ください。
現在、2019年度のサポーターを募集しております。サポーター期間は2019年4月1日〜2020年3月31日です。ミシマ社メンバー一同、これからもっとおもしろいことを、サポーターのみなさまとご一緒できたらうれしく思います。お力添えをいただけましたら幸いです。
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サポーター期間:2019年4月1日~2020年3月31日
※ どの月にご入会いただいても、次年度の更新時期はみなさま来年の4月で統一です。ご了解くださいませ。その年の特典は、さかのぼって、全てお贈りいたします。
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2019年10月17日(木)「中田教授のそろそろクモ映画の話をしよう」@恵文社一乗寺店
出演者 中田兼介(なかた・けんすけ)
1967年大阪生まれ。京都女子大学教授。専門は動物(主にクモ)の行動学や生態学。『クモのイト』の著者。
■日程:2019年10月17日(木)19:00~(開場18:30~)
■会場:恵文社一乗寺店(叡山電鉄「一乗寺」駅徒歩3分)
■定員:50名様
■参加費:1000円
クモ好きも、映画好きも、みんな集まれ〜〜〜! みなさまのご来場お待ちしております。