くすみ書房店主・久住邦晴さんの本を発刊します

第1回

くすみ書房店主・久住邦晴さんの本を発刊します

2018.08.09更新

 今月末に『奇跡の本屋をつくりたい〜くすみ書房のオヤジが残したもの』が発刊となります。多くの人に愛されながらも、2015年に閉店した札幌の書店「くすみ書房」の店主、久住邦晴さんの未完の遺稿を再編集し、書籍化したものです。

 この本にちなんで今日からミシマガ上でも「奇跡の本屋をつくりたい」のコーナーがスタートします。本の編集に込めた思いとは? くすみ書房ってどんな本屋さん? 著者の久住邦晴さんってどんな人? くすみ書房店主の久住さんと親交のあった方々や書店員さんからのコメントなど、盛りだくさんでお伝えしていく予定ですのでどうぞお楽しみに!

 第1回目の今日は、編集担当の三島より「久住さんの本をつくります」をお届けします。

久住さんの本をつくります

 このたび、くすみ書房店主・久住邦晴さんの遺稿をもとに再編集した一冊『奇跡の本屋をつくりたい〜くすみ書房のオヤジが残したもの』を発刊することになりました。発売日は、2018年8月28日です。

 この日は、久住さんのご命日にあたります。もうすぐ、久住さんが他界されて一年が経つことになります。 

 久住さんのことは、「ミシマ社の話」で昨年、こんなふうに書いてました。

 11歳になったミシマ社もまた例外ではなく、今年、これまで経験したことのない辛い別れをいくつか経験しました。

 とりわけ、あるお二人との別れは身が引き裂かれるものでした。

 ひとりは、札幌に住むKさんという書店員さんです。

 最初にお会いしたときのKさんの目は、いまもはっきりと思い出すとことができます。

 それは、閉店間際のノーアポでの突然の訪問でした。にもかかわらず、Kさんは、文字通り目をか輝かせて喜んでくださいました。「お会いしたかった」とまで言ってくださり。

 いったい何を話したかあまり覚えていないのですが、その目の輝きだけは今もいっさい色褪せることなく私のなかで輝きを放っています。

 その後、イベントを2度、開催くださいました。

 イベントの最後にマイクをもって、「新しいことをどんどんやるつもりだ」と意欲的に語られた姿は、実にすがすがしく、頼もしいものでありました。

 ところが、それからほどなく閉店を発表されます。

 えっ、と驚くほかありませんでした。後になって病気をされていたことなどを知るわけですが。そのときは、ただただ残念でしかなく、気持ちよく仕事のできる書店員さんがまたいなくなる・・・そのことに心を痛めたのでした。

 それから1年ほどしてミシマ社の京都オフィスに来てくださったことがあります。

「また本屋をやろうと思って」

 そうおっしゃるKさんの目には再びあの輝きが戻ってきたように感じました。

 なのに・・・・・・。

 京都を訪ねてくださった直後、病が発覚された、というのは、亡くなられてから聞いたことです。つまり、お会いしたタイミングでは、けっこう病気は進行していたにちがいありません。ですが、外見からはまったくそんなふうには見えず・・・。

「三島さんに、ひとつお願いがあるんです」

 久住さんに頼まれごと?? なんだろう?と思ってうかがえば、「新しい店の名前、『THE BOOKS green』にしたいんですよ」とおっしゃるではないですか。

 2015年3月に発刊したミシマ社編の本『THE BOOKS green〜365人の本屋さんが中高生に心から押す「この一冊」』を、いたく気にいってくださった様子でした。それで、再起を期してたちあげる「中高生向け」本屋の名前の候補に考えてくださったのです。なんと光栄なこと。

 ぜひと申しあげたところ、またあの少年のような瞳をぱっと輝かせて、「ありがとうございます」と言ってくださったのでした。いえいえ、こちらこそです。すごく楽しみです。とお伝えしたのが、結果的に最後のやりとりになりました。

 昨年末のある日、久住さんと懇意にされていた中島岳志さんから一報が届きました。

 「久住さんが、病気の発覚後、ひそかに書きすすめていた原稿があります。その遺稿を一度見てもらえませんか。最後のメモ書きに、ミシマ社の名前が入っているんです」

 実際、手書きで書かれた遺稿を見せていただくと、メモ書きのなかにやはり手書きで私たちの名前が入っていました。

 大きなパスを託されたような気持ちになりました。

 と同時に、はたして私たちで、うまくいい形にこの遺稿を一冊にできるだろうか、という不安がよぎりました。

 しかし、読み始めると、そんな不安はまるで最初からなかったように、どこかへ消え去ったのでした。それほどに、「おもしろい」原稿だったのです。

 それからの日々は、久住さんとの無言の対話を重なっていっただけのような感じがしています。

「いやあ、ここはもっと、大胆に、気取らないでつくってよ」

 と、さりげなく注意を受けたのは数回。あとは、

「おお、いいね三島さん、いい感じだよ」

 とずっと励ましてくださっているように感じられました。久住さんは実に、いつも前を向かせてくれる、「そういう」人でした。

 久住さんのそんな声に導かれるようにして、再編集してまいりました。

 解説は、中島岳志さんに書き下ろしていただきました。

 カバーの装画は、ミロコマチコさんにお願いしました。「本屋さんを描くのは初めて」とのことでしたが、とても素敵な絵を届けてくださったのでした(もう、最高!!)

 装丁は、中島さんともども交流の深かった矢萩多聞さんが、見事に仕上げてくれました。「久住さんにあって初めて書店員と話せるようになった」という多聞さんの並々ならぬ思いが、随所に詰まっているはずです。

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『奇跡の本屋をつくりたい〜くすみ書房のオヤジが残したもの』久住邦晴(ミシマ社)

 こうして、まもなく完成する運びです(これを書いている時点では、まだ完成はしていません・・・)。

 いま、自信をもって言えるのは、一冊の本として、めちゃおもしろい、めちゃ素敵な、最高の本になった、ということです。

 きっと天国の久住さんも、喜んでくださるはず。この本を手にして喜ばないわけがないよなぁ。と素直に思える一冊になりました。

 久住さん、もうすぐですからね! 楽しみに待っていてください。

(三島邦弘)

編集部からのお知らせ

久住さんの一周忌となる8月28日(火)に、書肆 吉成さんにて発刊を記念したイベントを開催します。詳細は追ってお伝えいたします。

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