「まえがき」を掲載します

第3回

「まえがき」を掲載します

2018.08.22更新

 今月末に『奇跡の本屋をつくりたい〜くすみ書房のオヤジが残したもの』が発刊となります。多くの人に愛されながらも、2015年に閉店した札幌の書店「くすみ書房」の店主、久住邦晴さんの未完の遺稿を再編集し、書籍化したものです。

 ミシマガの「奇跡の本屋をつくりたい」のコーナーでは、本の編集に込めた思いとは? くすみ書房ってどんな本屋さん? 著者の久住邦晴さんってどんな人? そんな疑問にお答えしつつ、くすみ書房店主の久住さんと親交のあった方々や書店員さんからのコメントなど、盛りだくさんでお伝えしていきます。

 ・第1回目「くすみ書房店主・久住邦晴さんの本を発刊します」はこちら
 ・第2回目「くすみ書房ってどんな本屋さん?」はこちら

 第3回目の今日は、その『奇跡の本屋をつくりたい』より、「まえがき」を公開します。発刊よりもひとあし先に、ぜひ、この本の魅力を味わってください! 

kiseki_shoei.jpg

『奇跡の本屋をつくりたい』久住邦晴(ミシマ社)

まえがき

 札幌の街に、くすみ書房という本屋がありました。

 そこは、地元の人たちはもちろん、道外から訪れた人たちからも愛される本屋でした。

 2015年、多くの人たちに惜しまれつつ、くすみ書房は閉店。約70年の歴史に幕を下ろします。

 本書は、その店の店主・久住邦晴氏が、2016年春先、病を告知された後、書きためた原稿をもとに構成しています。自身の復帰を信じ、中高生向けの本屋をつくる。そんな並々ならぬ意欲をもって執筆されました。

 数カ月の執筆を経て、2017年8月28日、永眠。

 結果的に遺稿となった手書きの原稿を、活字化し、誤字・脱字など最低限の修正にとどめ、「I  遺稿本屋のオヤジの日々是好日(仮)」としてほぼそのまま収録しました。この章タイトルは久住さん本人が考えた本書のタイトル候補のひとつです。

 遺稿の最後に、本書の企画書として考えられたのでしょうか、次の文が記されていました。

「本屋のオヤジが起こした11番目の奇跡」―第9、第10の奇跡は起きたのか?―

 全国の町の本屋はずっと苦しんできました。

 経営基盤があまりにも脆弱なためです。

 再販制度の限界ともいえるかもしれません。

 多くの本屋さんたちが店を閉め、次世代に継がせることをあきらめています。

 本来読書は夢と希望を与えてくれるものです。

 わくわく、どきどきしながら頁をめくる体験は何ものにも代えられません。

 私は本屋の経営も同じように夢を抱き、希望に満ち溢れたものでありたいと強く思います。

 そのために「楽しい本屋」をつくります。

 だから

 お金がなくてもつくれる本屋

 だから借金の無い経営

 きちんと休みのとれる本屋

 知的好奇心が満たされる本屋

 文化を発信できる本屋

 置きたい本だけ置いている本屋

 何ものにも束縛されない本屋

 を目指します。

 そんな本屋がつくれたら最高です。

 つくりあげ、開店してからの状況をドキュメント風にお伝えいたします。

-----

(これより点線内箇所は、2刷以降に追記しています)

 ①『あなたの会社が90日で儲かる!』という本との出会い

 ②「無印本フェア」を木原さんに伝えたこと

 ③道新の担当者がTさんだったこと

 ④店内での朗読がスタートしたこと―「天国の本屋」映画ロケ地へ行けたこと

 ⑤「中学生はこれを読め!」を思いついたこと

 ⑥北大の中島岳志さんとの出会い

 ⑦約束期日ギリギリに取次が大谷地店への移転を了承したこと

 ⑧品止解除のため必要だった資金四〇〇〇万円を集めたときに起きたいくつかの奇跡

 そして

 ⑨余命八ヶ月と宣告された肺がんが治癒したこと

 ⑩この本が三〇万部のベストセラーになり、個人的借入の四〇〇〇万円が返済できたこと

 出版時点では⑨⑩はまだ起きていない。

 必ずそうなると確信し、そのために行うことを紹介。

 結果は「本屋のオヤジが起こした11番目の奇跡」で。

-----

 「II 解説」は、生前、久住さんが全幅の信頼を寄せておられた東京工業大学教授・中島岳志さんにお願いしました。中島さんには、遺稿で書かれた話の以前と以降の話を補ってもらっています。

 巻末には、「III 補録」として、久住さんが出版関係者向け、中学生向けの講演のために用意した、手書きの草稿を活字化しました。最後に、近い将来、久住さんがたちあげる予定でいた「奇跡の本屋」構想について書かれた草稿を掲載しました。

ミシマ社編集部

 発刊日は、久住さんのご命日である2018年8月28日(火)です。本好きの人、本屋好きの人、それを超えた多くの人にぜひ手にとっていただきたい一冊です。どうぞお楽しみに!

編集部からのお知らせ

出版記念イベント「奇跡の本屋をつくりたい〜くすみ書房のオヤジが残したもの展」を開催します

日時:2018年8月28日(火)~9月24日(月)
10:00~20:00 年中無休

『奇跡の本屋をつくりたい〜くすみ書房のオヤジが残したもの』(久住邦晴著・ミシマ社刊)発売を記念して、同タイトルの展覧会を、札幌の新古書店 書肆吉成にて開催します。長女で写真家のクスミエリカ氏が撮影した記録写真をメインに、くすみ書房ゆかりの品や書籍の生原稿などを展示します。

〈オープニング&トークイベント〉
日時:2018年8月28日(火)
17:00~ オープニング
18:00~19:30 中島岳志×矢萩多聞×三島邦弘×クスミエリカ トーク(入場無料)

詳しくはこちら

おすすめの記事

編集部が厳選した、今オススメの記事をご紹介!!

  • 高橋さん家の次女 第2幕

    序 〜怒られの人〜

    高橋 久美子

     話題沸騰中の高橋久美子さんによる書籍『その農地、私が買います』の続編が、本日よりスタートします!「実家の畑をソーラーパネルにしたくない」。その思いを胸に、故郷の農地をめぐる複雑な事情とご自身の奮闘ぶりを赤裸々に綴ってこられた高橋さん。書籍発表を経た今、地元で、東京で、どんな声を聴き、何をしようとされているのでしょうか? 「続編を」というたくさんの声にお応えして、「高橋さん家の次女」第2幕がついに開幕します!

  • 斎藤幸平×タルマーリー(渡邉格・麻里子)対談 コモン再生は日本のグローバルサウスで芽吹く(前編)斎藤幸平×タルマーリー(渡邉格・麻里子)対談 コモン再生は日本のグローバルサウスで芽吹く(前編)

    斎藤幸平×タルマーリー(渡邉格・麻里子)対談 コモン再生は日本のグローバルサウスで芽吹く(前編)

    ミシマガ編集部

    『人新世の「資本論」』(集英社新書)がロングセラーになっている斎藤幸平さんと、『菌の声を聴け』(ミシマ社)の著者タルマーリー(渡邉格・麻里子)の対談が実現しました! パンクロック、食、気候変動、マルクス、脱成長コミュニズム・・・。実践と理論を通じて、これからを生き延びるためのコモン再生の方法を探るエキサイティングな対談の一部をお届けします!

  • 『その農地、私が買います』、多彩な反響が続々!!『その農地、私が買います』、多彩な反響が続々!!

    『その農地、私が買います』、多彩な反響が続々!!

    ミシマガ編集部

     発売から約1カ月、高橋久美子著『その農地、私が買います 高橋さん家の次女の乱』は、感想をくださる方々の老若男女の幅や、どの角度から興味を持ち心を動かしてくださったかという切り口の多彩さが、際立っているように感じます。たくさんの媒体の方に取材いただくなかで、あらためて見えてきたこと、そして本書の魅力を、編集ホシノからお伝えします。

  • 『辛口サイショーの人生案内DX』刊行記念 最相葉月さんに訊く!「人生案内」の職人技 (前編)『辛口サイショーの人生案内DX』刊行記念 最相葉月さんに訊く!「人生案内」の職人技 (前編)

    『辛口サイショーの人生案内DX』刊行記念 最相葉月さんに訊く!「人生案内」の職人技 (前編)

    ミシマガ編集部

     先日ついに『辛口サイショーの人生案内DX』が発刊しました! 多種多様なお悩みに対する最相さんの回答は、「どうやったらこんな答えを編み出せるのか?」と思ってしまうものばかり。「誰かの悩みに触れつづけると、どんな感覚になるのだろう?」という問いも湧きました。とにかく、舞台裏が気になってしかたがありません。 そこで、新人スミが最相さんご本人にインタビューさせていただきました! 「人生案内」の職人技を垣間見れば、本に収録された回答も一層おもしろく読めること間違いなし。貴重なお話の数々を、2日間にわたってお届けします!

ページトップへ