第3回
コラム#2 MSカレッジ2日目は、デザインと本屋の話
2025.07.31更新
これからの「おもしろい」を実現するために
ひらかれた学問――。ひらかれた出版――。「おもしろい」をひらく。
まもなく創業19年となるミシマ社は、この間、そうした思いで出版活動をつづけてきました。この思いを実現するため、意識してきたこと、実践してきたことを、今回のMSカレッジでできるだけ「ひらく」よう努めます。
いうまでもなく、「おもしろい」を支えるには、内容が「そう」であることは欠かせません。内容のおもしろさは、大前提。テーマそのものが魅力的であること、そして、その魅力あるテーマをしっかり伝える文章があること(つまり、文体)、この両者が支えとなります。これは必ずしも「やさしく書く」「(離乳食のように)噛み砕く」「要点だけをうまくまとめる」ということではありません。
骨太の内容をいっさい損ねることなく、伝わる文体で書く。
それを実現している方々に、MSカレッジ3日目には、ご登場いただきます。湯澤規子さん「テーマの見つけ方」、松村圭一郎さん「学問と生活の<あいだ>の文体に出会う」の両講座で、その真髄に触れていただく予定です(詳しくは次回のコラムで述べます)。
ただし、どれほど内容がおもしろくても、その本が読まれるべき人たちに読まれるわけではありません。それは、19年近くミシマ社で出版活動をつづけてくるなかで、痛いほど経験してきました。
学問を、出版を、「おもしろい」をひらく。これを実現しようとすれば、内容や文体のみならず、「造り」や「売り方」が、「ひらかれる」ことも必須。たとえば、初日に登壇いただく藤原辰史さんの共著本に、『中学生から知りたいパレスチナのこと』(岡真理、小山哲との共著)、『学ぶとは 数学と歴史学の対話』(伊原康隆との共著)があります。
両書とも、ご好評いただき、よく売れています。この「売れている」という現実は、内容面の充実は言うまでもなく、それぞれの本の特長を的確につかみ、それを形にできたからこそ。言い換えれば、各本の潜在的読者にしっかりと手にとってもらう。そのために必要なデザイン、造りになっているからです。
いずれの本のデザインも、寄藤文平さんによるもの。MSカレッジでは、寄藤さんに、同じ著者のタイプの違うこの2冊をデザインするときに考えたことは何か? 本の特長を生かすための工夫は? などを具体的に教えていただきます。そう考えて、今回の講師をご依頼したところ、寄藤さんご本人からいただいたお題が、これでした。
「ミシマ社からデザインの依頼がきたとき原論」
(げ、げんろん? そんなのあったのか・・・)私も知らない、知りたい「原論」。ミシマ社がめざす「おもしろい」を形にしていくために、寄藤さんが長年、温めてこられた視点、発想、思考をたっぷりご披露いただきます(楽しみ!)。
MSカレッジの2日目、寄藤さんともうおひとり、登壇いただくのが、内沼晋太郎さんです。内沼さんは、下北沢の本屋B&Bをたちあげたあと、専業ではない形の「○○と本屋」の可能性を提案、実際、各地で「&本屋」が広がる動きが生まれました。最近はバリューブックスと組んで「本チャンネル」を始めるなど、書店員の枠を越え、「本の世界」が次世代につながるための活動を継続されています。内沼さんのそうした活動の背景には、出版業界の置かれている現状を正確にとらえ、それを批判するにとどまらず、どうすればいいか、具体的かつ実行可能な案へと導き、自らその先鞭をつけていることがあります。つまり、常に、「ちょっと先」の業界の流れをつかみ、実践されている。その内沼さんが、MSカレッジの構想を雑談の場で私が話したとき、ものすごく共感、反応くださったのでした。
内沼さんは今、人文書などの学問の本をこれからどう売っていけばいいと考えているのだろう?
出版社が、「おもしろい」を継続して形にしていくためには、「売る」が欠かせません。いい本をつくり、届ける。そのために、書店という立場でできることは何か? 内沼さんの最先端の考え、これから実践しようとしているアイデアをしっかり教えていただく予定です。
MSカレッジ2日目は、超実践的な学びの時間になりそうです。
※内沼さんと三島の関係は、実はミシマ社創業前から。ご興味あるかたはこちらをご覧ください。
(文・三島邦弘)
MSカレッジ 第0回 開催概要
日時 2025年8月22日(金)、23日(土)、24日(日)
場所 恵文社一乗寺店コテージ
住所 〒606-8184 京都府京都市左京区一乗寺払殿町10
出演者 藤原辰史、内沼晋太郎、寄藤文平、湯澤規子、松村圭一郎、三島邦弘
参加費
会場参加 34,000円+税(アーカイブ付き、懇親会費別途)
オンライン参加 30,000円+税(アーカイブ付き)
会場定員 30名
お申し込み
会場参加チケット発売:2025年7月14日(月)18:00〜
オンライン参加チケット発売:2025年7月18日(金)18:00〜
※〈ご参加に関するご案内〉お読みいただき、ミシマ社の本屋さんショップ(https://mishimasha-books.shop)よりお申し込みください。
主催 ミシマ社