コラム#3 MSカレッジ3日目は、テーマと文体の見つけ方
2025.08.12更新
この連載のバックナンバー
●ミシマ社がつくるあたらしい学びの場「MSカレッジ」はじまります!
●コラム#1「いい仕事をしつづけたい」。この当たり前を実現するために
●コラム#2 MSカレッジ2日目は、デザインと本屋の話
MSカレッジ初日、藤原辰史さんに「「官学」から「民学」へ」と題して講演いただき、「これからの学問」の方向性を示していただきます。
2日目には、本をつくって売る、それぞれの技術について寄藤文平さん、内沼晋太郎さんにお話いただきます。デザインと本屋さんの「これから」です。
3日目は、前回の冒頭に記したとおりーー
「おもしろい」を支えるには、内容が「そう」であることは欠かせません。内容のおもしろさは、大前提。テーマそのものが魅力的であること、そして、その魅力あるテーマをしっかり伝える文章があること(つまり、文体)、この両者が支えとなります。これは必ずしも「やさしく書く」「(離乳食のように)噛み砕く」「要点だけをうまくまとめる」ということではありません。骨太の内容をいっさい損ねることなく、伝わる文体で書く。(「コラム#2 MSカレッジ2日目は、デザインと本屋の話」より)
それを実現している方々に、MSカレッジ3日目には、ご登場いただきます。
登壇いただくのは、地理学者の湯澤規子さんと人類学者の松村圭一郎さん。
・湯澤規子「テーマの見つけ方――胃袋、ウンコ、ドーナツ、そして次は?」
・松村圭一郎「学問と生活の<あいだ>の文体に出会う」
主に、湯澤さんには「テーマ」について、松村さんには「文体」のことをお話いただく予定ですが、お二人ともテーマと文体、ずば抜けて魅力あふれるものをおもちです。必然、両方の話題を行き来しながら解説いただくのでは、と期待しています。
湯澤さんとは、今回、はじめてお仕事をご一緒いたします。先日、打ち合わせでうかがった湯澤さんのお話、それはもう、弩級のおもしろさでした。他の講師陣に失礼を承知で申しますが、「この講義だけでも、十分に通しで参加いただく価値がある」。主催者として、断言したいと思います。
打ち合わせ時に教えてもらったお話をすこしだけ披露しますと、湯澤さんは一冊の本を書くにあたり、
・「一冊ノート」をつくる
・「思考の地図」をつくる
そうです。今回、その「ノート」と「地図」の実物を見せてくださることに!
あの、『焼き芋とドーナツ』というすばらしい作品は、こうした手法を経て生み出された。その感動を参加者の皆さんと共有できるのが、今から楽しみでなりません。
また、『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』『胃袋の近代』『7袋のポテトチップス』など、湯澤さんの書かれるものが多岐にわたりながらどれも面白い。講座では、その理由にも迫ります。「地理学者は、どこにいても、何かをおもしろがる」と湯澤さんは言っておられましたが、その「おもしろがり方」を編集者として私なりに追ってみたく思います。
「おもしろい」を見つけたい。見つけた「おもしろい」を形にしたい。一回で終わるのではなく、継続してかたちにしていきたい。
「おもしろい」の見つけ方、形にする手法、継続の方法・・・執筆、編集の枠を超えて、どういう形であれ、ものづくりにかかわる方々には、大いに役立つこと必至。当日、私もたっぷり学びたいと、心から楽しみにしています。
松村圭一郎さんは、第72回毎日新聞文化賞特別賞を受賞した『うしろめたさの人類学』をはじめ、『くらしのアナキズム』『小さき者たちの』をミシマ社から出されています。
『うしろめたさの人類学』は、松村さんが専門書ではない本を初めて書いた一般書です。その完成には10年近い歳月を要しました。一冊分、書き上げられたのを拝読したあと、「何かが足りない」と私が感じ、書き直しをお願いしたこともあります。そうしたやりとりを経て、松村さんは何かを見つけ、文章にされました。一体、あのとき、松村さんは何を見つけたのか? 松村さんの中で何が変わったのか? 今回、そのあたりの話を初披露いただきます。
もちろん、お二人には、これから書きたいテーマについても話していただく予定です。編集者である私がそのお話を受け止め、これから形にするため動きたく思いますが、参加者の方々とともに受け止め、いい本が生まれるための時間を共有できればと願っています。
MSカレッジ第0回。0回ゆえ、私たちも手探りのまま当日を迎えることになると思います。そして同時に、こうも思います。
「すべての「おもしろい」の始まりは、なんの保証もない、何が起こるかわからない、そうした瞬間から起こるのだ!」
その瞬間が積み重なる3日間になるよう、気持ちをこめてつとめます。第0回の目撃者になっていただければたいへんうれしいです。
(文・三島邦弘)
MSカレッジ 第0回 開催概要
日時 2025年8月22日(金)、23日(土)、24日(日)
場所 恵文社一乗寺店コテージ
住所 〒606-8184 京都府京都市左京区一乗寺払殿町10
出演者 藤原辰史、内沼晋太郎、寄藤文平、湯澤規子、松村圭一郎、三島邦弘
参加費
会場参加 34,000円+税(アーカイブ付き、懇親会費別途)
オンライン参加 30,000円+税(アーカイブ付き)
会場定員 30名
お申し込み
会場参加チケット発売:2025年7月14日(月)18:00〜
オンライン参加チケット発売:2025年7月18日(金)18:00〜
※〈ご参加に関するご案内〉お読みいただき、ミシマ社の本屋さんショップ(https://mishimasha-books.shop)よりお申し込みください。
主催 ミシマ社