『幸せに長生きするための今週のメニュー』刊行記念  ロビン・ロイドさん、中川学さんインタビュー

第6回

『幸せに長生きするための今週のメニュー』刊行記念  ロビン・ロイドさん、中川学さんインタビュー

2023.01.25更新

IMG_1869.jpg

 先日ちいさいミシマ社から発刊した『幸せに長生きするための今週のメニュー』。アメリカ出身の民族楽器奏者、詩人のロビン・ロイドさんと、京都のお寺の住職兼イラストレーターの中川学さんによる日英併記の詩画集です。
 自然の移りかわりや、日常のささやかなよろこびを丁寧にすくい上げるロビンさんの詩と、中川さんの温かく想像力がかきたてられる鉛筆画がやさしく心に届き、折に触れて読み返したくなる一冊です。
 聞くところによると、この本の企画はかなり以前から始動していたとのこと。この一冊ができあがるまでの経緯や、この詩画集の魅力などを、作者のお二人にじっくりと伺いました。

(聞き手・構成:山田真生、取材日:2023年1月11日)

ちょっとずつ進んでいって完成した

20230125-2.jpg

左:中川学さん、右:ロビン・ロイドさん

ーーこの本が完成して、ついに発売となるタイミングですが、どんなお気持ちですか?

中川 本当にうれしいですね。本になってよかったなって思います。

ロビン 最初に本をつくろうという話になったときに、今まで出したことのないような本をつくりたいと思ったんです。デザインも内容も、まさにそんな作品になったと思いますね。

ーーそもそもどういう経緯でこの本が出来上がったんですか?

中川 ロビンさんの詩が先にあったので、絵をつけて本にしたいなと。もうかれこれ10年位前の話なんですけど。でもそこから、なかなか絵が描けなかった。

ロビン そうね。いきなりできたんじゃなくて、編集者とわたしたちでちょっとずつ進んでいった感じですね。
 詩の順番を決めるのも難しくて、出来上がっていた詩の原稿をはさみで切って貼って、いろんな順番を試しました。

20230125-1.jpg

中川 私もロビンさんのその作業を見ていたので、何を描いたらいいのかと行き詰まったときに、原稿をはさみで切って、このラフのノートに貼っていったんです。そしてその隙間に描いていったら、するすると描けました。並べるって作業はすごくクリエイティブですよね。手作業でやると、脳が動き出す感じがします。

読んだ人の中に自分だけのヴィジュアルが浮かべばいい

ーーこの詩画集は、詩のことばがそのまま絵になっているわけではないですが、お互いが響き合っている感じがします。

中川 ロビンさんの温かい詩を、そのまま絵にするだけではつまらないと思ったんです。そんなときにふと、家族との思い出をちりばめていったら、ひょっとしたらおもしろいものになるかもと思いついたんです。家族で旅行に行った風景や、住んでいる京都の風景を中心に描き出しました。この詩と絵を通して、読んだ人の中に自分だけのヴィジュアルが浮かべばいいなと思っています。

20230125-3.jpg

ーー中川さんは普段デジタルタッチの絵を多く描いてらっしゃいますが、どうして今回は手描きにしようと思われたんですか?

中川 ロビンさんは、ミュージシャンでもあり、即興的な人なんです。そのロビンさんの感じを表すには鉛筆画がいいかも、と思って鉛筆で描きはじめました。

ロビン 中川さんの手描きのスケッチをほとんど見たことがなかったから、最初見たときはとてもびっくりしました。でも、すごいことばと絵があっているって思いました。

指先からいただくものがある

中川 手にした人はどんな感想を持ってくださるんでしょうね。

ロビン すでにこの本を手に取ってくれた人を見ていると、絵だけ見ている人と、ことばを読んでいる人と、この本を通じて全然別のことを考えてくれている人と、いろんな人がいる。でもみんな共通して、とにかくずっと持って触ってくれています。
 私の仲間に、生まれたときから目が見えないけど、ページをめくる感覚が好きで、紙の本が好きっていう人がいるんです。だから、できるだけ手から何か伝わってくるようなものにしたいと思っていました。実際そうなったと思う。指先からいただくものがあると思う。

中川 本当に触っていて気持ちがいいですもんね。今回デザイナーの鈴木千佳子さんが本当にすごくて、いわゆる一般的な詩集のような、硬い上製本にするっていう選択肢もあるなかで、ラフで作ったノートのような作りに仕上げてくださった。

IMG_1871.jpg

美味しいご飯を食べているみたいに

ーー詩をどう読んだらいいかわからないという方もいると思うのですが、何かアドバイスなどはありますか? 

ロビン 読んでいる途中でスマホを見ないようにしてほしいですね。ひとつひとつの詩が短いから、速く読むのではなく、美味しいご飯を食べているみたいに「おいしいなあ」って味わいながらゆっくり読むのがいいと思います。

中川 その人の置かれている状況によって、同じ詩を読んでも意味合いが違ってくると思うんですよ。詩って、情報として文章を取り入れるものじゃなくて、その人の中にある何かを読むものだと思います。だから、そのときの状況次第でめちゃくちゃ感動するときもあるし、あまり響かないときもあると思う。そういう体験ってすごく豊かだと思うし、Twitterとかに慣れている若い人たちにとっては、新しい出会いになるんじゃないかなって思います。

ーーこの本が、読む人にとってどんな存在になってほしい、といった思いはありますか。

ロビン ぜひ手に持って、自分の荷物に入れて、持ち歩いてほしいです。

中川 そうですね。今すごいしんどい人が多いと思うんですよ。暗いニュースや不安になるようなことがも多いし、日常が忙しいせいで心が枯れてしまっている人も多いと思いますし。そんな方もこの本を読んだら、ほっと息がつけるんじゃなかなって思います。

IMG_1870.jpg

***

 いかがでしたか? 私自身、『幸せに長生きするための今週のメニュー』が出来上がるまでの経緯や、試行錯誤についてうかがい、より一層この本への思い入れが深まりました。
 ぜひ、このインタビューを読んで興味を持たれた方は、下記のリンクに記載の取扱書店で実際に手に取ってみてください! そして、ひとりひとりの人生に寄り添う、おまもりのような一冊になることを願っています!

取扱書店一覧

編集部からのお知らせ

発刊記念イベント「京都のお寺で音と言葉と絵を味わう夜」開催します!

IMG_1873.jpg

『幸せに長生きするための今週のメニュー』の発売を記念して、一夜限りの読書と音楽のイベントを開催します。
トークイベント、読書の時間、ロビンさんによる演奏、中川さんによるライブペインティングと、盛りだくさんの2時間です。

京都のお寺で、ロビンさんによる民族楽器の演奏の中で、できあがったばかりの本を手に、静かな読書の時間を過ごしませんか。ご参加をお待ちしております。

イベント詳細

【日時】2023年2月1日(水)19:00-21:00(18:30開場)
【会場】瑞泉寺(〒604-8002 京都市中京区木屋町通り三条下ル石屋町114-1)
【出演】ロビンロイド、中川学
【参加方法】1/20に発刊する『幸せに長生きするための今週のメニュー』をお持ちの方は、無料でご参加いただけます(要申し込み、投げ銭大歓迎)。お持ちでない方も当日会場でお買い求めいただけます!
【内容】
第1部 作者の二人による発売記念トーク(30分程度)
    参加者のみなさんとの静かな読書の時間(ロビンさんによるカリンバ演奏有)
(休憩 10分)
第2部 ロビン・ロイドさんによるコンサート&中川学さんによるライブペインティング
    サイン会&交流会

詳細・お申し込みはこちら

おすすめの記事

編集部が厳選した、今オススメの記事をご紹介!!

  • 斎藤真理子さんインタビュー「韓国文学の中心と周辺にある

    斎藤真理子さんインタビュー「韓国文学の中心と周辺にある"声"のはなし」前編

    ミシマガ編集部

    ハン・ガンさんのノーベル文学賞受賞により、ますます世界的注目を集める韓国文学。その味わい方について、第一線の翻訳者である斎藤真理子さんに教えていただくインタビューをお届けします! キーワードは「声=ソリ」。韓国語と声のおもしろいつながりとは? 私たちが誰かの声を「聞こえない」「うるさい」と思うとき何が起きている? 韓国文学をこれから読みはじめる方も、愛読している方も、ぜひどうぞ。

  • 絵本編集者、担当作品本気レビュー⑤「夢を推奨しない絵本編集者が夢の絵本を作るまで」

    絵本編集者、担当作品本気レビュー⑤「夢を推奨しない絵本編集者が夢の絵本を作るまで」

    筒井大介・ミシマガ編集部

    2024年11月18日、イラストレーターの三好愛さんによる初の絵本『ゆめがきました』をミシマ社より刊行しました。編集は、筒井大介さん、装丁は大島依提亜さんに担当いただきました。恒例となりつつある、絵本編集者の筒井さんによる、「本気レビュー」をお届けいたします。

  • 36年の会社員経験から、今、思うこと

    36年の会社員経験から、今、思うこと

    川島蓉子

    本日より、川島蓉子さんによる新連載がスタートします。大きな会社に、会社員として、36年勤めた川島さん。軽やかに面白い仕事を続けて来られたように見えますが、人間関係、女性であること、ノルマ、家庭との両立、などなど、私たちの多くがぶつかる「会社の壁」を、たくさんくぐり抜けて来られたのでした。少しおっちょこちょいな川島先輩から、悩める会社員のみなさんへ、ヒントを綴っていただきます。

  • 「地獄の木」とメガネの妖怪爺

    「地獄の木」とメガネの妖怪爺

    後藤正文

    本日から、後藤正文さんの「凍った脳みそ リターンズ」がスタートします!「コールド・ブレイン・スタジオ」という自身の音楽スタジオづくりを描いたエッセイ『凍った脳みそ』から、6年。後藤さんは今、「共有地」としての新しいスタジオづくりに取り組みはじめました。その模様を、ゴッチのあの文体で綴る、新作連載がここにはじまります。

この記事のバックナンバー

06月28日
第12回 『ここだけのごあいさつ』韓国語版ができました! ミシマガ編集部
12月18日
第11回 書店員さんも推す! 大注目の小説『ビボう六』 ミシマガ編集部
11月15日
第10回 『ビボう六』刊行記念!
佐藤ゆき乃さんってどんな人?(後編)
ミシマガ編集部
11月14日
第10回 『ビボう六』刊行記念!
佐藤ゆき乃さんってどんな人?(前編)
ミシマガ編集部
08月26日
第9回 作品が消費されず、作品として残っていくためにーー前田エマ×三島邦弘 対談 ミシマガ編集部
05月12日
第8回 『ここだけのごあいさつ』がいよいよ発売! ミシマガ編集部
02月13日
第7回 一冊の本ができるまで~新人全力レポート(2) ミシマガ編集部
01月25日
第6回 『幸せに長生きするための今週のメニュー』刊行記念  ロビン・ロイドさん、中川学さんインタビュー ミシマガ編集部
01月18日
第5回 詩画集『幸せに長生きするための今週のメニュー』をつくりながら考えたこと ミシマガ編集部
01月17日
第4回 一冊の本ができるまで~新人全力レポート(1) ミシマガ編集部
08月26日
第3回 那須さんとの永遠の本づくり ミシマガ編集部
07月10日
第2回 作品が消費されず、作品として残っていくために――『動物になる日』は小商い本? 新種の子育て本? ミシマガ編集部
07月09日
第1回 作品が消費されず、作品として残っていくために――「ちいさいミシマ社」レーベルの思い ミシマガ編集部
ページトップへ