日本習合論

第3回

『日本習合論』編集担当ミシマが語る内田先生との本作り&店頭速報

2020.09.19更新

こんにちは。営業のモリこと岡田森です。

ついに、ついに、本日発売です。内田樹先生の6年ぶりの書き下ろし単著、『日本習合論』

0913_1.jpg

私は内田先生が好きすぎてミシマ社に入ったので、内田先生の新刊をお届けする機会が訪れて熱狂しています。
ミシマガトップの「昨日のひとこと」では、新人ヤマダに「みんなテンション上がっているけど、モリの上がり方は常軌を逸している」と書かれました。そんな感じです。
しかし、私は単に10年ほど内田先生のファンをしているだけ。もっと長い間、編集者として先生と一緒に仕事をしてきたのがミシマです。
というわけで、今日のミシマガでは、担当編集ミシマから、内田先生との本作りと、新刊『日本習合論』にかける思いをロングコメントでお送りします。

少数派で生きることを肯定してくれる本

早いもので、内田樹先生との本づくりは『街場の戦争論』以来、かれこれ6年ぶりでした。
私が内田先生の本の編集を担当したのは、『街場の現代思想』(2004年)が最初です。以降、『アメリカ論』、ミシマ社設立後に『中国論』『教育論』『文体論』と、一連の「街場」シリーズをご一緒してきました。その意味で、今回が初の「街場」がつかない本となります。

以前、内田先生は「街場」のことを「床屋談義」と表現されたことがあります。つまり、床屋談義的にあるひとつのトピック(教育、戦争など)にまつわる様々なことを論じる。それが「街場」シリーズなわけです(むろん、こんな高度な床屋談義は古今東西、けっしてありません!)。が、今回の『日本習合論』では、その「街場」がつかない。では、どういう視点で「日本(文化)論」を書かれたのか? といえば、床屋談義ならぬ「旦那芸」という表現を本書で採用されています。すこし長いですが、引用します。

「僕の学問だって、こう言ってよければ「旦那芸」です。でも、どの分野についても、その道の「玄人」がどれくらいすごいのか、それを見て足が震えるくらいのことはできます。そこがまるっきり素人とは違います。自分が齧ってみたことがあるだけに、それぞれの専門家がどれくらい立派な仕事をしているのか、それを達成するためにどれくらいの時間と手間をかけたのかがわかる、そういう半素人です」(p.53)

玄人と素人をつなぐ半素人、旦那芸としてーー。
遠くかけ離れた二者をつなぐ「歩哨」(センチネル)としてーー。
自然と文明、貧者と富者、弱者と強者、マイノリティとマジョリティ・・・分断が進む両者をなんとしても「架橋」(ブリッジ)しなければいけない。
そしてそれは、神道と仏教が「習合」したように必ずできる。必ずできるばかりか、そうすることで、思ってもみない景色が広がる。創造される。少なくとも、ずいぶんと息がしやすくなる。

こうした視点や考え方は、今の日本においては少数派といえるかもしれません。
内田先生は、そのことをはっきり自覚されたうえで本書を書かれた。その覚悟というか、腹のくくり具合が随所ににじみ出てきます。
心中、なみなみならぬ危機感があり、その危機感が、本書を書き上げるに至らしめたのだと思われます。「このままだと少数派が自信をなくすばかりで、少数派のない社会になってしまう。それが一番危険なことであり、共同体が修復力をなくす最大の要因となる」という危機感が・・・。

本書で内田先生は、「今の人は孤立する力、長い留保に耐える力がいささか足りないのではないか」と述べたあと、「「少数派であっても平気」という気構えを持つ人が必要」と断定されます。

この断定は、「大丈夫、俺が後ろに控えているから思いっきり少数派でいなさい」、という先生からのエールである。私は、編集しながらなんどもこの断定から大きな力を得て、日々の支えとしてきました。

ぜひ、いまの社会に息苦しさや違和感を抱いている人、「大きな声」で聞こえてくる情報に圧し潰されそうになっている人、もっと直截的に言えば、自分は少数派じゃないか、と感じている人にこそ届いてほしいです。
それでいい。
内田先生という大きな大人がどっしりと肯定してくれる。ばかりか、少数派としての生き方(戦い方、という言葉は使いたくありません)も学ぶことができます。「習合」という技(アート)、知恵を取り入れることで、(経済合理性という価値が通じない)全く新しい時代に欠かせない、しなやかな身体性を身につけていただければ、と切に願います。

自分が待っているとは気づいてもいない、待っている人たちのもとに、この本がしっかり届きますように。

三島邦弘

各地で大展開中です!

『日本習合論』、日本各地の書店さんで展開が始まっています。ミシマ社の営業メンバーが各地を回って現場を盛り上げてきました!
撮りたての写真とともにご紹介します。

 ぜひ、お近くの書店さんでお手にとってご覧ください!
 数量限定、サイン本が買えるお店の一覧はこちら!

イベント予告:内田樹先生と、三砂ちづる先生のオンライン対談を開催します!

『日本習合論』発刊記念 内田樹×三砂ちづる対談「少数派で生きていくために」
を開催します! チケット発売次第、あらためてアナウンスいたします。
日程:10月14日(水)19時~20時半

アーカイブ動画発売:内田樹×朴東燮「『日本習合論』発刊記念 これからの時代は<習合>で生きる」

オンラインで開催した本書の刊行記念対談の録画版の配信を開始しました。
朴先生が"内田樹研究者"として『日本習合論』と内田先生を読み解くエキサイティングな対談でした。内田先生が「朴先生は世界で一番俺のことを知っている」と漏らす場面も・・・!
10月25日までの期間限定配信です。お申し込みはこちら。

uchidapark1_1.png

ミシマガ編集部
(みしまがへんしゅうぶ)

おすすめの記事

編集部が厳選した、今オススメの記事をご紹介!!

この記事のバックナンバー

03月08日
第13回 内田樹×後藤正文 対談「習合と音楽〜創作と想像をめぐる対話」(2) ミシマガ編集部
03月07日
第12回 内田樹×後藤正文 対談「習合と音楽〜創作と想像をめぐる対話」(1) ミシマガ編集部
01月25日
第11回 W刊行記念 内田樹×釈徹宗「日本宗教の "くせ" を考える 富永仲基と「習合」の視点から」(2) ミシマガ編集部
01月24日
第10回 W刊行記念 内田樹×釈徹宗「日本宗教の "くせ" を考える 富永仲基と「習合」の視点から」(1) ミシマガ編集部
12月04日
第9回 内田樹×三砂ちづる対談「少数派として生きていく」(2) ミシマガ編集部
12月03日
第8回 内田樹×三砂ちづる対談「少数派として生きていく」(1) ミシマガ編集部
10月20日
第7回 発刊から1か月! 読者の方からたくさんのご感想が届いています! ミシマガ編集部
10月13日
第6回 内田樹先生×朴東燮先生「これからの時代は<習合>で生きる」(2) ミシマガ編集部
10月12日
第5回 内田樹先生×朴東燮先生「これからの時代は<習合>で生きる」(1) ミシマガ編集部
09月20日
第4回 『日本習合論』装丁デザイナー尾原史和さんインタビュー ミシマガ編集部
09月19日
第3回 『日本習合論』編集担当ミシマが語る内田先生との本作り&店頭速報 ミシマガ編集部
09月13日
第2回 内田樹先生新刊『日本習合論』、編集担当ミシマによる動画メッセージ&サイン本店舗発表! ミシマガ編集部
08月23日
第1回 内田樹先生の新刊『日本習合論』来月発売! ミシマガ編集部
ページトップへ