縁食論

第8回

発刊後も深まる『縁食論』のいま

2021.02.25更新

こんにちは、ミシマガ編集部です。

孤食でも共食でもない、しなやかなつながりによる「縁食(えんしょく)」という新たな食のかたちを提示し、そのあり方を模索した、藤原辰史さんの『縁食論』。以前ミシマガでも、さまざまなメディアでご紹介いただいていることをお伝えしましたが、その後も、北海道新聞、東京新聞、毎日新聞、読売新聞など新聞各紙に書評が掲載されたり、ABCラジオ「道上洋三の健康道場」でご紹介いただいたりと、多方面の方がご注目くださっています。

毎日新聞では詩人の渡邊十絲子さんが書評を書いてくださいましたが、時を同じくして、毎日新聞の記者の方も『縁食論』の書評をご執筆くださっていたのです! 同じ書籍の書評を2度掲載することはしないため、「幻の書評」となってしまったその書評を、今回、ミシマガで特別に公開いたします!

本日は、そんな書評や読者の方からいただいたご感想などをご紹介し、いかに、今の時代に『縁食論』が必読の書であるか、お伝えしていきます! そして、発刊後もさらに深まり続けている『縁食論』の「いま」をご紹介します。

88f4eda74568f88c17c8.jpg『縁食論』藤原辰史(ミシマ社)

『縁食論』もうひとつの書評

 「えんしょく」は、筆者の造語だ。1人で食べるわけではないので「孤食」ではない。ただ共食でもない。たとえば家族の食事のような共同体意識を醸し出すことが期待されているわけではないからだ。複数の人間が同じ空間で食を共にしつつ、つながることを強要されるわけでもない。それでも縁が深まって、さまざまなつながりになり得る。筆者が例示するのが「こども食堂」であり、旅先で入った飲食店の主人と盛り上がり一時を過ごした経験だ。筆者はこの「縁食」をキーワードに日本社会、世界までを見渡した「あたらしい食のかたち」を模索する。
 農業史、食の思想史が専門の筆者は、膨大な資料を読み込み分析して展開する。その成果は、『ナチスのキッチン』や『給食の歴史』などに結実している。一方で本書では、ラジカルな思考実験を展開する。たとえば食費がかからない社会、すなわち<食べ物は基本的人権の当然の行使として自由に食べることができる>社会だ。さらに実現する上でそびえるであろうハードルの乗り越え方も提示する。究極のベーシックインカム論として読める。さらには学校給食のあり方についても、その「暴力性」(食べたくないものまで食べさせられるなど)を明白にしつつ、やはり暴力性を持つ弁当(家庭の経済格差がもろに現れる)との「弁証法」を、具体的な方法を示しつつ構想した。
 食べることは宗教や人種、経済的格差にかかわらずすべての人間に関わる。であればこそ、さまざまな結びつきの可能性を持つことを本書は教えている。

毎日新聞学芸部記者 
栗原俊雄

読者の方のご感想

本書をお読みくださった読者の方からも、ぞくぞくと感想のおはがきが届いています。

ものすごくおもしろかったです!! 目的もなく、ただ誰かと話すこと、食卓を囲むこと、大学で集まって議論することは、不要不急と認定される現実を残念に思うと共に、偶然性がなくなったらこれからどうなるのか、そのあり方を考えていたこの1年だったので、多くのヒント、刺激をいただきました。「弱目的性」についてこれからも考えたいです。(20代読者)

コロナ禍で人と会食する機会が激減。独り外食も減りましたら、"食"への興味や楽しみも減りました。「縁食」の考え、いいですね。独りで食べつつ、誰かの食べる音、場の音、湯気、匂い、おしゃべり・・・こういう場があれば、元気に生きていけると思います。必要です。(50代読者)

今の食に関する状況が理解できて、この中の提言のいくつかでも実現できれば、世の中が少しずつ良くなっていくのではないかと思いました。私に何ができるか、自分に問いかけています。(50代読者)

122ページの「死者とともに食べる」を読んで、心をゆさぶられました。本をよんでいて涙を流すことはあっても、声に出して泣いたのは久しぶりでした。(60代読者)

食べることは生き方そのもの。誰と食べる?誰が作る?それを口に入れるのは、他者を受け入れること。哀しい時、ほんのちょっとでも"おいしい"と思える時があると、生きていく支えになる。(70代読者)

縁食論のその後「縁食論後縁録」

ご紹介したように、『縁食論』を読んだ方から、すでにさまざまなご意見やご感想が寄せられています。そんな方々の声や、対談のお相手により投げかけられた問いを受け、藤原さんは"縁食論のその後"となる「縁食論後縁録」をご執筆されました。発刊から数カ月で、さらに深まっている「『縁食論』のいま」をぜひお読みください!

縁食論後縁録

「縁食論後縁録」には、MSLive!で行ったふたつの対談(現在アーカイブ配信中)も影響を与えています。

【2/28(日)までの期間限定配信】藤原辰史×松村圭一郎「縁食から世界を変える」

374007bb1a8135add2c0.jpg『縁食論』をお読みになった文化人類学者の松村圭一郎さんから投げかけられた、ぼやかすことのないまっすぐの問いや意見に、すぐさま藤原さんが新たな案を提示する。ものすごいラリーが繰り広げられていました。

詳しくはこちら

【3/12(金)までの期間限定配信】光嶋裕介×藤原辰史対談「あいだ」のつくり方、ひらき方

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縁食的な場の実現のために建築家が果たす役割とは? 建築家の光嶋裕介さんとの対談を通じて迫りました。

詳しくはこちら

藤原辰史×伊藤亜紗対談 開催します!

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ミシマ社が発刊している雑誌「ちゃぶ台」。その制作過程に、読者のみなさまにも立ち会っていただこうと、MSLive!にて「ちゃぶ台編集室」というイベントを開催しています。

そんな「ちゃぶ台編集室」、3/1(月)に開催する次回は、藤原辰史さんと、昨年『手の倫理』でサントリー学芸賞を受賞された、伊藤亜紗さんによる対談をお届けします。「『ふれる、もれる』社会をどうつくる? ―分解と利他―」というテーマで、コロナ後の社会のありかたを模索する、必聴の対談です。

詳しくはこちら

***

伊藤さんとの対談などを経て、『縁食論』はどのように展開していくのか、今後の動向にもご注目ください。

藤原 辰史

藤原 辰史
(ふじはら・たつし)

1976年生まれ。京都大学人文科学研究所准教授。専門は農業史、食の思想史。2006年『ナチス・ドイツの有機農業』で日本ドイツ学会奨励賞、2013年『ナチスのキッチン』で河合隼雄学芸賞、2019年日本学術振興会賞、同年『給食の歴史』で辻静雄食文化賞、『分解の哲学』でサントリー学芸賞を受賞。『カブラの冬』『稲の大東亜共栄圏』『食べること考えること』『トラクターの世界史』『食べるとはどういうことか』『縁食論』『農の原理の史的研究』ほか著書多数。

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