語尾砂漠

第11回

話題の「ChatGPT」に「ネコ語尾」でしゃべってもらった

2023.03.27更新

「ChatGPT」は結構面白い

 最近、話題の「ChatGPT」。
 いわゆる「自然言語処理技術」を用いたアプリケーションで、こちらからの質問に対してAIが文章を自動で生成して、答えを出してくれます。

 これが面白くて、毎日のように使っています。
 たとえば、「○○について教えてほしい」と聞けばそれっぽい文章にしてまとめてくれるので、情報量が多すぎるウィキペディアなどよりもよほど端的に答えが得られます。
 また、「リーダーにとって重要な10のこととは?」といった質問をすると、そこらのネット記事よりしっかりとした文章を作ってくれます。
 先日「○○をテーマにした本のタイトルを考えて」とお願いしたら、瞬時に10個くらい答えてくれました。そこらの編集者より優秀かも。

 ちなみにChatGPTの仕組みは、オンライン上の膨大なテキストデータを収集し、そのデータと入力された質問との関係を類推し、文章を生成するというもの。
 ということは、「こういう人はこういう語尾を使いがちである」というビッグデータから、人間の語尾を解析することもできるはずです。
 ということで、やってみました。

「だにゃー」「だワン」は再現されるか?

 最初にChatGPTに投げかけた質問は、これです。

:「ネコのような語尾で何か話してください」

 「人間の語尾を解析」と言っておきながらいきなりこれか、という感じですが、やはり語尾と言えばネコの「にゃ」でしょう。ChatGPT先生はこのような返答をしてくれました。

ChatGPT:「にゃーん、今日はとってもいい天気にゃ! お外で遊ぶにゃん? それともお昼寝するにゃ? にゃはは、私はお昼寝が大好きなんだにゃ〜」

 おお、ChatGPT先生、ちゃんと「ネコ語尾」を使ってくださっている!
 これはもうビッグデータ的にも「ネコの語尾はニャ」だと証明されたといっても過言ではないでしょう。もちろん、現実には「語尾ににゃをつけて話すネコ」は皆無ではあるのですが。

 では、ネコに次いで著名な動物語尾である、犬の「だワン」はどうでしょうか。
 「犬のような語尾で何か話してください」と質問したところ、このような答えでした。

ChatGPT:「わんわん! 今日も楽しそうな匂いがするにゃん! 一緒に走り回ろうぜ! あっちに何かあるぞ! ガウッ! あ、ごめん、ちょっと興奮しちゃったわん。でも、こんな日は外で思いっきり遊ぶのが最高だぜ!」

 「わんわん」と言いながら直後に「にゃん」とか言っている時点でキャラのブレが感じられますが、中盤でちゃんと、「興奮しちゃったわん」と、「犬語尾」を付けてくれています。
 しかし、一番多い語尾はまさかの「だぜ」。
 近所の犬がこっちに向かって吠えているときには、「おい、一緒に走り回ろうぜ」とか「今日はいい天気だぜ」とか言っているということなのでしょうか。犬のイメージが一変します。スギちゃんっぽいキャラだったのか。
 そして繰り返しますが、「だわん」とも「だぜ」とも、語尾につけて話す犬など現実には存在しません。なのに「犬ならこんな語尾で話しますよ」と自信満々かつノリノリで答えるChatGPT。「ビッグデータとは、AIとは何なのか」という気がしないでもないです。

意外過ぎる象の鳴き声

 さて、犬もネコも鳴き声を語尾につけるというオーソドックスな語尾観(語尾観?)を持っていましたが、鳴き声が直接的に語尾に繋がりにくい動物はどうなのか。たとえば、「象だゾウ」という語尾で一部好事家の間で有名な象。「象のような語尾で何か話してください」と聞いたところ、

ChatGPT:「トゥーン! 今日の天気はとても暑いですね。私は涼しい水の中にいたいです。あなたも一緒に水の中に入りませんか? トゥーン! 泳ぐのは気持ちがいいですよ。トゥーン! あなたは水泳が得意ですか? 私はまだちょっと苦手ですが、トゥーン! 頑張って練習しています」

 ・・・トゥーン?
 象のあの「パオーン」と表現される鳴き声は、「トゥーン」と表現されるようです。ほぼすべての文章の間に「トゥーン」が入ってるのは、これが語尾のつもりなのかもしれません。つまり、「入りませんかトゥーン」「苦手ですがトゥーン」というわけですね。

 「だゾウ」という、何となく上から目線を感じる語尾に比べ、愛嬌がある語尾と言えます。なんか小バカにされているような気もしますが。

 それにしても、ちゃんとネコと犬と象とで、話のシチュエーションが微妙に違うのが芸コマです。象って水浴び好きだもんなぁ。

西郷隆盛の語尾はゴワスじゃなイカ

 そういえば前回、「イカ語尾」について取り上げました。『侵略!イカ娘』というマンガ/アニメのキャラが使う「じゃなイカ」「でゲソ」という秀逸な語尾があるのですが、ChatGPT先生はこの語尾を拾ってくれているでしょうか。

:「イカのような語尾で何か話してください」

ChatGPT:「ズボーン! こんにちは! 今日はいい海のにおいがするズボーン! お腹が空いたズボーン。何か美味しいものがないかな? ズボーン! あっ、そうそう、最近友達ができたズボーン。イカ友達はとても大切だから、大切にしたいズボーン! 今度、一緒に遊んでくれるって言ってたんだズボーン。うれしいなぁ」

ズ、ズボーン!? イカを表すとしては斬新すぎる語尾。水を吐き出して高速移動するときの音でしょうか? それともイカのゲソを「ズボン」に見立てているのでしょうか。最近できたという、「イカ友達」に聞いてみたいところです。

 ちなみに、動物以外だと、「下っ端っぽい語尾で話してください」とか「貴族っぽい語尾で話してください」とかお願いしてみても、話す内容が下っ端っぽかったり貴族っぽかったりするくらいで、語尾に変化はありませんでした。
 唯一、「西郷隆盛のような語尾で何か話してください」とお願いしたところ、語尾に変化がありました。

「おおっ! こちらはChatGPTでござるか。まことに光栄にござる。今日はござるようにお客様のお役に立てますよう、最善を尽くし候え。何卒、どうぞお気軽にお尋ねくだされば、心よりお応え申し上げるでござる」

 惜しい! 「ござる」じゃなくて、「ごわす」と言ってほしかった。もっとも西郷さんも公式な場では「ござる」と言っていたかもしれず、歴史に忠実なのかもしれません。

 AIはデータを蓄積してどんどん進化していきますから、いずれは「西郷さん語尾」くらいならマスターしてくれるかもしれません。そんな日を楽しみにしながら、怪しい語尾を使った文章をせっせとネット上にUPして、ChatGPTを混乱させたいと思います。

松樟太郎

松樟太郎
(まつ・くすたろう)

1975年、「ザ・ピーナッツ」解散と同じ年に生まれる。ロシア語科を出たのち、生来の文字好き・活字好きが嵩じ出版社に入社。ロシアとは1ミリも関係のないビジネス書を主に手がける。現在は、ビジネス書の編集をする傍ら、新たな文字情報がないかと非生産的なリサーチを続けている。そろばん3級。TOEIC受験経験なし。著書に『声に出して読みづらいロシア人』(ミシマ社)『究極の文字を求めて』(ミシマ社)がある。

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