健康番長若林理砂先生のバッチコイ!

第13回

疫病対策あれが効くこれが効くについて

2020.05.07更新

 さてさて、前回の原稿からすっかり世界は一変していますが、皆様お体大丈夫でしょうか? 元気になさってますか? 罹患した人も罹患していない人も、とりあえずここを読んでいらっしゃるってことはまあまあなんとかなってるということで、たいへん喜ばしいことです。

 さあ、いま流行の疫病、あれが効くこれが効くと、様々に当初から言われており、わたしとしては「また出たぞコレ」と面白がって見ておりました。今回は、「結局あれって効くの?」についてお話ししておこうかなと思います。

 コがつくアイツについては、

 ・予防策
 ・免疫力アップ

 この辺がやっぱり問題になってますよね。みんな知りたい疫病のあれこれ、バッサバッサ切り刻んでみましょうか。

 まずは。予防策。

 これは、「手洗い・顔を触らない」この二つに集約されます。それでですね、手洗いなんですが、石鹸で20秒というのが指針になってますが、水洗いを頻繁にすることの方が良いのではないか? という話が出ています。

 これは、病原体の濃度を下げればいいのだから、医療現場のように完全に消毒しなくても良いという話です。わたしははこの立場を支持しています。なので、手を洗えない場合は、ウェットティッシュなどでごしごし拭いてやるだけでもだいぶ良いはずです。この時、できれば手なら手首方面へ、一方向へぬぐってやると効果的です。

 ですので、そんなに必死にアルコールで手指を殺菌しなくても大丈夫。それよりも、頻繁に手を水洗いしてあげましょう。そして、顔を触るなら手を洗ってからですね。もしくは安全なところだけを触ったのがわかっている手だけで触ること、です。

 マスクについて。これで疫病の罹患を予防しようってのはまず無理。人に感染させないためにつけておくものです。マナーとかエチケットよね。わたしは、オープンエアの場所に出かける時はつけないですが、お店に入るとか、人混みに入るとか、公共の乗り物に乗るとか、臨床に立つとかの場合にマスクをつけています。

 この場合、布でもサージカルマスクでもなんでも構いません。だって、唾の大きい飛沫が飛ばないようにするだけのものだから。ガンガン人と話したい時はつけといた方が気兼ねなくて安心かもね。

 ちなみに、空間除菌系は感染症予防には全く意味がありません。首から下げるあれだのこれだのは言語道断。そして、次亜塩素酸水を空中に噴霧するのもNG。吸い込んで呼吸器にダメージを引き起こしますし、吸い込んで肺を消毒することもできません。それと、トランプ大統領が「消毒薬注射したらいいんじゃね?」とか言ってましたが、もちろん、消毒薬を飲んだり注射したりしてはいけません・・・死ぬで。

 次、免疫系に効くアレコレについて。例によっていろんな食材だのサプリメントが効くと言われていますが、現時点で効くとわかっているものは、

 ・・・一切ありません。

 一切ありません!!!!!!!

 はい、一切ありませんです!!!!!!

 ほんとごめんよ。何かを食べたり飲んだりして、疫病に対する防御力を高めるって話はまず無理だと思ってください。あれこれで「免疫力を高める」って書いてあったら、とりあえずそれはウソだと思って。

 新型コロナで注目の「免疫系」 戦う力を下げないコツは:朝日新聞デジタル

 有料記事ですが、一度、対談させていただいたことがある、大阪大学の仲野徹教授が詳しく書いてるぞ。免疫力って言葉は、医学用語には存在しないのだ。この記事についている挿絵に書いてあるように、

 ・ストレスを溜めない
 ・運動
 ・酒を飲みすぎない
 ・禁煙
 ・栄養バランスの取れた食事
 ・十分な睡眠

 を心がけることが一番の免疫系を保つコツなのですよ・・・東洋医学の『養生』よね、これ。

 https://www.caa.go.jp/notice/assets/200310_1100_representation_cms214_01.pdf

 こちらのpdfは、消費者庁から出ている「新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする商品 の表示に関する改善要請等及び一般消費者への注意喚起 について」です。先ほどの首から下げる空間除菌もここに注意喚起されています。

 「空間除菌」根拠なし 消費者庁、17社に措置命令:日本経済新聞

 空間除菌は、随分前に根拠なしってされていて、消費者庁に措置命令受けてるんです。それでも売ってるんだけどもね。

 ・・・ま、とどのつまり、疫病には、しっかり手洗って養生しておけ、ってことです。

お知らせ

この連載が、書籍になりました!
連載以外の相談もたっぷり収録されています。
ぜひ書店でお買い求めください!
『謎の症状 心身の不思議を東洋医学からみると?』

書影.jpeg

若林 理砂

若林 理砂
(わかばやし・りさ)

臨床家・鍼灸師。1976年生まれ。高校卒業後に鍼灸免許を取得。早稲田大学第二文学部卒(思想宗教系専修)。2004年に東京・目黒にアシル治療室を開院。現在、新規患者の受け付けができないほどの人気治療室となっている。古武術を学び、現在の趣味はカポエイラ。著書に『絶対に死ぬ私たちがこれだけは知っておきたい健康の話』『気のはなし 科学と神秘のはざまを解く』(ミシマ社)、『東洋医学式 女性のカラダとココロの「不調」を治す44の養生訓』(原書房)、『安心ペットボトル温灸』『大人の女におやつはいらない』(夜間飛行)、『その痛みやめまい、お天気のせいです――自分で自律神経を整えて治すカンタン解消法』(廣済堂出版健康人新書)、『決定版 からだの教養12ヵ月――食とからだの養生訓』(晶文社)、など多数。

おすすめの記事

編集部が厳選した、今オススメの記事をご紹介!!

  • 『中学生から知りたいパレスチナのこと』を発刊します

    『中学生から知りたいパレスチナのこと』を発刊します

    ミシマガ編集部

    発刊に際し、岡真理さんによる「はじめに」を全文公開いたします。この本が、中学生から大人まであらゆる方にとって、パレスチナ問題の根源にある植民地主義とレイシズムが私たちの日常のなかで続いていることをもういちど知り、歴史に出会い直すきっかけとなりましたら幸いです。

  • 仲野徹×若林理砂 

    仲野徹×若林理砂 "ほどほどの健康"でご機嫌に暮らそう

    ミシマガ編集部

    5月刊『謎の症状――心身の不思議を東洋医学からみると?』著者の若林理砂先生と、3月刊『仲野教授の この座右の銘が効きまっせ!』著者の仲野徹先生。それぞれ医学のプロフェッショナルでありながら、アプローチをまったく異にするお二人による爆笑の対談を、復活記事としてお届けします!

  • 戦争のさなかに踊ること─ヘミングウェイ『蝶々と戦車』

    戦争のさなかに踊ること─ヘミングウェイ『蝶々と戦車』

    下西風澄

     海の向こうで戦争が起きている。  インターネットはドローンの爆撃を手のひらに映し、避難する難民たちを羊の群れのように俯瞰する。

  • この世がでっかい競馬場すぎる

    この世がでっかい競馬場すぎる

    佐藤ゆき乃

     この世がでっかい競馬場すぎる。もう本当に早くここから出たい。  脳のキャパシティが小さい、寝つきが悪い、友だちも少ない、貧乏、口下手、花粉症、知覚過敏、さらには性格が暗いなどの理由で、自分の場合はけっこう頻繁に…

この記事のバックナンバー

07月19日
第16回 夏の虫除けと日焼け対策 若林 理砂
06月29日
第15回 分子栄養学って、どうなんでしょう? 若林 理砂
06月06日
第14回 新型コロナウィルス関連しぐさ 若林 理砂
05月07日
第13回 疫病対策あれが効くこれが効くについて 若林 理砂
03月26日
第12回 【新企画】それって効くの? を確かめる 若林 理砂
02月27日
番外編 新型コロナウィルスを中医学でどう捉え、どう予防しようとしているか。 若林 理砂
01月24日
第11回 へその上あたりが膨れた感じがします、ほか 若林 理砂
12月21日
第10回 スマホを使いすぎて首が痛いです、ほか 若林 理砂
11月18日
第9回 忙しくて心がザワザワします、ほか 若林 理砂
10月18日
第8回 眠りにかかわるすべてが苦手です、ほか 若林 理砂
09月19日
第7回 歩くと体がかゆくなります、ほか 若林 理砂
08月16日
第6回 生後すぐからアトピーです、ほか 若林 理砂
07月11日
第5回 がんばらないとうんちが出ません、ほか 若林 理砂
06月19日
第4回 子育て中、細切れに起きてしまい疲れがとれません、ほか 若林 理砂
05月13日
第3回 週に1~2回ドカ食いをしてしまいます、ほか 若林 理砂
04月17日
第2回 半年前から毎月風邪をひいています、ほか 若林 理砂
03月15日
第1回 寝ている間に身体が固まる、ほか 若林 理砂
ページトップへ