健康番長若林理砂先生のバッチコイ!

第14回

新型コロナウィルス関連しぐさ

2020.06.06更新

 緊急事態宣言が解除され、おっかなびっくりではありつつも日常生活に戻って行きつつある昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか? 今回は、多分それって意味がないと思うな・・・という、街で目にする「しぐさ」についてです。

 少し前からですが、「新型コロナウィルス感染症蔓延防止のためにコイントレーを使用します」というような張り紙がなされているレジをよく見かけます。私はこれ、最初は何を言われているのか全くわからなかったのです。金銭のやり取りを直接手から手ではなくトレーを介して行うよ、という意味なのはわかるのですが、それと疫病蔓延防止が全く結びつかなかったのです。

 では、コイントレーにてお金をやり取りするとして。どんな手順になるかといえば、

1. 顧客がトレーに代金を乗せる
2. 店員がトレーの代金を手に取る
3. お釣りがあればそれとレシート、なければレシートのみをトレーに置く
4. 顧客がトレーからレシートやお釣りを手に取る

 この手順になると思います。で、です。問題は、「トレーにおいたら、コロナウィルスは死ぬのか?」なのですが、そんなわけはないですよね。何か人知の及ばぬ魔法でもかけてあるか、トレー内に消毒液が満たしてあって、そこにお金をドボンと漬けるのでなければ。

 結局手でお金のやり取りをしているので、トレーにおいてもおかなくても同じこと。なので、私は疫病蔓延防止のために・・・の下りが全く理解できなかったのです。

 また、直接手が触れないように手袋をしている店員さんもよく見かけますが、手袋の表面にはいくらでも汚れがつきます。また、手の皮膚からコロナウィルスが侵入して感染するということはないので、手袋自体が何か意味をなすかというと、そんなこともありません。医療関係者が手袋をしているのは、主に自分の手についている病原体を弱っている相手に与えないためと、痰や鼻水、血液などの強力な感染源として機能する体液を手で触ることがあるからなのです。

 前回お伝えしたように、手を消毒することと、手に汚れがついている状態で顔を触らないことが何よりも大切な予防手段です。これをひっくり返して言えば、

「なに/どこを触っても、手を洗うなり消毒するなりすればOK。できない状態なら顔は触らない」

ということなのですよ。

 端的な例として、「つり革や手すりを絶対に触らない」という苦行があります。これも、触ったからと言ってそれで皮膚から感染することはありませんから、その手でやたらに顔や口を触らないということだけでOK。電車やバス内で掴まるところなしで立っていることの方が、何らかの事故などの際に危険度が増しますのでね。

 なにかを触ったら顔は触らない。そして、こまめに洗うのが基本。ハンドソープや石鹸がなかったとしても流水でこまめに洗ってやること。これでも十分リスク軽減になります。アルコール消毒液があるならそれを使うこと。

 これらのような「しぐさ」が、いつの日か、中世のペストマスクのように「何であんなことしてたんだろうねえ」と、笑い話になる日が早くくることを祈るばかりです。

お知らせ

この連載が、書籍になりました!
連載以外の相談もたっぷり収録されています。
ぜひ書店でお買い求めください!
『謎の症状 心身の不思議を東洋医学からみると?』

書影.jpeg

若林 理砂

若林 理砂
(わかばやし・りさ)

臨床家・鍼灸師。1976年生まれ。高校卒業後に鍼灸免許を取得。早稲田大学第二文学部卒(思想宗教系専修)。2004年に東京・目黒にアシル治療室を開院。現在、新規患者の受け付けができないほどの人気治療室となっている。古武術を学び、現在の趣味はカポエイラ。著書に『絶対に死ぬ私たちがこれだけは知っておきたい健康の話』『気のはなし 科学と神秘のはざまを解く』(ミシマ社)、『東洋医学式 女性のカラダとココロの「不調」を治す44の養生訓』(原書房)、『安心ペットボトル温灸』『大人の女におやつはいらない』(夜間飛行)、『その痛みやめまい、お天気のせいです――自分で自律神経を整えて治すカンタン解消法』(廣済堂出版健康人新書)、『決定版 からだの教養12ヵ月――食とからだの養生訓』(晶文社)、など多数。

編集部からのお知らせ

7/20(月)若林理砂さんのオンライン講座「夏バテしない身体づくり」開催します!

summer_wakabayashi.jpg

「夏が楽しくなる!大人のためのサマー講座」にて、若林理砂さんの「夏バテしない身体づくり」を開催します!
例年にも増して、体調管理に気を配らなければならない今年の夏を健康に乗り越えるための、体との付き合い方を教えていただきます。

詳しくはこちら

サマー講座概要はこちら

おすすめの記事

編集部が厳選した、今オススメの記事をご紹介!!

  • 『中学生から知りたいパレスチナのこと』を発刊します

    『中学生から知りたいパレスチナのこと』を発刊します

    ミシマガ編集部

    発刊に際し、岡真理さんによる「はじめに」を全文公開いたします。この本が、中学生から大人まであらゆる方にとって、パレスチナ問題の根源にある植民地主義とレイシズムが私たちの日常のなかで続いていることをもういちど知り、歴史に出会い直すきっかけとなりましたら幸いです。

  • 仲野徹×若林理砂 

    仲野徹×若林理砂 "ほどほどの健康"でご機嫌に暮らそう

    ミシマガ編集部

    5月刊『謎の症状――心身の不思議を東洋医学からみると?』著者の若林理砂先生と、3月刊『仲野教授の この座右の銘が効きまっせ!』著者の仲野徹先生。それぞれ医学のプロフェッショナルでありながら、アプローチをまったく異にするお二人による爆笑の対談を、復活記事としてお届けします!

  • 戦争のさなかに踊ること─ヘミングウェイ『蝶々と戦車』

    戦争のさなかに踊ること─ヘミングウェイ『蝶々と戦車』

    下西風澄

     海の向こうで戦争が起きている。  インターネットはドローンの爆撃を手のひらに映し、避難する難民たちを羊の群れのように俯瞰する。

  • この世がでっかい競馬場すぎる

    この世がでっかい競馬場すぎる

    佐藤ゆき乃

     この世がでっかい競馬場すぎる。もう本当に早くここから出たい。  脳のキャパシティが小さい、寝つきが悪い、友だちも少ない、貧乏、口下手、花粉症、知覚過敏、さらには性格が暗いなどの理由で、自分の場合はけっこう頻繁に…

この記事のバックナンバー

07月19日
第16回 夏の虫除けと日焼け対策 若林 理砂
06月29日
第15回 分子栄養学って、どうなんでしょう? 若林 理砂
06月06日
第14回 新型コロナウィルス関連しぐさ 若林 理砂
05月07日
第13回 疫病対策あれが効くこれが効くについて 若林 理砂
03月26日
第12回 【新企画】それって効くの? を確かめる 若林 理砂
02月27日
番外編 新型コロナウィルスを中医学でどう捉え、どう予防しようとしているか。 若林 理砂
01月24日
第11回 へその上あたりが膨れた感じがします、ほか 若林 理砂
12月21日
第10回 スマホを使いすぎて首が痛いです、ほか 若林 理砂
11月18日
第9回 忙しくて心がザワザワします、ほか 若林 理砂
10月18日
第8回 眠りにかかわるすべてが苦手です、ほか 若林 理砂
09月19日
第7回 歩くと体がかゆくなります、ほか 若林 理砂
08月16日
第6回 生後すぐからアトピーです、ほか 若林 理砂
07月11日
第5回 がんばらないとうんちが出ません、ほか 若林 理砂
06月19日
第4回 子育て中、細切れに起きてしまい疲れがとれません、ほか 若林 理砂
05月13日
第3回 週に1~2回ドカ食いをしてしまいます、ほか 若林 理砂
04月17日
第2回 半年前から毎月風邪をひいています、ほか 若林 理砂
03月15日
第1回 寝ている間に身体が固まる、ほか 若林 理砂
ページトップへ