第12回
ミシマ社の一筆せんをつくろう! その2
2021.03.10更新
こんにちは。ミシマ社仕掛け屋チームです。ただいま進行中のミシマ社一筆せんプロジェクト、今回は一緒に制作をする「表現社」のアートディレクター・高倉英俊さんにお話を伺います。高倉さんは11年前に表現社に入社、その後一人で社内ブランド「cozyca products(コジカプロダクツ)」を立ち上げました。老舗の和文具メーカーで、新しいことに挑戦する――。文具と出版、互いのフィールドは違えど、そこにはミシマ社の出版活動においても大事にしたいお話が、たくさんありました。
表現社 高倉さんインタビュー
――表現社さんは歴史(昭和8年創業)がありますよね。
高倉 僕もまだ勉強中で知らない部分がたくさんあるんですけど・・・戦後に進駐軍が自分の母国の家族のために、和柄のクリスマスカードを贈りたい、という話があって。弊社だけでなくいろんなメーカーが、アメリカの人たちのために和柄のカードを作り始めたんですよ。それが広まっていったのと、あとは便せんだったり紙製品中心に商品を作り続けていって、いまに至るっていう感じですね。
高倉さんは美術系の学校を卒業後、国立博物館のスタッフやロンドンで映像関係のお仕事などをされたのち、京都で和紙の会社に就職。そこでは、図案を描くお仕事をされていたそう。2010年、表現社に入社します。
高倉 入社して2年くらいたったときに、いろいろ商品をつくるけど、いまいちしっくりこないというか、ピンとこない部分があって。「和」ってなんだろうと考え始めて。
和っていうと日本という意味ですよね。作家さんや図案家さんが描いた、伝統的な柄や絵もすばらしいんですけど、「いま」日本で、頑張って活動している作家さんたちを紹介しないとだめなんじゃないか、っていう使命感が出てきて・・・そういうブランドを立ち上げたいと社長にお願いしました。自分はもともと図案を描いていて、それで(表現社に)入れてくれたと思うんですけど、いきなりそんなこと言い出したからびっくりしたと思う(笑)。けど、ありがたいことにスタートさせてもらって、一番最初はSubikiawa.(スビキアワ)というグラスの作家さんと一緒にやりました。2013年に東京ビックサイトの展示会に二人で行って、はじめてコジカプロダクツで出展させてもらったのが、出発点です。
ブランドを立ち上げてしばらくは「ひとりでさびしく」(by高倉さん)やっていた高倉さんですが、後に現スタッフの小田村さんと築島さんが入社。ご近所には直営店「HIRAETH(ヒライス)」もオープンし、そこの店長さんも加わって、現在コジカプロダクツは4人のチームになりました。
高倉さんと、一緒に働くチームのみなさん。一筆せん制作ではお世話になります!
自分の仕事で、つないでいく。
――一筆せんのデザインは、どうやって決めているんですか?
高倉 便せんとしての機能というか、ぜんぜん使えないというのはまずいですけど、基本は作家さんに自由にやってもらうのがいいなあ、と思っています。売れないといけないというのもあるから、そのへんはバランス調整しなきゃいけない部分もあるけど、もともと作家の絵を広めたい、っていう思いからはじめたブランドなので。あんまり言い過ぎて、「え? これこの人の(絵)?」となるよりは、できる限り自由にやってもらおう、と。
一番最初にSubikiawa.と作った一筆せんを展示会で発表したときに、たとえばこれ、便せんの真ん中に絵があるじゃないですか。「どうやって使うの?」とも言われたんですけど、特に若いバイヤーの方からは「そんなの関係ないですよ」「かわいいからいいじゃないですか」っていう声のほうが大きくて。文字を書く部分が少ない、っていまもたまに言われたりするんですけど、自由に、できる限り他にないことを、やっていきたいなっていうのがあります。
――現代の作家さんの絵に、伝統的なイメージがある和紙を使って商品を作っていることに、驚きました。
高倉 表現社の商品も、和柄だけど洋紙を使っているものが増えてきていて、けどコジカプロダクツは和紙を使いたいなと思って。ただ、ハガキとかメモ帳とか、和紙が使えない商品もいくつかあるので、そういうのは洋紙を使ってますけど。
使うときはほとんど、美濃和紙です。世界遺産になったのは「本美濃紙」という手漉きの和紙で、弊社が使っている和紙は機械漉きなので、人によっては、そんなの和紙じゃないという人もいます。でも製紙工場の人は、機械を使ってどれだけ職人さんの手漉きに近づけられるか、同じ場所、同じ空気、同じ水で、材料はちょっとちがったりするんですけど、自分たちはこれを自信もって和紙と言っている、とおっしゃっていたので。値段だったり、取り都合がいいサイズだったり、使う理由は他にもいろいろあるんですけど、美濃和紙は昔から近江商人が、京都や大阪や伊勢に流通させて商売していたみたいで。そういう歴史的なことも吸収しながら、作っていきたいなと思っています。
結局いろんなものって、つないでいかないといけないですし。日本古来の文様も、日本で生まれたのかって言うと、全部がそうじゃなかったり、シルクロードを渡って入ってきて、定着した文様もありますし、柄だけじゃなくて、いろんな文化がそうじゃないですか。入ってきた当初から「和」と認識されてはなかったと思うし。新しいものを入れていくことによって、文化も活性化していくと思うし、最初は違ったとしても、なじんでいって、自分たちの感性が入ってきて、オリジナルのものができていって・・・あまり決めつけないで、どんどん吸収してって、最後まで進んでいこうかな、と思います。
ちっちゃなことを、ちょっとずつ、つづけていく
高倉 12年後の丑年で表現社100周年・・・。
――わあーっ! すごい!
高倉 ふふふ。僕の定年前にそれがやってくるから、なかなか時代的に苦しい状況ではあるんですけど、おもしろいことやって、いい状況で節目を迎えたいな、って。
コジカプロダクツをはじめたのはいろんな理由があるんですけど、作家が生きてく土壌作りをしたい、っていうのが結構大きくて。僕がいまこの会社にいてできることは、商品に作家の名前を載せてそれを流通させて、買ってくれたお客さんがその名前をおぼえてくれたら、もしかしたら次は展覧会に行ってくれるかもしれない。展覧会ではもしかしたら作品を買ってくれるかもしれない。そうやって、メーカーと、お客さんと、作家とのサイクルみたいのものを作っていけたら・・・ちっちゃいことでもいいから、ちょっとずつやっていったら、何か見えてくるのかなと思っています。
――それは、私たちの出版活動にもそのまま言えることです。
高倉 基本は好きなことをできるかぎり・・・まあ、仕事なんでね、なかなか苦しいこともしょっちゅうやってきますけど(笑)。
――ははは。
高倉 楽しくやってきたいなっていうのはあります。作家さんもいろいろ考えてやってくれてると思うんですよ。それが形になって、作家さんも喜んでくれたらうれしいし、インスタとか見てたら、僕の知らないところで、お客さん同士が「コジカプロダクツってかわいいよね」みたいな。それは本当に涙が出そうなくらいうれしいですね。そうやって、できるだけ笑顔をひろめていけたら。
ご自身でも作家活動をする高倉さん。いまは相棒の方と交互に描きたしながら、作品を作っているそう。
みなさまからのアイデア募集!
一筆せんのデザインや売り方など、何かいいアイデアやアドバイスを思いついた方は、ぜひミシマ社仕掛け屋チームまでお聞かせください。こちらのメールアドレス( supporters@mishimasha.com)に件名「ミシマ社一筆せん」でお送りください。
編集部からのお知らせ
2021年度ミシマ社サポーターのご案内
募集期間:2020年12月1日〜2021年3月31日
サポーター期間:2021年4月1日~2022年3月31日
*募集期間以降も受け付けておりますが、次年度の更新時期はみなさま2022年の4月となります。途中入会のサポーターさまには、その年の特典をさかのぼって、すべてお贈りいたします。
2021年度のサポーターの種類と特典
下記の三種類からお選びください。サポーター特典は、毎月、1年間お届けいたします(中身は月によって変わります)。
◎ミシマ社サポーター【サポーター費:30,000円+税】
いただいたサポーター費のうち約25,000円分をミシマ社の出版活動に、残りをサポーター制度の運営に使用いたします。
【ミシマ社からの贈り物】
* ミシマ社サポーター新聞(1カ月のミシマ社の活動を、メンバーが手書きで紹介する新聞)
* 紙版ミシマガジン(非売品の雑誌。年2回発行・・・の予定です!)
*生活者のための総合雑誌『ちゃぶ台』(年2回発刊)と今年度の新刊1〜2冊(何が届くかはお楽しみに!)
* 特典本に関連するMSLive!(オンライン配信イベント)へのご招待
* ミシマ社オリジナルグッズ
・・・などを予定しております!(※特典の内容は変更になる場合もございます。ご了承くださいませ。)
◎ウルトラサポーター【サポーター費:100,000円+税】
いただいたサポーター費のうち約95,000円分をミシマ社の出版活動に、残りをサポーター制度の運営に使用いたします。
【ミシマ社からの贈り物】
上記のミシマ社サポーター特典に加え、
*ウルトラサポーターさん交流会
◎ウルトラサポーター書籍つき【サポーター費:150,000円+税】
上記のウルトラサポーター特典に加えて、その年に刊行するミシマ社の新刊(「ちいさいミシマ社」刊も含む)を全てプレゼントいたします。いただいたサポーター費のうち約100,000円分をミシマ社の出版活動に、残りをサポーター制度の運営に使用いたします。
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