本屋さんはじめました

第7回

Finefine(岡山・総社)

2021.10.14更新

 今年の夏、ある雑貨屋さんから「ぜひ、ミシマ社の本を取り扱いたい」と連絡がありました。店名は岡山・総社にあるFinefineさん。店主の松森さんからいただいたメールの行間から滲み出る「熱」がなんとなく気になり電話をしてみると、やはり、並々ならぬパッションの持ち主。

 そして、もっと話を聞きたい! 思ったタブチが、オンラインにて取材をさせていただいたのでした。お店をやられている人も、これからやりたい、という人も。金言のつまった松森さんの言葉にぜひふれてみてください!


(取材、構成:田渕洋二郎)


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必要に駆られて本を読み始めた

ーー お店はいつごろからやられているんですか?

松森 店舗がいまの場所になったのは2019年からなのですが、お店をやりはじめたのは15年くらい前になりますかね。奥さんと2人でCDやレコードを販売する音楽のお店をはじめたんですが、なかなか売上が出ず、「雑貨があったら買うのに」とおっしゃるお客さんもいらして。じゃあ、雑貨屋にしようかと。

ーー この秋からミシマ社の本も扱ってくださっていますが、どういった経緯で?

松森 もともと、コンビニにおいてあるような本や、話題になった本とか、そういうものしか読んでこなかったんです。でも、どうにもお店がたちゆかなくなったとき、店舗運営や、お店のつくりかたが書いてあるHow to 本をとにかくたくさん読んだ。そしてどの本にも共通していたメッセージが「読書をした方がいい」ということだったんです。

 それから実用的な本だけでなく、自分を信じて、気になった本を読むようになって、5年くらい経って、東京の江戸川区で書店をしつつ、とにかく一冊を熱く紹介してくださる「読書のすすめ」と出会った。そこで、ミシマ社が出している雑誌『ちゃぶ台』に衝撃を受けたんです。この本では都会であれ、地方であれ、疑問を持った人がすでに行動している。そして、自分たちも勇気づけられて行動するわけですが、良いも悪いも責任を持って生きていけるのは自分しかない、という感覚になったんですね。

「正解」が求められない読書会

ーー お店づくりで気をつけていることはありますか?

松森 平成は、お客さんが「これがほしい」というものを仕入れて売る、「マーケット・イン」的なやり方をしていたのですが、自分たちが半歩先回りして本当に売りたいものを売る「プロダクト・アウト」に変えました。

 平成が終わって、もう一度昭和に戻るというか、昭和と令和は相性がいいと思うんです。昭和と平成の親子だとなかなか価値観が相入れないところがあるけれど、おじいちゃんおばあちゃん世代と令和世代の孫だと案外スムーズにいく。平成時代に成功したやり方を捨てて、何が本当に自分たちの幸せなのかを考えないといけない時期なんだと思います。そうしないとテクノロジーにからめとられてしまう。

 その時に必要なのが「文化」かなと思ったんです。なんでも効率化して、大きなショッピングモールができて商店街がなくなった。でも「不合理」であったり、「道草」みたいなものの豊かさをもう一度見つめなおした方がいいのかも、と。

ーー まわりの方とともに本を読む「勉強会」もされていますよね。

松森 そうです。もともとはある程度の量の本を読むうちに覚えておくことが不可能になってしまって、どうしたら自分のものになるかなと思ったら「アウトプット」が必要だと。だから自分のために始めたんです。でも続けていくうちに周りの人もどんどん読書好きになっていって、かれこれ16年になります。

 勉強会の参加資格は「全員が別々の仕事についていること」にしました。というのも、みんなバラバラだったら、正解が求められないんですよ。だから大風呂敷を広げられる。

 そうすると、本当に同じ本を読んでいるのかな、というくらい1人1人が全く違った読み方をする。お酒飲みながら、読んだりしゃべったりしていくので、何気ない一言もボソッと言いやすいんです。こういう会で参加後「楽しかった」という人って、だいたいその場で一番喋ってた人なんです。だから、いかに誰もが気軽に遠慮せず話せる環境をつくるかが大事になってきます。

ーー 松森さんを見ていると、雑貨屋の店主という枠におさまらないな、という気がします。

松森 ありがとうございます。最初は、自分のために勉強会を始めたんですけど、仲間が増えていくにつれ、本を読んでいるときに「そういえばあの人、こんなことに困ってたな。この一文いいんじゃないかな」というふうに、参加者の顔が浮かぶようになる。その方が読書がずっと楽しくなりましたね。

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ミシマ社の本をおいて倒産するんだったら、それでええと思うんです

ーー 商品の仕入れの際に気をつけていることはありますか?

松森 一般的な雑貨屋さんは商品を代理店から入れてるんですけど、うちは基本的にひとつひとつの会社と直取引しているんです。だからある程度の金額をまとめて入れないといけないですし、返品もできませんから、もちろん在庫を抱えるリスクもある。

 それでも、売りたいと思った商品は、頭を下げて売らせてもらう。店づくりの最初のほうに意識したのは、いろんな本に書かれている「王道」を忠実に再現してみることなんです。まず自分を捨てて、全力でコピーする。そしてコピーしたんだけれど、ジワーーっと個性が滲み出てきてしまう状態が、その店にとっての一番売れる状態だと思うんです。結果的には8割がコピーでも、残り2割で個性が出るからそこで好きなことすればいい。

 最初はやりたくない、扱いたくないものでも、やっているうちにその次のステージが見えてきます。そして次のステージにいくと、もう売れる商品を持っているから、自分のやりたいことができるようになる。あと、お客さんがその店で買うかどうかって、玄関入って2秒くらいで判断してしまうんです。だから、その店の空気が流れているかどうかが大事ですね。

ーー 世の中の森羅万象のものをとりあつかえる「雑貨屋」ってすごいですよね。

松森 コロナ禍で小売が大変と言っても、それでも売れるものはありますからね。うちでも、マスクと衛生用品が伸びました。そして、家にこもるんだったら、本も1冊、紅茶もいかがですかと提案できるのは雑貨屋の強みかもしれないです。いろんなものが有機的につながっていく。

 でも森羅万象を扱えるからこそすべてジャンルの目利きになるのは不可能なわけです。だから、仕入れるかどうかの最後の砦は、「好きかどうか」になる。売れるかどうかわからないけれども、それでも仕入れるのは、作っている人が好きだから。ミシマ社の本をおいて倒産するんだったら、それでええと思うんです。大好きだから。好きが上回れば必ず時間軸に勝てる。そして次第にその「好き」は伝染していく。

 この前、あるお客さんに「総社にうちみたいな店があってよかった」と言われたことがあったんですが、店をやっていて一番嬉しかった言葉かもしれないですね。

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Finefine
住所:〒719-1126 岡山県総社総社1-1-40
営業日時:10:00〜19:00(火曜定休)
Instagram:@finefine_zakka

ミシマガ編集部
(みしまがへんしゅうぶ)

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