本屋さんはじめました

第5回

「本」のお店スタントン

2021.02.20更新

本日のミシマガは、大阪の針中野にある、「本」のお店スタントンの店主、田中利裕さんへのインタビューをお届けします。スタントンさんは、新刊と古書をどちらもあつかっていて、ミシマ社の書籍もたくさん置いてくださっている書店さんです。

スタントンさんがオープンされたのは2018年で、現在はもう「本屋さんはじめました」という時期ではないですが、街の人に愛されるとても素敵な書店さんで、ぜひ紹介したい! と思い、お店の営業担当であるヤマダがお話を伺いました。(ちなみに、これが人生初インタビューでした。)

そして、3月5日から3月28日まで、スタントンさんの展示スペースにて、「~0 歳から100 歳まで~みんなで楽しむミシマ社の絵本展」という原画展を開催します! ミシマ社がこれまで発刊した絵本全点の原画が集まる、とても豪華な展示です。

この記事をお読みになって、お店にご興味持たれた方は、ぜひ展示期間中に足を運んでみてください!

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スタントンさんの外観。駒川商店街から1本入ったところにあり、お店の前にはたくさんの古書が並んでいます。

いろんな本に囲まれた記憶が残る場

ーーまず、このお店を始められたきっかけを教えてください。

田中 もともとアセンス針中野店という、ここからすぐ近くにあった本屋に勤めていたのですが、2018年に閉店することになったんです。この近隣は、アセンスがなくなると本屋がなくなる、という状態でした。僕自身が仕事を失うということと、商店街が本屋を失うということを、どうすれば回避できるかなと考えたところ、僕が本屋を始める、という単純な発想にいたりました(笑)。

本屋って、本を売るっていう機能と、もうひとつ、場所としての機能があると思うんですよ。目的がなくてもぶらっと入れるじゃないですか。そういう場として機能していけたらな、と思っています。

0220-2.jpgスタントンの店主、田中利裕さん。いつもやわらかな笑顔でお客さんを迎えています。

ーー『スタントン紙片』に寄稿なさっていたみなさんも、街の中の場としての本屋、ということを書いていらっしゃったのが印象的でした。

※スタントンさんが発刊されたリトルプレス冊子。児童書作家の令丈ヒロ子さんや立岩陽一郎さんなど、地元で活躍されているさまざま方が寄稿なさっています。

田中 そうですね、みなさんそういったことを書いてくださいました。
僕自身振り返ってみても、子どもの頃よく行っていた本屋で、自分が見にいくのは手塚治虫の漫画だけなんですけど、棚には小難しい本が並んでいて、「こんな本があるんだな〜」と薄く記憶に残っていています。
ここにきた子どもたちにも、いろんな本に囲まれている記憶がぼんやり残ってくれたらいいいのかなと思いますね。

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ーー取り扱う書籍はどのように決めているのですか?

田中 「こだわりを持った本屋やな〜」って言われることもあるんですけど、そこまでこだわっているつもりはないんです。ただ、前の本屋だと、ベストセラーだから入れないといけない、といったことがありました。当然みんなが欲しがっている本を置くと売り上げに反映されるので、いい部分もあるんですけど、本の内容的に、ヘイト的なものだったり、どうしてもこれは取り扱いたくないな、というものも置かなくてはいけなくて。この店で同じことはやりたくないな、とは思っています。

コロナ禍では屋外でおはなし会を開催

ーー「おはなし会」という読み聞かせも定期的にやっていらっしゃるんですよね。

田中 コロナの前はお店の奥の3畳くらいのスペースにカーペットを轢いて、月に2回やっていたんですよ。

読み聞かせの内容としては、紙芝居と、絵本と、あと手遊びとかゲーム的なこととかも入れながら、お話ばっかりだと子どももしんどくなってくるんで。時間はだいたい30分強くらいですね。1時間くらいの枠をとっていて、その日の反応とか、用意している演目により前後します。

ーー(店の奥を指さして)あれって紙芝居の舞台ですよね。

0220-5.jpg田中 前のお店のときから来てもらっている紙芝居の専門の方がいらっしゃるんです。その方に、いまも毎月お願いしています。
あれが置いてあるとお客さんも「あ、紙芝居や!」と懐かしんでくださいますね。

ーーコロナになってからはどうされているんですか?

田中 店の前のスペースが自由に使えるので、パイプ椅子とか並べて、屋外で月1回くらい場を持てたらいいかな、という感じでやっています。
外でやっていると、商店街を道行く人が路地をふっと見たときに、「なになに?」って感じにはなりますよね。
最初はそんなに参加人数も多くなかった日でも、だんだん増えていって、最終的には結構な人数になっていたり。それは表でやるおもしろみかな、と思っています。

大人が子どもたちの本に囲まれる

ーースタントンさんは絵本の品ぞろえがとても充実しているな、という印象を受けました。

田中 おはなし会に来てくださっている人たちにそのまま絵本に目を向けてもらえたら、とは思っていますね。
あと、構造上、入ってすぐのところに児童書のコーナーがあるっていうのも影響しているのかなと思います。

大人が本屋に行くと、自分の目的のコーナーには行きますけど、児童書のコーナーにはなかなか足を運ばないですよね。
うちの場合は入ってすぐのところにあって、興味がなくても目につくことになるので、そのときに「あ、児童書って今こんなん出てんねや」と気づいてもらえたり。
大人が手にとってもおもしろい絵本はたくさんあるので、そこで新しく発見してもらう、ということは起こっているかな、と思っています。

さきほど子どもが大人の本に囲まれて、薄く印象に残ってくれたら、という話をしましたけど、逆に、いい大人も、子どもたちしか知らない本に囲まれているっていう状態ですね。子どもも大人も、お互いが分け隔てなく本に触れられるという感じになればおもしろいかな、と思っています。

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***

インタビュー中にも、予約した本をとりに来られた方、古書を売りに来られた方、「植物の本ってありますか?」と尋ねていた方など、たくさんの方が、それぞれの楽しみ方でスタントンさんを利用されていました。

インタビューを通じて、改めて、子どもからお年を召した方まで、分け隔てなくみなさんにひらかれ、愛されている本屋さんだ! と感じました。
そんなスタントンさんで、「対象年齢0歳~100歳超」とうたっているミシマ社の絵本の原画展を開催できること、とても嬉しく思っています。遠方にお住いの方は足を運びづらい状況下ではありますが、無理のない範囲で、「本」のお店スタントンさんに、そして、「~0 歳から100 歳まで~みんなで楽しむミシマ社の絵本展」にお越しくださいませ!

「本」のお店スタントン
〒546-0043
大阪府大阪市東住吉区駒川5丁目14−13 1F
(近鉄針中野駅から徒歩一分)
営業時間:11:00~19:00/火曜休
Twitter:@BooksStanton

「~0 歳から100 歳まで~みんなで楽しむミシマ社の絵本展」
会期:2021年 3月5日(金)~3月28日(日)
会場:「本」のお店スタントン
展示する原画:
益田ミリ(作)/ 平澤一平(絵)
『はやくはやくっていわないで』『だいじなだいじなぼくのはこ』『ネコリンピック』『わたしのじてんしゃ』
後藤美月(著)『おなみだぽいぽい』
オクノ修(詩)/nakaban(絵)『ランベルマイユコーヒー店』
tupera tupera(さく) 『パパパネル』
主催:ミシマ社

ミシマガ編集部
(みしまがへんしゅうぶ)

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