本屋さんはじめました

第15回

自分の物語を生きるには「言葉」が必要だ ――BOOKSライデン(長崎)

2022.11.25更新

 皆様、はじめまして。BOOKSライデンの店主・前田と申します。当店は2021年11月から、長崎市の観光名所のひとつであり、歴史の教科書で一度は目にするであろう「出島」の近くで営業している本屋です。40平米ほどあるうち約半分は書籍の販売コーナー、もう半分はカフェとなっており、新刊と古本を合わせて約3000冊の本を並べています。

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新刊は「一冊!取引所」で仕入れています。出版社ごとの精算は大変なのですが、クレジットカード決済の「一冊!決済」は手数料も掛からず、振込の手間も省けて非常に助かっています。古本は持ち込みのみの対応で買い取りをしています。

 実は私は長崎の人ではありません。出身は大阪府で、このお店をオープンするために長崎にやってきました。もともと本を売りたいと思っていたのですが、旅をする中でどうせなら気に入った街でやりたいなと思っていたところ、たまたま長崎を訪れた際にゲストハウスのオーナーと意気投合し、この地で開店することになりました。ですので、長崎に住み始めてそれほど時間が経っていないのですが、日本の西の果て故のユニークな文化と人々の優しさに触れながらなんとか一周年を迎えた今、この街にやってきてよかったなぁとしみじみ思っているところです。場当たり的な性格が運良く吉と出ました。店名のライデンはオランダの街の名前です。私も実際に訪れたことのある街で、長崎とも歴史的にも現在も深い縁があります。旅が好きなので屋号は地名にしたく、勝手に名前を拝借しました。いつ怒られるかとビクビクしています。

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 なぜ本屋をやっているのか。それは大学時代に本の魅力を知ったからです。それまではそれほど本を読んでこなかったのですが、時間があり何か生産的なことがしたいなと思っていた時に本を手にするようになりました。振り返るとその時の私はとにかく就職したくなかった。就職以外の何か別のルートはないものなのか・・・と、そこを軸に本を読んでいたように思います。前提として僕は集団行動が苦手で、世間一般のモデルに自分を合わせることがとにかく下手なのですが(かなりのへそ曲がりなのです)、しかし主流から外れる勇気があるのかと言えば全くなかったのです。しかし主に人文系の書籍をよく読んでいたのですが、読んでいくと次第にそこまで無理して主流に合わせる必要もないというか、お前はお前の好きにしろと言われているというか、そんなことを本から教えられている気がしました。確かに主流から外れるには勇気が必要、しかしその勇気は時間や地理を飛び越えた先人たちの「言葉」によって与えられたように感じます。

 他人の物語ではなく自分の物語を生きるには「言葉」が必要だ。
 そう気づいてしまったからには誰かに教えてあげたい!

 求められているかはわかりませんが、そんなことを考え続けた結果、今に至ります。

 ただ、そうわかったように偉そうなことを言いつつも、実際はそんなことはなく、世界は自分の知らないことだらけだなぁ・・・と日々痛感しています。しかし、だからこそワクワクする。僕も含め「もっと知りたい」という欲求をみんなで共有できる、今後はそんな場にしていきたいと思います。本を売ることもそうですが、当店ではカウンター5席程度のカフェ営業やイベント(読書会や哲学カフェ)も開催しています。

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 ここで大切にしていることは3つ。「答えを急がない」、「すぐには役に立たない」、そして「暑苦しく」です。わからないことや知らないことを通して答えを急がずにみんなでじっくり考える。その対象が明日の仕事や生活に役立つかは気にしない。キレイに収まろうとせず、怖くても勇気を出して言葉にする、変わる可能性があるものとしてそれを確かに聞く、そして効率は度外視で言葉を重ねまくる・・・。

 そんな本と本を取り巻く言葉を大切にする場所にしていきたい。なぜならば言葉と適切に向き合うことこそが、その人の主体的な物語を作ることにつながると考えているからです。ここに来れば何か気づきがある、ヒントが見つかる。そう思えるような空間を、長崎の地でお客様と一緒に作りたい。是非、長崎へお越しの際は当店へ、ひとつ、言葉を探しにお越しください。

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BOOKSライデン
住所:長崎県長崎市出島町2-18-201
アクセス:長崎電気軌道「出島」電停より徒歩1分
TEL:080-6889-4949
営業日:不定休
HP:books-leiden.tumblr.com
SNS:TwitterInstagram

ミシマガ編集部
(みしまがへんしゅうぶ)

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