本屋さんはじめました

第13回

ハタハタショボウ(吉祥寺/西荻窪/糸島)

2022.08.16更新

店舗はないけど3店舗ある"本屋"

こんにちは。「ハタハタショボウ」の廣畑と申します。書籍編集の仕事をしながら、この屋号で2019年から「本屋活動」を行っています。

「働く人の傍(ハタ)に、価値ある1冊を」をモットーに、広い意味で仕事に役立つ本を届けています。ミシマ社さんの本では、ナカムラケンタさんの『生きるように働く』もよく薦めている1冊(そしてすぐに売れていきます)。

店舗はありませんが、3店舗(東京の吉祥寺、西荻窪、そして福岡県の糸島)で展開中です。

「・・・店舗がないのに3店舗? そもそも本屋活動って?」

よくこんなふうに聞かれますが、2022年の時点ではすでに市民権を得つつあるのでお察しの方もいるでしょう。当店は、棚を間借りして運営している、いわゆる「間借り本屋」になります。

東京・吉祥寺の「ブックマンション」、西荻窪の「BREWBOOKS」、福岡・糸島の「糸島の顔がみえる本屋さん」。こちらの3店舗で棚の一区画をお借りして、本を販売したり、お店番をしたり、イベントをしたりしています。こうした活動を、ざっくり「本屋活動」と呼んでいます。

BM01 (1).jpgブックマンション店内の様子。左右に約70~80名の棚主が選んだ本が並ぶ

編集者が「本屋活動」を始めた理由

編集者でありながら、なぜ「本屋活動」に取り組むようになったのか。少しだけ説明させてください。

きっかけのひとつは、2018年5月、アタシ社の三根さんご夫妻が三崎で始めた「本と屯」を訪れたことでした。その頃はちょうど、次々と本屋さんが減っていくなかで何か自分にできることはないのか、とモヤモヤしていた時期。子どもが「本のある空間」で自由に過ごす様子を「本と屯」で見たとき、雷に打たれたような衝撃を受けました。「こんな場所こそ、今の時代に求められてるはずだ」と。まさに『ちゃぶ台』の最新号(2022年 春/夏号)のテーマである「共有地」としての本屋の可能性に目を開かされた思いでした。

そしてほぼ同じ時期に、2019年にブックマンションを開く中西功さんとも出会います。中西さんが言う「誰でも本屋ができる仕組みづくり」の発想に共感し、棚を借りて現場に立ってみようと決意したのでした。

HT01.jpg2018年に訪れた「本と屯」。のれんは吉田戦車氏の手になるもの

間借り本屋の"歩き方"

この活動を通して得たのは、何よりも「世界にはこれだけ"本"が好きで、"本を届けたい"と思っている人がいる」ということを知り、実際につながれたことです。そしてそれは、ブックマンションの中西さんが言う「もっともハードルの低い始め方」のとおり、さまざまな方が自由に参画できることから生まれていると思います。

絵本棚、新刊のマンガだけを置く棚、キツネの本の棚、森見登美彦さん専門棚、自著や自作のZINEを置く棚、詩集・句集メインの棚、小学生が始めた棚、家族で切り盛りしている棚、読書会で集った人同士で運営している棚・・・。年齢も職業もバラバラな人たちが織りなす棚からは、それぞれ豊かなストーリーが浮かび上がります。

現在、間借り本屋は全国のあちこちで増殖中です。もし訪れた際は、ぜひ数十センチ四方の棚で、それぞれの棚主が描こうとしている世界観を楽しんでみてください。そして、あの頃の私と同じように悩んでいる方がいれば、ぜひ、間借りから始めることも検討してみてください。私でよければ、いつでもご案内します(糸島の顔がみえる本屋さんは、私のプレゼンに興味を持ってくださった方が始めたお店でもあります)。

BM02.jpg2022年8月のハタハタショボウ@ブックマンション。現在の一押しは『B Corp ハンドブック』(バリューブックス・パブリッシング)

当事者として、本屋にかかわるということ

実は、活動する中で、ミシマ社三島さんの2020年元旦の投稿には大変勇気づけられました。

現在、私の「本屋活動」は、本好きとつながるだけでなく、暮らしている地域に子どもがだらだらできる本のある場をつくる、書店が持続可能になるヒントを求めてデジタル地域通貨を学ぶ、といった広がりを持っています。これらは、三島さんから(勝手に)受け取った〈編集者だからこそ、当事者としての意識を持ち、「足元」でできることをやる〉という思いを糧に邁進しています。この場を借りて、御礼申し上げます。今後も、当事者として「本屋」に関わり、本と、そこに込められた想いを届けていきます。

ハタハタショボウ
Twitter  @hata2books
Instagram hata2books

ブックマンション
〒180-0004
東京都武蔵野市吉祥寺本町2丁目13−1
営業時間 :13:00〜17:00/月,火,木,定休 
Twitter :@BookMansion

BREWBOOKS
〒167-0053
東京都杉並区西荻南3丁目4−5
営業時間. :12:00~19:00/月曜定休 
HP : BREWBOOKS 麦酒と書斎のある本屋

糸島の顔がみえる本屋さん
819-1116
福岡県糸島市前原中央3丁目2−14
営業時間 11:00~17:00/不定休
Instagram糸島の顔がみえる本屋さん

ミシマガ編集部
(みしまがへんしゅうぶ)

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