ミシマガ野球部

第4回

バウアーから目を背け、ガゼルマンに思いをはせる〈松樟太郎〉

2023.05.20更新

バウアーは刺激が強すぎる

 5月前半まで首位だったと思ったら、いきなり5連敗して首位から陥落したベイスターズ。
 まぁ、弱いチームを応援していると考え方が悲観的になるので、首位になった時も「いずれは落ちるだろうな」と思っていたので、ダメージはそこまで大きくないです。

 伝統的にベイスターズファンはそうやって心を守ってきました。
チームからホームラン王が生まれると「いずれ○田みたいに他球団にFAで奪われるんだろうな」と考え、首位打者が生まれると「いずれ○川みたいに他球団にFA移籍するんだろうな」と考え、有力な外国人がやってくると「ロ○ックみたいにすぐに打てなくなるのだろうな」と考える。
 期待値がもともと低いので、活躍しなくてもあまり残念がらない半面、心から期待もできない。どっちが幸せなのか。そもそも、幸せとは何か。

 今のベイスターズは「超大物」トレバー・バウアーの話題で持ちきりです。しかも、本人がYouTubeでリアルな話を発信したりしているので、いやがおうにも期待が高まります。
 それでも、何度も期待を裏切られてきたベイスターズファンとしては、「期待しちゃいけない」と言い聞かせつつ初戦を迎えたわけですが、見事なピッチングで初登板初勝利。そして、「期待していいのかな」と思いつつ迎えた第二戦ではボコボコに打ち込まれる。
 期待していいのか悪いのか、心がすでに追いつかなくなっています。
 そこで、バウアーからは全力で目を背けて、もう一人の外国人先発ピッチャー、ロバート・ガゼルマンについて、思いをはせたいと思います。

ハマスタに響き渡るキン肉マンソング

 昨年夏ごろにベイスターズに入団したガゼルマンは、初登板こそ打ち込まれたものの、終わってみれば3勝0敗、防御率2.73という地味にいい成績を残して残留。正直、球が速くもなく、とんでもない変化球があるわけでもないのになぜかぬるっと相手打線を抑えるという、不思議なピッチャーです。かつてのモスコーソとか思い出します。

 ただ、彼が最初に話題になったのは、ピッチングとは別のことでした。
 マンガ『キン肉マン2世』にそのまんま「ガゼルマン」という、ガゼルをモチーフとしたキャラクターが出てくるのですが、それを誰かに入れ知恵されたのか、登場曲にキン肉マンの主題歌「キン肉マンGo Fight!」を選んだのです。
 実はガゼルマンの初登板の際には私も横浜スタジアムにいたのですが、突然、球場に流れ出すキン肉マンのテーマは明らかに異様でした。リングじゃなくて球場にイナズマが走っていました。
 ちなみにマンガのガゼルマンはキザで、どちらかというとドジキャラなところがあるので、思い切り打ち込まれるガゼルマンを見て「これじゃガチでガゼルマンだろ」と思ったものです。

 そんなガゼルマンの背中を見て「あれ?」と思いました。
 スペルが「Gsellman」なのです。
 これでは読み方は「ガゼルマン」ではなく、「グゼルマン」ではないか。

 日本語には子音が連続することがほとんどないので、発音しやすくするために子音と子音の間に母音を入れるということがしばしば行われます。
 オランダ語の「Glas」を「ガラス」と読んだのとかが好例です。
 そうした読み方がいまだになされているというのは、なかなか興味深いところです。

「gs」から始まる英単語などない?

 ただ、「Gsell」という単語は、なんというか明らかに異質です。
 彼の出身地はアメリカ・カリフォルニアで、お父さんも野球選手だったそうですが、そのお父さんもアメリカ出身とあります。
 ただ、「gs」で始まる単語は、英語ではほとんど見かけません。
 念のため英和辞典で調べてみたのですが、略称や科学用語、外国の地名以外は一つもありませんでした。
 そう考えると、英語圏以外からの移民がルーツである可能性が高いでしょう。

 では、ガゼルマンはどこから来たのか。
 キン肉マンのガゼルマンは「タンザニア出身」です。
 ただ、キン肉マンの超人の出身地は、タイルマンの出身地がなぜかフランスだったり、ベンキマンの出身地がインカ帝国だったりと適当なので、信じないほうがいいでしょう。
 そもそも「ガゼル男」なら「Gazelleman」のはずなので、明らかに違います。
 アフリカ説は消えました。

そして結局、バウアーへ

 海外の人名のルーツを調べるサイトによると、ガゼルマンとは「ゲルマン系」の名前ということでした。
 さらに調べていくと、オーストリアに「アンドレアス・グゼルマン」というワイナリーがあることがわかりました。「Andreas Gsellmann」とnが一個多いですが、ルーツは一緒だと考えていいでしょう。
 小規模なワイナリーのようですが、バイオダイナミックという手法にこだわったオーガニックなワインを提供しているそうです。試飲会もやっているようで行ってみたいところですが、なにぶんオーストリア、しかもゴルスという小さな街のようです。オーストリアくんだりまで行ったのに主人がご留守だったりしたら目も当てられません。

 今度はフェイスブックで「Gsellman」「Gsellmann」という人を検索してみました。
 やはり多いのはアメリカでしたが、次に多いのはオーストリアでした。あとは、ドイツとスロベニアにちらほら。そう考えるとやはりこの名前のルーツはゲルマン系、それもオーストリアあたりにあったと思われます。

 そういえば今年新加入したもう一人の外国人ピッチャー、J.B.ウェンデルケンの名前もおそらくドイツ系です。その外見から「ハマのブルドッグ」と呼ばれ、登場曲はハウンドドッグの「R★O★C★K★S」を使っています。外国人選手にダジャレのような登場曲を使わせるのは、このチームの伝統なのでしょうか。
 ちなみにウェンデルケンはジョージア州のサバンナという街の出身だそうです。なんかむしろ彼のほうがガゼルマンなんじゃないかという気がします。

 さらにいえば「バウアー」という名前も、ドイツ系に多い苗字です。フィギュアスケートの有名な技を生み出した「イナ・バウアー」は旧西ドイツ出身ですし、「皇帝」ベッケンバウアーも名前にバウアーが入っています。ドイツ語で「農夫」という意味だそうです。

 そんなこんなで、結局、目を背けたはずのバウアーに話が戻ってきてしまいました。
なぜかドイツ系の名前を持つ外国人投手がやたらと揃った今年のベイスターズ。今後はバウアーにもガゼルマンにもウェンデルケンにも、目をそらさずに注目していきたいと思います。

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(みしまがやきゅうぶ)

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