第20回
出版社にサポーター制度があると、ものづくりに何が起きるのか?(後編)
2026.04.14更新
4月になり、春らしい暖かい日が増えましたね。新年度がスタートした今、ミシマ社では2026年度サポーターを募集中です!
「ミシマ社サポーター制度」は、2013年4月に始まりました。「ちいさな総合出版社」として一冊入魂の出版活動をつづけていくために、そして、次の世代へ紙の本をつないでいくために、私たちの活動全般を応援してくださる方々とつくってきた場です。
2026年3月13日、このサポーター制度について、ミシマ社メンバーが生配信で「説明会」をするという、初の試みを行いました。
出版社にサポーター制度があると、ものづくりにどんなおもしろいことが起きるのか。約13年間サポーターさんと活動してきた私たちも、はじめて言葉にし、発見することのとても多い時間となりました。その模様を2日間にわたってお届けします。本日は後編です!
<トピック>
・営業の目が増えたような心強さ
・自社だけでなく、出版のこれからに結びつく活動
・サポーターさんの声が帯文になる
・サポーター制度から本が生まれた本、韓国に渡る
・おもしろい本を作りつづけるために、変えるべきこと
ミシマ社サポーター制度について語るメンバーたち
営業の目が増えたような心強さ
スミ 「ミシマ社のサポーター制度ってなんだ?」ということについて、ここまでミシマさんを中心にお話ししてきましたが、ここで少しメンバーの声を聞いてみたいと思います。まず営業チームのニシカワくん、どうですか?
ニシカワ サポーターさんからはおはがきやメールで、「このお店でミシマ社の新刊が盛り上がってましたよ」「このお店のミシマ社棚がとても見やすいです」というメッセージをいただいています。とくに、ふだんはなかなか回れない遠方のエリアについて、皆さんから情報共有いただけるというのは本当にありがたいことで、営業の目が増えたような心強さを感じています。
ミシマ社は直取引という流通ルートで書店さんに本を卸していて、取引のあるお店を記載した「直取引マップ」というものを作っているのですが、これがサポーターさんから好評で、「ミシマ社すごいですね」と声をかけていただいたことが本当に嬉しかったです。もっと取引先を増やしたい、とパワーをいただきました。
自社だけでなく、出版のこれからに結びつく活動
ミシマ プロジェクトチームからは、ノザキさんいかがでしょうか。
ノザキ そうですね、プロジェクトチームが関わっている仕事は、ミシマ社がやってきたことが多方面で結実しているなあと聞きながら感じていました。
たとえば、3月19日に『京大マガジン』が発売になりました。京都大学の総合研究推進本部が発行元となり創刊された雑誌なのですが、今回、ミシマ社は発売元として関わっています。やっぱり、本はつくったら終わりではなくて、どうやって届けていくのかが大事だし難しくて、そこをなんとかいい形にもっていけたらということで声をかけていただきました。
大学内で発行された雑誌を、商業出版で届けていくのは、あまり前例のないことだったのですが、ミシマ社が自分たちの流通の軸にしている「直取引」という方法は、1店舗1店舗、本屋さんと直接やりとりをして、本を仕入れていただくという方法です。おもしろさが伝われば、仕入れていただけるルートがある。この直取引で20年間つづけてきた結果、『京大マガジン』のような新しい取り組みにも、たくさんの本屋さんが反応してくださり、応援してくださり、あっというまに準備していた初版分が売り切れました。
このことを経験して私が思ったのは、これって、まだはっきりとは言葉にできないけれど、本づくりや出版活動になにか新しいものが生まれている感じがするなー、ということでした。こういうことをサポーターさんが近くで見ていてくださっているのは、単にミシマ社の活動を応援してもらっているというよりも、私たちと一緒にこれからの出版について考えたり、体感してもらったりしているような、勝手ながらですが、サポーターさんのことはそんな存在に感じています。
ミシマ いや本当に、このプロジェクトチーム、思ってもない展開で躍進中です。『京大マガジン』は本屋さんに「買切」で卸しているのですが、すさまじい注文が集まっていて、ちょっとした事件です。
『京大マガジン 0号「失敗」』
サポーターさんの声が帯文になる
スミ 編集チームでは、特に2025年度はサポーターさんに本作りにも参加いただきました。本ができる前のゲラをお送りして読んでいただき、ご感想をいただくという試みを初めてやりました。一冊目は、2025年6月刊の三砂ちづる先生の『心の鎧の下ろし方』で、参加されたお一人お一人が長いご感想を送ってくださって、すごく励みになりました。著者の先生にも読んでいただきましたし、ミシマ社のホームページにも掲載しています。
2026年4月の新刊、村瀨孝生さんの『朽ちて死ぬ自由』も、サポーターさんにゲラを読んでいただき、そのご感想は本の帯に載せることになりました!
左『朽ちて死ぬ自由』/右『心の鎧の下ろし方』
ミシマ サポーターさんのご感想がすばらしくて、この声を帯に載せたらいいのではないかと、つい数日前に担当編集のホシノさんと話したところです。(本イベント開催当時は『朽ちて死ぬ自由』の制作中でした。その後、実際にこのような帯になりました!↓)

サポーター制度から本が生まれた本、韓国に渡る
スミ そんなふうに本づくりに積極的に参加いただく試みがある一方で、とにかく、ただただサポーターさんがいてくださるだけで力になっているということをお伝えしたいです。ふだん私たちと直接やりとりすることはほとんどなく、見守ってくださっている方もたくさんいらっしゃいます。
ミシマ そうですね。ぜんぜん交流しなくても大丈夫です。たまに「サポーターをしたいのですが、交流とかは苦手で・・・」と言っていただくことがあるのですが、それでまったく問題ないですし、僕たちには本当に大きな励みになっています。
ノザキ クラウドファンディングのように、サポートに対して返礼があるとか、定期的に交流するとか、そういうわかりやすいやりとりではないところが、ミシマ社サポーターという場のすごさなのではないかと思います。
2023年にちいさいミシマ社から『ここだけのごあいさつ』という本を刊行しました。ミシマさんがサポーター新聞に毎月書いてきた「ごあいさつ」を一冊にまとめたものです。もともとサポートさんに向けてお手紙のように書いてきた文章で、本にするつもりで書いたわけではまったくない。でも、あるときにまとめて読んでみたらすごくいい文章だなと思って、一冊の書籍になりました。
なぜいい文章なのかというと、それは、サポーターさんが毎月新聞を受け取ってくださっていて、私たちにとっての宛先があるからなのだと思いました。一人一人が何かを積極的にしてくださるかどうかではなく、ただいてくださることで、いい文章やいい本が生まれるということを本当に伝えたいです。これはなかなかないことだと思っています。
ミシマ サポーターさんのみに向けて書いていたものが本になり、しかも、韓国語版も出版されたんです。2024年の夏に出版記念イベントのためソウルに伺ったときは、会場はお客さんで満員で、購読者数最大の新聞「朝鮮日報」にも取材してもらいました。
2025年には、京都オフィスに「ハンギョレ新聞」の記者がいらっしゃり、「世界の出版社特集」というテーマで取材を受けたのですが、光栄なことに、なぜか日本代表の1社としてミシマ社を選んでいただきました。それも『ここだけのごあいさつ』から生まれたご縁です。
『ここだけのごあいさつ』日本語版と韓国語版
おもしろい本を作りつづけるために、変えるべきこと
ノザキ 最後に、これからのミシマ社について、ミシマさん、お願いします!
ミシマ これから話すと1時間ぐらいかかってしまいそうですが、思いは一つです。おもしろいを形にしていく。一冊入魂して紙の本をつくり、そして届けていく。それをやり続ける。
今年の10月で、創業から丸20年になります。10月13日に会社の登記をするときに掲げた言葉は、「おもしろいを通して世界に貢献する」でした。だから、これからやっていきたいこともこれに尽きるんです。まだまだおもしろいものはいっぱいあると思っていますし、ミシマ社からそういうものをどんどん形にしていけると思っているので、そのための共有地づくりをサポーターのみなさんとご一緒できるとうれしいです。
そしてこの共有地づくりは、ミシマ社だけの話じゃないんです。僕らがどれだけ本をつくっても、本屋さんが元気じゃなかったら届かないですし、読者の方との出会いもありません。業界は30年来まったく変わってなくて、かつてうまくいったやり方のまま、どんどんしんどくなっていっている状況です。僕の思いは、ただ「おもしろいを続けていきたい」に尽きるのですが、一方でそれを実現しようと思ったら、本屋さん、出版社、印刷所や製紙会社含め、紙の産業に関わるみなさんの環境が、次世代のものに変わっていくしかないと思います。
そのために、ちょっと大胆なことを言います。
それは、再販制度がなくなる以外にない、と思っています。
さきほど『京大マガジン』が、「買切」でものすごい部数の注文をいただいたことをお話しましたけれども、これが事件だ、と言っているのは、日本に「再版制度」があることと関係しています。本の価格は出版社側が決定し、全国一律で販売され、売れ残った本は返品できる「委託制度」がある。返品を前提にせず、普段から買切で仕入れてくださっている本屋さんも多数ありますが、ミシマ社で取り組んできたことを振り返っても、買切条件より、委託条件のほうが好まれている現状です。
僕は、本屋さんの現場の大変さが生まれている一つに、再販制度があると思うんです。再販制度によって、本屋さんが何を奪われているかと言ったら、本来すべての小売業にある、価格決定権を奪われている。本の定価が決まっていて、本を売って得られる利益はせいぜい1割〜2割です。本屋さんに利益が行かない構造でずっと来ている。それが、価格決定を本屋さんが自由にできたら、世界が変わっていくはずです。
そもそも仮に、みなさんの住んでいる街の本屋さんが、大都市にある大型書店よりも、500円高く本を売っていたとしても、大型書店に行くまでの運賃や移動費を考えればそれは全然高くないですよね。現実的に考えていくと、自分たちの街で変えるほうがよくて、自分たちの商売として、イニシアチブをとって商品を売るという本屋さんが本来持っているはずのしかるべき権利を、ちゃんとある状態にすることが重要だと思います。
そして僕ら出版社は、いい本を作る。返品されないようないい本をつくる。出版社はそれに尽きます。ただ、これはかなり長期戦なので、次の世代の在り方を探っていくために、長期戦を楽しくやっていきたいと思っています。だからこそサポーターのみなさんと、共に道を歩みながら、共有地をつくっていければなと思っております。
(終)
編集部からのお知らせ
ミシマ社サポーターを募集しています
ミシマ社では、2026年度の出版活動を応援してくださる「ミシマ社サポーター」を募集しています。皆さまからいただいたご支援は、本をつくり、読者に届ける活動を通して循環していきます。

サポーターさんには、一年間ミシマ社の活動をサポートいただきます。年度ごとの更新で、サポート期間中はミシマ社から毎月ささやかな贈り物(下記参照)をお届けします。期間途中でお申し込みいただいた方には、それ以前のサポーター特典はさかのぼって全てお贈りします。
【サポート期間】2026年4月1日~2027年3月31日
【サポーターの種類と特典】下記の三種類からお選びください。特典は、2026年4月より毎月に分けて、一年間お届けいたします。(特典の内容は変更になる場合もございます)。

2025年度は、サポーターさんとミシマ社メンバーが直接交流する「サポーターDAY」を開催し、特別な時間となりました。当日の模様を、新人のニシカワがミシマガでレポートしております!
詳細・お申込みについては、下記をご覧くださいませ。
2026年度はミシマ社創業20周年の年でもあります。サポーター制度を通して、多くの読者の方々とお会いできることを心より楽しみにしております。




