第20回
出版社にサポーター制度があると、ものづくりに何が起きるのか?(前編)
2026.04.13更新
4月になり、春らしい暖かい日が増えましたね。新年度がスタートした今、ミシマ社では2026年度サポーターを募集中です!
「ミシマ社サポーター制度」は、2013年4月に始まりました。「ちいさな総合出版社」として一冊入魂の出版活動をつづけていくために、そして、次の世代へ紙の本をつないでいくために、私たちの活動全般を応援してくださる方々とつくってきた場です。
2026年3月13日、このサポーター制度について、ミシマ社メンバーが生配信で「説明会」をするという、初の試みを行いました。
出版社に「サポーター制度」があることで、ものづくりにどんなおもしろいことが起きるのか。約13年間サポーターさんと活動してきた私たちも、はじめて言葉にし、発見することのとても多い時間となりました。その模様を2日間にわたってお届けします。
<トピック>
・サポーター制度誕生の瞬間、ミシマ社で何が起きていた?
・地方で出版活動をするための秘策
・会社のなかに余白を生む共有地づくり
・サポーターさんと「紙の可能性」を探る
・電子書籍によって紙の本がなくなると言われていた時期
・スポンサーがないウェブメディアをつくる
ミシマ社サポーター制度について語るメンバーたち
サポーター制度誕生の瞬間、ミシマ社で何が起きていた?
スミ みなさんこんばんは。今日は「ミシマ社のサポーター制度ってなんだ?」ということについて、京都オフィスのメンバーであらためてじっくりお話ししていきたいと思います。よろしくお願いします!
早速ですが、ミシマ社のサポーター制度は2013年にはじまりました。私が2021年にミシマ社に入社したときには、サポーター制度はすでにあって、常にサポーターさんと活動してきた実感があります。でもよくよく考えてみると、私自身も「どうしてサポーター制度が生まれたのか?」ということを知らないなと思ったんです。
サポーター制度が生まれた2013年頃、ミシマさんの中で、どんなことが起きていたのでしょうか?
ミシマ これは難しい話ですね。13年前・・・。ノザキさん、わかりますか?
ノザキ いやわからないです。私もまだ入社前ですね。
ミシマ そう? じゃあ今、理解している範囲で言ってください。どんなイメージではじまったって思ってます?
ノザキ うーん。ざっくりでいいですか・・・?
・・・ミシマさんがこの年に、誰かと一緒に本づくりがしたいって思った。
ミシマ そうです! もうその通り!!
地方で出版活動をするための秘策
ミシマ 2013年は、ミシマ社の京都オフィスが本格的に動き出した年でもあり、京都でもスタッフの採用をしていこうと思いはじめた時期です。
2011年に東日本大震災があり、京都の城陽市に「城陽オフィス」を開設しました。翌年に僕自身も京都に引っ越してきて、自由が丘と京都の2拠点での活動がはじまったのですが、実際のところ出版社の体をなしているのは自由が丘のオフィスで、京都は「一人出版社」状態だったんです。
京都に拠点を移した背景については、著書『失われた感覚を求めて』(朝日新聞出版)に詳しく書いてあるので、興味がある方はそちらを読んでいただきたいのですが、当時はまだZoomもなく、Skypeで自由が丘と京都をつないで、自由が丘にいるメンバーとやりとりしつつ、編集のディレクションをしたり、ということをしていました。
東京以外の場所でも出版活動はできる!ということを掲げて、僕自身も拠点を移して、今後は採用もしていこうと考えていたものの、実際は京都での出版活動が活発なわけでもなく、自由が丘で残した企画を京都で動かしているだけで、オフィスが稼働しているとも言えない状況でした。
なんとか京都のオフィスでも、出版社として、編集の力をつけていくようなことをやりたいと思ったのですが、さすがにちょっと単独では難しい・・・、どうしたらええねん、と思っていた矢先、「お! そうだ、サポーター制度だ!」と。思いつきが私のもとにやってきまして。そうか、サポーターさんを募って出版社を支えてもらったら、地方で出版活動ができるんじゃないか。そんなふうに思ったんです。
会社のなかに余白を生む共有地づくり
ミシマ ミシマ社はこれまで、平川克美さんに『共有地をつくる』という本を書いてもらったり、雑誌『ちゃぶ台』で「共有地」の特集をやったり(『ちゃぶ台9』特集:書店、再び共有地)、最近は朝日新聞社のウェブサイト「Re:Ron(リロン)」で「共有地よ!」という連載をさせてもらっていますけれども、今振り返るとサポーター制度も「共有地づくり」だったように思います。つまり、余白や遊びの部分をつくることで、別の動きが生まれる。
当時、本の企画から編集までを僕がほとんどやっていたので、東京でそのまま出版活動をつづけていたとしたら、著者やデザイナーの方とのやりとり、印刷所や校正者の方とのやりとりといった、仕組みとまではいかないかもしれないのですが、ミシマ社の本づくりの流れや型があるところまではできていて、出版業として5〜6人のメンバーがやっていけるところまできていたかもしれません。
でもそこで、会社の主力が中心にいない、という状況が起きてしまったら、当然生産性も下がりますし、会社がもつのかな、という状況が生まれる。
その状況で起死回生の策として思いついたのがサポーター制度だった、ということなのですが、サポーターさんに支えてもらい、自分たちの出版活動に経済的にも時間的にも余裕を持たせていただいて、結果ふりかえってみると、それをきっかけにスタッフが育っていったり、新入社員を採用できたり、新しい出版の取り組みに挑戦したりすることができたと思っています。
サポーターさんと「紙の可能性」を探る
ミシマ サポーター制度を思いついたとき、大きな理由として「紙の出版業の可能性を開く活動をします」と掲げました。出版業がじりじりと厳しい状況に陥っていることは今も当時も変わらず、その中で紙の可能性を探る活動をサポーター制度とセットでやりたいと思ったのです。そこで、「そうだ! 紙と印刷もサポートしてもらおう」と思いついてしまいました。
これまで「紙版みんなのミシマガジン」や「サポーター新聞」といった紙媒体を作って、サポーターさんに定期的にお送りしてきたのですが、これらはすべて、紙を王子製紙さんと王子エフテックスさんから、印刷をあさひ高速印刷さんからサポートいただいています。
最初はそれぞれの会社に伺って、「すみません、紙をタダでいただけないでしょうか」「印刷をタダでやっていただけませんか」という無謀なお願いをしました。本を読むときに、内容だけではなく、紙や印刷そのものにももっと興味を持っていただきたい、僕たち出版社が知っているおもしろさを読者の方にも伝えていきたいとお話ししたら、王子製紙さん・王子エフテックスさんも、あさひ高速印刷さんも、快諾してくださいました。
お願いをしに行ったとき、あさひ高速印刷の岡社長が「正直、はじめは断ろうと思っていたのですが、お話をするうちに面白くなってきたからやります」と言ってくださったことをよく覚えています。あさひ高速さんはすごい印刷技術をたくさん持っていらっしゃいますが、ふつうの商業印刷では使う機会が少ない技術や機械もある。「本当はやりたいことがいっぱいあるんです。こちらからも提案していいですか」と岡社長に言っていただいたことがとても嬉しかったです。僕たちもふだんの本づくりではなかなかできない印刷や製本を試すことができています。
ハセガワ 王子製紙さんの苫小牧工場を見学したときのレポートを、サポーターさんにお送りしたこともありますね。
ミシマ そうでした。サポーターさんとまた工場見学に行きたいです。
これまで作成した「サポーター新聞」
「紙版みんなのミシマガジン」
電子書籍によって紙の本がなくなると言われていた時期
ノザキ すごい・・・今、私もぜんぜん知らない話が次々と出てきてびっくりしています。
ミシマ 僕もサポーター制度のはじまりについてこんなにお話ししたのははじめてです。
ノザキ ミシマさんはサポーター制度誕生の頃に、紙の本にしかできないことは何か、ということをすごく考えていたんですね。
ミシマ 今思い出しましたが、13年前は、「電子書籍が普及することで紙の本はどんどん減っていくだろう」という声がかなりありました。僕は紙の本がなくなることはないと感じていたのですが、議論をしても仕方がないので、紙でしかできないことをちゃんとたくさん実践していこうと思ったんです。
そのひとつとして生まれたのが「コーヒーと一冊」シリーズです。単行本のひとつのフォーマットとして、200ページ前後で、1500円くらいの定価をつけるという基準があるなかで、コーヒーを一杯飲むあいだに読み切れるくらいの薄い本(100ページ前後で、定価1000円)を作りたいと思いました。

コーヒーと一冊シリーズ
2017年刊行の益田ミリさんの『今日の人生』は、サポーター制度のなかでいろいろな紙や印刷を試した経験から生まれた、ひとつのピークと言えると思います。本文の紙が3色に分かれているのですが、もともとはすべて白い紙で、そこにピンクや青や緑の背景色を印刷しています。その際、漫画のコマの中だけは色の濃度を落とし、コマが浮き上がってみえるようにしました。こういう遊びは電子書籍ではできません。おかげさまで「今日の人生」シリーズは3巻で累計約20万部のロングセラーになり、「装丁が素敵です」という読者の方の声を、本当にたくさんいただいています。


益田ミリ(著)『今日の人生』より
スポンサーがないウェブメディアをつくる
スミ サポーター制度がはじまったのは、ウェブ雑誌「みんなのミシマガジン」のスタートと同じタイミングですよね?
ハセガワ そうそう。そもそも最初はミシマ社サポーターではなく、「ミシマガサポーター」としてはじまりました。
ミシマ そうでした! もともと、「平日開店ミシマガジン」という名前でウェブ雑誌をやっていましたが、2013年から「みんなのミシマガジン」に改称して、更新頻度を上げ、読み物を充実させていきました。その際、企業広告を載せるのではなく、サポーター費をミシマガの運営費に充てさせていただくという形をとりました。
仮にスポンサーがつくと、掲載できる内容に制約が生まれてしまう可能性もあります。それは、本当に必要なことを文章として残すという出版の精神と反するところがあると思ったのです。企画権や掲載権は100パーセント出版社にある、独立性を保った状態でいたいと思いました。
スミ 「みんなのミシマガジン」がきっかけでミシマ社を知ってくださる方も本当にたくさんいらっしゃいますし、『今日の人生』をはじめ、ミシマガの連載から生まれた本、これから生まれる予定の本もあります。サポーターさんがいるからできた場が、文字通り私たちの出版活動にとって欠かせない場所になっていることに気づきました。
ミシマガには「ミシマ社サポーター名鑑」というコーナーがあって、全国各地のサポーターさんが自己紹介の記事を書かれています。どんな方がサポーターをしておられるのか、ぜひ覗いてみていただきたいです。
編集部からのお知らせ
ミシマ社サポーターを募集しています
ミシマ社では、2026年度の出版活動を応援してくださる「ミシマ社サポーター」を募集しています。皆さまからいただいたご支援は、本をつくり、読者に届ける活動を通して循環していきます。

サポーターさんには、一年間ミシマ社の活動をサポートいただきます。年度ごとの更新で、サポート期間中はミシマ社から毎月ささやかな贈り物(下記参照)をお届けします。期間途中でお申し込みいただいた方には、それ以前のサポーター特典はさかのぼって全てお贈りします。
【サポート期間】2026年4月1日~2027年3月31日
【サポーターの種類と特典】下記の三種類からお選びください。特典は、2026年4月より毎月に分けて、一年間お届けいたします。(特典の内容は変更になる場合もございます)。

2025年度は、サポーターさんとミシマ社メンバーが直接交流する「サポーターDAY」を開催し、特別な時間となりました。当日の模様を、新人のニシカワがミシマガでレポートしております!
詳細・お申込みについては、下記をご覧くださいませ。
2026年度はミシマ社創業20周年の年でもあります。サポーター制度を通して、多くの読者の方々とお会いできることを心より楽しみにしております。




