ミシマ社の本屋さん通信

第4回

さよなら下堤町

2018.10.18更新

 こんにちは、京都オフィスの野崎です。

 ついにミシマ社京都オフィスは、先週無事に引越しました!!

 1日で荷詰めをして、メンバー全員が絶望的な表情を浮かべ、引越し業者のお兄さんまでもが心配して荷物整理のアドバイスをくれるほどに大量のダンボールの山をほぼ1日で整理して、今、驚くほどに快適な、新・京都オフィスです。

 新しいオフィスで仕事をするのはまだ4日目ぐらいなのですが、もうすでに「ここが自分たちの拠点だ」と自然に思える、そして「いい仕事をするぞ!」と気合いの入る環境を手に入れました。明るくて風通しもよく、2階の大きな窓からは軒先に生える紅葉の木を毎日眺めることができます。

 さて、これまでの「ミシマ社の本屋さん通信」でもお伝えしてきましたが、今回のオフィス移転にともない、ミシマ社の本屋さんは9月29日(土)をもって一旦の閉店を迎えました。そのへんのことを書きませんか? とある日のミーティングで本屋さんに一番関わっていたであろう男・トリイにふってみたところ突然文章が送られてきました。

 正直、こんな文章を書いているヒマがあったら、ダンボールの一つでもあけてくれたらよかったのに・・・と思ったことは内緒です。では、どうぞ!

***

 9月29日。なんとなく開店時間を迎え、いつものようにお客さんを迎える。最初のお客さんは・・・見たことのないお顔かな? 意に反して、初めてのご来店が続く。「ずっと来てみたかったんです。きっかけがなかなかなくて。」と話す女性。台風が近づく中、泊りがけで来てくださる方もいた。そうか、そんな場所だったんだ、といまさらながら少し驚く。ただ本が並ぶちょっと雰囲気のいい空間にいきたいのではなく、今この場所をめがけて来てくださるお客さんがいる。

 しばらくすると店内はいっぱいになった。久しぶりのKくんはお土産をもって。にぎやかにTシャツを選ぶ4人組、静かに入ってくる知った顔。さっき橋の上ですれ違ったいしいしんじさんも立ち寄ってくれた。この場所を誰よりも上手に使っていた矢萩多聞さんもやってくる。大野さんの淹れる珈琲の香りが漂う。

 5時。店内の人出がピークになった。本を見に来る、というよりも空気を吸いに来ている感じ。みんななんとなくそこにいて、浅い呼吸を繰り返している。誰かが帰っても誰かがやってきて店内は一向に落ち着かない。みんな口々に「次の場所はどこですか?」「いつ再開されるのですか?」と言いつつ帰っていく。

 6時を過ぎると「新オフィス見学ツアー」に出かける人がぞろぞろと外へ。店内はがらんとした。ここからいつもは日が暮れてあっという間に迎える閉店時間。でもこの日、この一時間が、なんだかとても長かった。いまごろ、川の向こうでは新しい場所が開かれようとしている。そのことをとても頼もしく思いながらいつもの番台から誰もいない縁側を眺めてみる。

 10月2日。夜。本棚の整理をする。並んでいく本を抜いていく。ナナロク社、夏葉社、春風社。この場所に引っ越してきたときから並ぶ本もある。平凡社、晶文社、筑摩書房。注文した本が棚に入るときのことを思い出している。すっきりはまる本、なんだか居心地悪そうな本。本を抜く、というよりは棚から本を剥がす、という言葉がしっくり来る。なんとなくいいように並べていた本たち。作業をすすめながら、自分の皮膚を剥がしていくような感覚になる。べりべりべり。散らかったままの暗い部屋を逃げるように出る。この家の夜はいつも暗すぎる。

 10月12日。本棚とダンボールも運び出され空っぽになった部屋。急に空気が淀んだ空間。畳に腰を下ろす。ここに暮らしがあった。ここに暮らしていた人がいた。本屋さんを初めて数カ月後にやってきた親娘。そしてその後に住んでいた誰か。本屋さんが始まる前があって、そして本屋さんが終わった後が、いま、ある。この場所で始まるなにかがある。そんなことを考えている。

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編集部からのお知らせ

ミシマ社京都オフィス移転のご案内

ミシマ社京都オフィスは下記へ移転しました。電話番号やFAX番号の変更はございません。今後「ミシマ社の本屋さん」は規模を小さくして再開予定ですが、時期は未定です。

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〈新しいオフィスの住所〉
〒602-0861 京都市上京区新烏丸頭町164-3
TEL:075-746-3438/FAX:075-746-3439

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