MS Live! 制作室

第22回

瀬戸昌宣さんインタビュー この夏は、ベースキャンプで「自分のわくわく」に出会おう!

2021.07.08更新

 ミシマ社のオンライン講座MSLive!では、この夏、「こどもとおとなのサマーキャンプ2021」を開催します。キャンプのテーマは「この夏、もれよう!」。あふれる思いのままに遊び、学ぶ時間になることを願って、このテーマを掲げました。
 サマーキャンプの魅力はなんといっても、「キャンプ」というかたちにあります。4~5つの講座がぎゅっと詰まった1泊2日のプログラムを2セット行い、そのインターバル期間には「ベースキャンプ」を実施するという形式にしました。(*ベースキャンプに参加いただけるのは、「通しチケット」ご購入者のみです。)
 このかたちを提案くださったのは、瀬戸昌宣さんです。瀬戸さんは福岡県福津市を活動拠点として「i.Dare イデア」という全国にむけた教育プログラムを主宰し、学校外における新しい学びの場づくりを実践されています。ミシマ社では、森田真生さんとの「学びの未来プロジェクト」でもおなじみです。
 今日のミシマガは、サマーキャンプの開催にむけて、瀬戸さんのインタビューをお届けします。キャンプに興味を持ってくださっている方も、はじめて知ってくださった方も、ぜひご覧ください。自宅で「学び」の環境を整えて最高に楽しい夏を迎えるためのヒントを、たくさん教えていただきました!

(取材・構成 角 智春、田渕洋二郎)

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なぜ1カ月をかけてベースキャンプをするのか?

 はじめに、「こどもとおとなのサマーキャンプ2021」のプログラムをご紹介します。
 第1部と第2部のあいだに約1カ月のインターバルがあるのは長すぎでは? と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
 ですが、この期間に「ベースキャンプ」があるからこそ、しっかりと成長し、一生思い出に残るもの(自分だけの絵本、料理、いきものの観察記録、野菜、地図)をつくれた、とみなさんが感じてくださるようになると考えております。1回の講座のみで終わるのではなく、第1部、ベースキャンプ、第2部と学びの時間が続くことで、子どもたちが秋以降も主体的に学べるようになることを目標にしています。

【第1部】
7/31(土)
10:30〜12:00 tupera tuperaさん「tupera tupera流 絵本のつくり方」
14:00〜15:00 土井善晴さん「こどもとおとなの料理講座」
16:00〜17:00 中田兼介さん 「いきものとあそぼう!」
8/1(日)
10:30〜11:30 宮田正樹さん(・中村明珍さん)「地元で、なにかを育てる」
14:00〜15:00 村上慧さん「自分の地図をかこう」

【ベースキャンプ】
8/2(月)、8(日)、16(月)、23(月)19:00~20:00
瀬戸昌宣さんとのオンライン対話 「壁打ち」

【第2部】
8/28(土)
10:30〜11:30 中田兼介さん 「tupera tupera流 絵本のつくり方」
14:00〜15:00 土井善晴さん「こどもとおとなの料理講座」
8/29(日)
10:30〜11:30 宮田正樹さん(・中村明珍さん)「地元で、なにかを育てる」
14:00〜15:00 村上慧さん「自分の地図をかこう」

☆全日程に参加いただくことも、どれかひとつの講座に参加いただくことも可能です。この記事では、通しチケットの方に参加いただける「ベースキャンプ」について詳しくお伝えします!

i.Dareとミシマ社のサマーキャンプが大切にすること

――瀬戸さんがi.Dareの活動で大切にされていることはなんですか。

瀬戸 i.Dareは「生きる、遊ぶ、学ぶを自由に」、つまり、学びたいように学んで、遊びたいように遊んで、生きたいように生きる、ということを大切にしています。学びたいように学ぶためには、学びたいという思いがそのままあふれていないといけません。だから、「なんとなくこれに興味がある」ではなく、なにを学びたいのか、どんなふうに取り組みたいのか、という入口をはっきりとさせることが大事です。

――i.Dareとミシマ社のサマーキャンプのつながりを教えてください。

瀬戸 サマーキャンプでは、講師の方たちが刺激的な話をされるでしょう。ここで気を付けないといけないのは、その場の雰囲気にあわせて、みんなで同じわくわくを共有しようとしてしまうこと。でも、わくわくドキドキするポイントは、みんなそれぞれ違っていいんです
 だから、「私の気持ち」が一番大事だということを確認する時間があるといいですね。僕たちがi.Dareでやっていることは、つねに「確認」です。「これをやってください」という指導や教育ではなくて、「君は今どういう状態? オッケー?」「今、何がしたい?」という確認です。確認があってこそ、講座に没頭しつつも自分のわくわくを大事にすることができます。だから「ベースキャンプ」期間を設けました

――学びにとって、なぜ「キャンプ」という形式が大切なのでしょうか?

瀬戸 キャンプの良さは、「没頭できること」です。オンラインであっても「キャンプ」と銘打つことによって、「いま自分が参加しているのは、普段とは別の環境なんだな」という感覚をもってもらえると思います。昨日までの自分、学校での自分、家族の中での自分、という存在から解放される仕組みです。

seto_photo1.jpg(瀬戸昌宣さん)

わくわくを削りだすための「壁打ち」

――ベースキャンプ期間中は、週に1回、瀬戸さんが参加者のみなさんとオンラインで対話する「壁打ち」をやります。どんな対話になるのでしょうか。

瀬戸 壁打ちは、さきほど申し上げた「確認」のための対話です。ただし僕は、「そうだよね、そういうとこ面白いよね」と同調するだけではなく、「本当に、本当に、本当にそう思ってる?」ということを聞こうと思います。「他のみんなは絶対わくわくしてないだろうなって思う、あなただけのわくわくポイントが聞きたい!」と投げかけることで、自分だけのわくわくが見えてくることもあります。壁打ちの目標の一つは、それぞれの講座で受け取ったもののなかから、自分の気持ちや興味を削り出すことです。
 たとえば、クモ博士の中田先生の講座を聞いて、「蜘蛛の糸が、なんで鉄の糸よりも強いのか」という王道の問いを持ってもいいし、「そもそもなんでクモは糸を出すの?」という問いに取り組む子がいてもいいんです。調べ方や取り組み方は千差万別でいいということです。
 壁打ちのもう一つの目標は、「科学的なものの見方の作法」を知ることです。自分の知りたいことを探求するためには、ある作法が必要です。そこでひとつ伝えたいのは、科学的な証明は「否定」で成り立っているということ。「Aをすると B が起こる」ということを説明するとき、あらゆる説明の可能性のうち、A以外がすべて否定された場合(つまりAだけは否定のしようがない時)に「AとBには因果関係がある」と考えられるわけです。僕らの世界は肯定ではなく否定で出来上がっているのは驚きですよね。だから、論理的に考えるとか、批判的に考えるということ自体にも疑問を持つような時間になってほしいと思います。正解がなくていいし、疑問が生まれただけで終わっていいんです。キャンプを終えたあとにやっと、「自分がなにを知りたいのか分かりました!」というふうになったら最高ですね。

いつも辞書を引こう、お絵かきをしよう!

瀬戸 壁打ちで「こんなことを知りたい」と子どもたちが言ったときには、僕は答えを示すのではなく、「じゃあ、図書館の使い方わかる?」という話をしたいと思います。情報との向き合い方を知ってほしいからです。図書館に行って司書さんに聞けば、疑問についての答えや考え方が載った本をかならず目の前で引っ張ってきてくれます。それは司書さんがその疑問について精通しているのではなくて、情報の分類をわかっているから。図書館を使えるようになれば、世の中の情報がどう分類されているかを知ることができます。ベースキャンプでは図書館を使ってみるというプロジェクトをやろうと思います。

――子どもとおとなが自宅で共に育つ環境をつくるには、どうしたらいいですか。

瀬戸 頭に疑問が浮かんだらすぐ手が届く場所に、辞書や辞典を置いておいてほしいです。辞書は最新版でなくてもいいので、中古で数百円で手に入ります。
 子どもとおとなが共に育つには、同じ土俵に立つ必要があります。だから、大人用・子ども用の区別がない本が身の回りに溢れていると良いですね。辞書・辞典のすごいところは、伝える情報が全世代共通であること。理解できる理解できないは人によって変わりますが、伝えてくれるメッセージは同じなんです。そういうものを増やして、みんなでテーブルの上などで広げて一緒に見れるような環境があるといいですね。

親子で、自宅で、疑問のアーカイブをつくる

瀬戸 あともうひとつは、お絵かきがいつでもできる状態を作ってほしいです。画用紙ではなく、A4サイズの500枚のコピー用紙の束と、ぺんてるのサインペンがおすすめです。ベースキャンプではこれを用意しておいていただきたいです。
 疑問が浮かんだら、そのままA4の用紙に書いて、マスキングテープなどで壁に貼り出して、家族で共有してください。なんでも不思議だと思っていい、と全肯定できる環境を作りたいですね。紙を壁一面に張っていけば、家の色々な場所に疑問を蓄積していけます。おそらく、勉強する部屋や仕事する部屋を決めたかたちの家がすごく多いと思うんですよ。その環境をこの夏の間だけ変えるというのはどうでしょうか。
 そうやって疑問のアーカイブを作ってほしいです。子どもたちと問いを共有して、大人も自分の「なぜ」を削り出していけるといいなと思います。答えを見つけるのではなく、問いを作り上げることが大切です。「我が家の今月の問いはこれでした!」と。

――ありがとうございました! 2回の集中講座とベースキャンプが組み合わさっている理由がよくわかりました。

瀬戸 この形式にすると、学びや遊びが途中で途切れないと思うんですよね。
 講座のなかには、自分が気分的に乗らないプロジェクトもあると思います。そういう時は、それはそれでいいんじゃない? と肯定することもすごく大事です。すべてを学ばなくてもいいから、わくわくを削り出して、その思いには忠実に向き合うということを壁打ちでやっていきましょう。

瀬戸さんからのメッセージ動画があります!



瀬戸昌宣(せと・まさのり)
NPO法人SOMA代表理事
米国コーネル大学にて博士号を取得、同大学で研究と教育に従事。2016年、高知県土佐町で中山間地域の教育に参画。2017年にNPO法人SOMAを設立、「ひとが育つ環境をととのえる」をミッションに学びの環境づくりに取り組む。主催する教育プログラムi.Dare(イデア)は、2019・2020年度、経済産業省「未来の教室」実証事業に採択された。福岡県在住。
2021年度より経済産業省 産業構造審議会 教育イノベーション小委員会委員、高知大学大学院講師。高知県起業支援事業 Kochi Startup Parkメンター。ミシマ社より、週刊「学びの未来」と月例「学びの未来 座談会」を独立研究者・森田真生氏と配信中。
ただいま「i.Dare夏のキャラバン」(小中学生向け合宿イベント)参加者募集中!

※ミシマ社のサマーキャンプ参加者は、i.Dareが開催する8月のサマーキャンプに割引で招待していただけることになりました! ご興味ある方はこちらからぜひ。

【こちらのページもぜひご覧ください!】
2021.4.29 「学習権」をめぐる対話〜森田真生・瀬戸昌宣(みんなのミシマガジン)

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2021.1 NYから土佐へ、農業昆虫学を捨てて見つけた「偶然性の教育」(Forbes japan 3月号)

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(えむえすらいぶ せいさくしつ)

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