ミシマガ野球部

第32回

韓国・台湾のNPB選手
オールタイムベストナイン〈西村健〉

2026.03.26更新

 2026年のWBCで、日本がベネズエラに5-8で敗北を喫したことは残念だったが、「こういうこともあるだろう」というのが私の正直な思いである。昨季12球団で最も勝率が高いソフトバンクだって、12球団で最も勝率の低いロッテに対し、3試合のうち1試合は負けているのである(15勝9敗1分、勝率.625)。そういえば今大会では、アメリカがイタリアに敗れるという波乱も見られた。いくら強いチームでも負ける可能性が十分にあるのが、NPBやWBCの魅力なのではないか。

 ただ、韓国がドミニカ共和国に、10-0、しかも7回コールドで敗れたことはなかなかショックだった。2009年第2回大会では準優勝を果たした韓国が、明らかな実力差を見せつけられたのである。身体能力と緻密さを兼ね備えるようになった中南米の野球は、今後もアジアの野球国を苦しめ続けるのであろうか。
 そこで今回の拙稿では、「アジアはまだまだこんなもんじゃない」という気分になるために、過去の韓国・台湾の名選手に思いを馳せたい。具体的には、韓国出身のNPB選手、台湾出身のNPB選手、さらには両親のうち一人以上が韓国人あるいは台湾人のNPB選手の中からオールタイムベストナインを選出したい。すなわち、仮に1936年からWBCが行なわれていたとしたら、韓国代表、台湾代表として出場する資格があった人たちである。
 ただ、私はNPB全選手の両親の国籍を知っているわけではないので、多くの「漏れ」があるだろう。その点はお許しいただきたい。例えば金本知憲や新井貴浩については確かな情報を持っておらず、両親のうちどちらかが韓国人なのかもしれないが、今回のメンバーからは外している。

【投手】
右の先発:郭泰源(85-97、西武)台湾出身
通算成績:117勝68敗18S 防御率3.16 
キャリアハイ:1991年 15勝6敗1S 防御率2.59 ※MVP
西武黄金時代を支えた「オリエンタルエクスプレス」。工藤公康・渡辺久信とともに三本柱となったが、西武時代に限定した成績で比較すると、郭が117勝68敗/防御率3.16、工藤が113勝52敗/防御率3.14、渡辺が124勝105敗/防御率3.65。工藤・渡辺と全く遜色ない成績を残している。

左の先発:金田正一(50-69、国鉄-巨人)、在日韓国人2世 1959年に帰化
通算成績:400勝298敗 防御率2.34
キャリアハイ:1955年 31勝14敗 防御率1.30(※最多勝、最多奪三振、最優秀防御率)
現役時代の驚異的な成績については説明不要だが、1974年に監督としてロッテをシーズン勝率1位に導いたこともとてつもない偉業である。なにせ、ロッテはその後51年間、勝率シーズン1位になっていないのだから。なお、そのときのロッテのオーナーの重光武雄氏も韓国人であり、ロッテグループの創業者である。

抑え:林 昌勇【イム・チャンヨン】(08-12、ヤクルト)韓国出身
通算成績:11勝13敗128S 2.09
キャリアハイ:2010年 1勝2敗35S 防御率1.46
2009年のWBCでイチローに決勝打を打たれたり、不法賭博で逮捕されたり、マイナスイメージがつきまとうが、NPB通算128Sは韓国・台湾出身のNPB選手の中では1位。実はKBO(韓国プロ野球)・NPB・MLBで通算1004試合に登板。岩瀬仁起の通算1002試合登板を上回っている。

捕手:白仁天【はく・じんてん】(88-91、東映・日本ハム―太平洋―ロッテ―近鉄)韓国出身
通算成績:.278 209本 89安打 212盗塁
キャリアハイ:1979年 .340 18本 71打点 3盗塁
本来は外野手で選出すべきだが、捕手として184試合に出場しており、他に適当な選手がいないためやむを得ず捕手で選出。通算200本&200盗塁を達成している唯一の外国人選手。1982年にはKBOで打率.412をマークしたが、これは現在でもKBO記録である。東映の三大暴れん坊の一人(あとの二人は張本勲と大杉勝男)。

一塁手:大豊泰昭(89-02、中日―阪神―中日)、台湾出身
通算成績:.266 277本 1089安打 15盗塁
キャリアハイ:1994年 .310 38本 107打点 ※本塁打王・打点王の二冠
韓国・台湾出身の選手で本塁打王に輝いた唯一の選手。2012年にオリックスの李大浩が打点王に輝いたが本塁打王にはなれなかった。王貞治に憧れて来日、通算本塁打266本は韓国・台湾出身の選手の中で1位。なお、王の父親は台湾人だと誤解している人が多いが、中国・浙江省出身である。

二塁手:金山次郎(43-57、名古屋・産業・中部日本・中日―急映―大映―松竹―広島)、韓国生まれ・福岡出身 1963年に日本に帰化
通算成績:.243 45本 1281安打 456盗塁
キャリアハイ:1950年 .311 7本 67打点 74盗塁 ※盗塁王
通算盗塁歴代6位。盗塁王を3度獲得しており、1950年の松竹水爆打線のシーズン908得点(日本記録)に大きく貢献。1944年には本塁打王にも輝いている。そのときの本塁打数は3本だが。

三塁手:呉念庭【ウー・ネンティン】(16-23、西武)台湾出身
通算成績:.224 16本 220安打 10盗塁
キャリアハイ:2021年 .238 10本 48打点 3盗塁
2023年のWBCで.333 1本塁打と活躍、2025年のCPBL(台湾のプロ野球)で首位打者になった。しかし2026年のWBCでは11打数2安打、打率.182と不完全燃焼。西武に8年もいて、西武ファンから愛されている選手である。

遊撃手:李鐘範【イ・ジョンボム】(98-01、中日)韓国出身
通算成績:.261 27本 286安打 53盗塁
キャリアハイ:1998年 .283 10本 29打点 18盗塁
1994年、韓国で.393をマークした「韓国のイチロー」。イチローのシーズン最高打率.387を上回っているのは驚き。さらに1997年には30本塁打も放っている。名古屋生まれの息子、李政厚(イ・ジョンフ)もKBOで活躍し、親子ともども首位打者・MVPを獲得。ちなみにイ・ジョンフの2026年WBC成績は.238 0本であった。

外野手:呉 昌征【ご・しょうせい】(37-57、巨人―阪神・大阪―毎日)台湾出身
通算成績:.272 21本 1326安打 389盗塁
キャリアハイ:1950年 .324 7本 45打点 29盗塁
日本統治下の台湾において、嘉義農林学校時代に、春の甲子園に1回、夏の甲子園に3回出場。その後プロ入りし、アグレッシブなプレーから人間機関車と呼ばれた。 1リーグ時代の42年・43年に2年連続首位打者獲得。太平洋戦争中に、職業野球を代表する野手として活躍した。

外野手:陽岱鋼【よう・だいかん】(07-21、日本ハム-巨人)台湾出身
通算成績:.270 105本 1164安打 141盗塁
キャリアハイ:2014年 .293 25本 85打点 20盗塁
台湾の原住民であるアミ族の出身。福岡第一高に入学したあと、2005年にドラフト1位で日本ハムに入団。史上初めてドラフト1位でNPBに入団した台湾人選手となった。

外野手:上林誠知(15-、ソフトバンク―中日)母親が韓国人
通算成績:.246 75本 561安打 75盗塁(2025年末現在)
キャリアハイ:2018年 .270 22本 62打点 13盗塁
昨季2025年は17本塁打、27盗塁と大活躍。ただし20四球はセ・リーグ規定打席到達者の中で最少だった。なお、パ・リーグ規定打席到達者の中で最少四球は言わずと知れた牧原大成(7四球)。セイバーメトリクスでは四球が重視されるが、この二人には今後も四球を狙わない思い切りのいい打撃を見せてもらいたいものである。

指名打者:張本 勲(59-81、東映・日拓・日本ハム―巨人―ロッテ)両親が韓国人 2024年の数年前に日本に帰化
通算成績:.319 504本 3085安打 319盗塁
キャリアハイ:1970年 .383 34本 100打点 16盗塁(※首位打者)
通算3割・500本・300盗塁を記録している唯一の選手。青春時代も東映時代も暴れん坊だったようで、私などは朝鮮出身のプロレスラー力道山とイメージが重なってしまう(力道山が力士を辞めた理由は素行不良だったようだ)。この二人が日本のスポーツ界に残した足跡は途方もなく大きい。

 以上、韓国・台湾の12選手を取り上げてきた。NPB通算勝利数1位の金田は在日韓国人2世、通算本塁打1位の王の父は中国出身、通算安打1位の張本の両親は韓国人と、韓国・中国にルーツを持つ選手の底力が如実に感じられたのではないだろうか。
 近年は、韓国・中国・台湾にルーツを持つ大選手があまり出ていないような気がするので、WBCで韓国を4回0失点に抑えた古林睿煬(グーリン・ルェヤン、台湾出身、日本ハム)あたりが殻を破ることを期待する。


文・西村健

某出版社の某新書レーベルの編集者。プロ野球の昔の記録を調べるのが好きです。

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