ミシマガ野球部

第31回

ベイスターズ宜野湾キャンプと猫、そしてユニポンの話〈松樟太郎〉

2026.02.26更新

衝撃の緩さと、あの日の村田修一の後ろ姿

 WBC日本代表の宮崎キャンプが話題になっている中、あえて誰も注目していないプロ野球のキャンプの話を書こうと思います。それも、中でも注目度の低い横浜DeNAベイスターズの宜野湾キャンプの話です。

 私はこの20年くらい、ほぼ毎年、沖縄県宜野湾市の宜野湾海浜公園で行われるベイスターズのキャンプに行っています。

 20年前、ベイスターズのキャンプは、そりゃあ緩かったです。
 選手が歩く動線と見学者の動線が同じだったので、そこらじゅうで選手とすれ違っていました。サブグラウンドと選手との間には紐が張ってあるだけなので、選手がエラーするとボールがこっちまで転々と転がってきました。設備も古く、特にバッティングマシンのある場所は掘立て小屋としかいいようがない代物で、選手の雑談が丸聞こえでした。
 イベントやサイン会は基本、即席で、やったりやらなかったり。村田修一がサインを求める人の波をかき分けながらホテルに帰ろうとしたり、たまに思い直したのか即席サイン会を始めたりしたのを思い出します。
 これが普通かと思って巨人やソフトバンクのキャンプを見に行ったら、全然違いました。その後、阪神とロッテ以外のキャンプはすべて見にいきましたが、もう圧倒的にベイスターズは緩かった。だから弱かったのか、弱かったからああだったのか。鶏が先か、卵が先か。

「ですから」のゲシュタルト崩壊

 それが近年、特にDeNAが親会社になってから、だんだん変わってきました。
 古かった設備は毎年のように刷新され、動線も整備され、イベントも定期的に開かれるように。観客が増えるに従いキッチンカーが現れ、公園内の球場にネーミングライツで企業名がつくようになりました。
ちなみに、現在は沖縄を代表するスーパーのユニオンがネーミングライツを取得し、「ユニオンですからスタジアム宜野湾」になっています。

 ......?
 いや、「ですから」は誤植じゃありません。
 ユニオンのキャッチフレーズが「ユニオンですから」なので、それをそのまま球場の名前につけてしまったのです。誰か止めろよ。

 とはいえ私もユニオンにはお世話になっており、日々の食事からお土産まで、沖縄滞在中はしょっちゅう行っています。宜野湾にも複数店あり、店が広くて駐車場も停めやすい宇地泊店がおすすめです。
店では常にユニオンのテーマがかかっています。歌詞はひらすら「何でも揃う→ユニオンですから!」「24時間開いている→ユニオンですから!」と連呼するというもので、鮒寿司のような中毒性があります。

 ちなみにユニオンはキャンプ地で出張販売もしており、「ですからそばの汁だけ」などなかなかエッジの効いた商品を販売していました(「ですからそば」とは何かについては、紙幅の関係で触れません)。
 出店にはマスコットキャラクターの「ユニポン」も参戦。身体の中心に「U」の字が入っており、それが口なのか模様なのかわからない異形のゆるキャラですが、子供にどつかれたりとそこそこ愛されているようでした。

 ともあれ、この20年でいろいろ変わったベイスターズキャンプの象徴がある意味「ユニオンですからスタジアム」なのです。

猫たちのサンクチュアリ

 でも、私にとって20年前と最も変わったと感じられるのは、猫です。
 宜野湾海浜公園は、知る人ぞ知る猫の楽園でした。おそらく風除けのためと思われる広大な茂みを中心にたくさんの猫が住み着いており、彼らを愛でにいくのがキャンプのもう一つの楽しみでした。
いわゆる地域猫で、誰がが餌をあげたりしているようです。人懐っこく膝の上に乗ってくる猫もいれば、警戒してずっと隠れているのもいる。勝手に「ボス」と名付けた貫禄ある白黒猫は、人が近寄るといつも茂みに逃げ込んでいました。本当は臆病だったのかもしれません。
 堤防で日向ぼっこをする猫も多く、海をバックに佇む猫は、本当に美しかった。

 その猫たちの数が年々、減っていっていました。ある意味当たり前の話で、繁殖を防ぐためにTNR、いわゆる去勢を施しているので、普通に考えれば増えることはない。猫を捨てる不届きもののせいで増えたりもするようですが、やはり年々減っていっていました。

 そこに追い打ちをかけたのが、数年前に始まった公園内にある野外劇場の改修工事。猫にとって居心地が良かったであろう古びた野外劇場が大規模改修されることになったのです。猫のいた茂みは半減し、工事現場は囲いで覆われ、工事車両が頻繁に行き交うなど、おそらく猫にとっては極めて居心地の悪い環境になってしまったのです。

 かつては十数匹くらい出会えていたのが、今年はたったの3匹。過酷な環境で生きる外猫は減らすべきという考え方はわかります。ただ、かつて会ったあの猫たちがどんな思いをしていたのかなと思うと、胸が苦しくなります。親切な人にもらわれていったのなら良いのですが。

 この20年でベイスターズも、ベイスターズのキャンプも大きく変わりました。ユニポンが現れて、猫がいなくなった。いい悪いではなく、それが20年という歳月なんでしょう。
 仮に1匹もいなくなっても、あの場所に猫たちがいたことを、私は覚えておこうと思います。

 そして、いつかユニオンがネーミングライツから降りて球場名が変わったとしても、あの球場が「ユニオンですからスタジアム宜野湾」という珍妙な名前であったことを、ねちねちと覚えていようと思います。

ミシマガ野球部
(みしまがやきゅうぶ)

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