第35回
2026年、育成出身選手が活躍している球団はどこか〈西村健〉
2026.07.27更新
「育成のソフトバンク」の現在
6年前、コロナ禍の中で行なわれた2020年ペナントレースで、リーグ優勝+日本一を果たした福岡ソフトバンクホークスは、多くの育成ドラフト入団選手が活躍したチームであった。
先発の軸は、共に11勝を挙げて最多勝を獲得した千賀滉大(2010年育成ドラフト4位)と石川柊太(2013年育成ドラフト1位)。正捕手はベストナインを受賞した甲斐拓也(2010年育成ドラフト6位)。周東佑京(2017年育成ドラフト2位)は12試合連続盗塁のプロ野球新記録を樹立するなど、育成出身選手初の盗塁王に輝いた。
また、主力クラスにNPBの他球団から移籍してきた選手はいなかった。ヤクルトから移籍したバレンティンが60試合出場、ロッテから移籍したデスパイネが25試合出場しているが、ともに本塁打は10本以下で、優勝に貢献したとはとてもいえない。この年のホークスは、他球団のファンからの恨みをあまり買わないチーム編成だったと言えるだろう。
しかしいま(2026年7月19日)、パ・リーグの首位を快走するホークスのチーム編成は、少し異なる様相を呈している。
千賀、石川、甲斐は他球団に移籍。育成入団で、昨年最高勝率を獲得した大関友久(2019年育成ドラフト2位)も、今年はここまで3勝4敗、防御率5.37と振るわない。育成入団した主力選手は牧原大成と周東、そして現在は二軍調整中の木村光だが、投打の主軸である元日本ハムの上沢直之、近藤健介の活躍のほうが目立っているかもしれない。今年ソフトバンクは日本ハムに対して12勝2敗と完全にカモにしているのだから、日本ハムファンの遣る瀬無さたるや、いかばかりか。
周東も牧原も30歳を超えており、現状、育成出身の若手選手は木村以外、目立った活躍はしていないといえる。育成選手を大量に獲得し、二軍三軍四軍で鍛え上げてチームの主力に育て上げるホークスの戦略は、オリックスファンの私からしてみれば脅威であり、わりと好ましく思えるものでもあるのだが、今年のホークスは以前の「他球団で活躍した選手を獲得して強いチームを作る」方向性のほうが強くなっているのではないか。
活躍している育成出身選手一覧
では2026年、育成出身選手のうち、活躍している選手は誰なのか?
次に挙げる表は、各球団ごとに、今年活躍している育成ドラフト出身選手と、過去に活躍した育成出身選手をまとめたものである。
育成出身選手の差が順位の差につながっているパ・リーグ
あえて現在の順位順にチームを並べたのだが、この表を見てまず気づくことは、パ・リーグはで育成出身選手の活躍の差が、そのままAクラスとBクラスを分けていることだ。
Aクラスの3チームには、それぞれチームの主力になっている選手が複数いる。とりわけ西武の長谷川の活躍は目覚ましく、交流戦の打率は.367で首位打者となり、育成出身選手初の交流戦MVPを獲得した。
日本ハムの福島、柳川の同学年コンビ(ともに2003年生まれ)もまだ若く、今後長くチームを支える選手になるのではと思わせるピッチングを見せている。
オリックス、ロッテ、楽天が後半戦に巻き返しを図るためには、育成出身選手の活躍にも期待したいところだろう。
オリックスの候補は才木か。昨年2025年に11ホールド4セーブ、防御率1.87と飛躍を遂げたが、10月30日に手術を受け、今季は6月30日が初登板となった。今後入山と「育成出身リリーフコンビ」として、 チームのプルペンの一角を占める活躍ができるか。なお、才木と入山も同学年(ともに2000年生まれ)である。
ロッテの候補は若手の吉川悠斗あたりと見せかけて、ベテランの石川と西野に期待したい。この二人は同学年ではないのだが、ともに1991年生まれである。先発が足りないチームを救うのはえてしてこういうベテランである。まあ、ロッテ二軍の勝ち頭は、同じくベテランの唐川37歳(7勝)なのだが。
楽天の候補は金子京介か。25年育成ドラフトで入団した大卒ルーキーで、現在ファーム東地区打点王、本塁打3位。5月15日に支配下選手契約を勝ち取った。楽天待望の生え抜き長距離砲候補である。
史上初、セパ共に「育成出身が盗塁王」なるか
「活躍している育成ドラフト入団選手」の表を見て気づいたことが、もう一つある。
それは「長距離砲が少なく、足を武器にする選手が多い」こと。通算250盗塁の周東を含め、通算100盗塁以上の選手は3人いるのだが、通算100本塁打以上の選手はいない。
これはおそらく、育成選手から支配下選手に這い上がろうとする際に、足を武器にしてチームのピースになろうとする選手が多いためであろう。
その典型例が、今季ここまでパ・リーグトップの20盗塁をマークしている周東と、両リーグトップの25盗塁をマークしているヤクルトの岩田である。このまま二人が盗塁数リーグ1位を譲ることなくシーズンを終えれば、史上初、両リーグの盗塁王がともに育成出身選手ということになる。盗塁数2位の選手は、奇しくも共に24年ドラフト2位の、庄子雄大(ソフトバンク)と浦田俊輔(巨人)。ドラフト上位選手と育成出身選手の争いとなっており、なかなか興味深い。
育成出身選手の歴史を変える? 長谷川と滝澤
その一方で、上述の長谷川のブレイクは育成出身選手の歴史を変えることになるかもしれない。
長谷川は今季、236打席で9本塁打。シーズンフル出場すれば、20本塁打を超える計算になる。これまで育成出身で20本塁打以上をマークした選手はいない。最多は21年甲斐の12本塁打である。長谷川は現在故障で戦列を離れているが、仮に長谷川が見込み通りに8月末に復帰すれば、育成出身選手のシーズン最多本塁打をマークする可能性は十分ある。
加えて長谷川は現在24歳と若く、育成出身初の「通算100本塁打」を達成する選手になるかもしれない。前述の金子と共に、育成出身選手前人未到の記録に挑んでほしいものである。
さらに、育成出身野手の歴史を変えそうな若手がもう一人いる。長谷川の同僚の滝澤だ。
これまで育成出身の内野手には、ベストナイン受賞者もゴールデングラブ賞受賞者もいなかった(外野手は周東がどちらも受賞)。滝澤の遊撃守備がリーグ屈指であることはよく知られているが、なんと最近打率3割前後をマークするようになってきている。遊撃のベストナイン、ゴールデングラブを受賞してもおかしくないだろう。
西武の育成出身選手では菅井信也も楽しみな存在だ。現在は二軍落ちしているが、23歳で早くも通算8勝をマークしている。2003年生まれの投手の中では、達孝太(日本ハム)の11勝に続く数字。菅井と達は、今後何度も同期対決を行なうことになるのではないだろうか。
このように、育成出身の選手をチームの主力に育て上げる西武の育成力は見事である。西武といえばFAで次々に選手が出て行くチームとして有名であるが、今後流出する選手を育成出身選手で埋めるようなスタイルが確立すれば、極めてコストパフォーマンスのいいチームになるだろう。ソフトバンクの対抗軸として、今後もこの路線を是非続けてほしい。




