トーキョーでキョートみつけたトーキョーでキョートみつけた

第7回

ゆめ

2018.10.03更新

 タイムマシンがあったら、何に使いますか?

 ヨーロッパ企画の『サマータイムマシン・ブルース』『サマータイムマシン・ワンスモア』に出演して、幾度かその問いをいただいた。使いたいこと・・・全然出てこなくて、出てこない自分がなんとおもしろみのないと思った。んー。気の利いたことが浮かばないとしても、ほんとに一つもないのかな? そんなことないだろうと、過去への足がかりを求めて記憶の箱をひっくり返して揺さぶった。

 うわあ、妹のように思い接していた赤ちゃん大の人形の姿が頭に浮かんできた。ああ、ごめんね。思い出したくないけど、ある日手放しちゃったよね。
そしてころんと、出てきた。

「お母さんに会いたい」

 内なる声に驚いた。これは叶えられるものではないから口にしてはいけないと、大人へと向かう時期にずっと抑えていた一言なのだろう。母はわたしが2歳の時、胃癌で亡くなった。2歳だから、覚えている(と思われる)声や顔かたちがない。一緒に過ごしていたはずの2年がわたしには無に等しい。

 母に会ってみたい。母と話がしたい。文字に起こすだけで、ぐうぅと苦しさがからだに満ちはじめ、どれだけ年を経ても脈打つ生々しい気持ちなのだと思い知る。だが、こんな欲を見つけたからといってなんなんだよ、話した人を笑わせられるわけでもなしと、気持ちと訣別しようとする自分が出てきて感情は相克する。タイムマシンがあったら、あったら、はあ、いらないよ! 壊してしまいそうだ。


新美「そんななんなって」
照屋「楽しい乗り物じゃん」


 新美と照屋が宥めにやってきた。
 劇の中に生きてあそぶ日々を、もうしばらく続けている。

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早織

早織
(さおり)

女優。1988年5月29日生まれ。京都市左京区育ち。立命館大学産業社会学部卒業。14歳のとき、河瀬直美監督と出会い女優を志す。スターダストプロモーションに所属し、京都に住みながら東京ではたらくという生活を15歳から始める。 三木聡監督のショートフィルム『臭いものには蓋の日』で主演デビュー。 アイドルユニット、バラエティ番組、テレビドラマ、CM、映画、舞台を経験し、2011年大学を卒業後に(やっと)上京。 趣味は読書と写真。「文化系だね〜」と言われることへの反抗心から、HIPHOPレッスンでからだを動かしている。 近年の出演作 : 映画『百円の恋』『過激派オペラ』『キセキ ーあの日のソビトー』『光』、ドラマ『越路吹雪物語』、WebCM『プレミールひとくち妄想劇場』

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ヨーロッパ企画20周年ツアー

第37回公演「サマータイムマシン・ブルース」
第38回公演「サマータイムマシン・ワンスモア」
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