トーキョーでキョートみつけたトーキョーでキョートみつけた

第4回

たまねぎ

2018.07.03更新

役柄の探求はしても わたしはわたしを探求することなく生きている。

とブログに書いたことがあった(2017年10月19日)。しかし今、ミシマガジンでトーキョーでキョートみつけたを書き続けるにあたり、わたしはわたしを探求しているようだ。さて「探求」を手持ちの大辞林(アプリ)で引いてみたところ、

・・・物事の真相・価値・在り方などを深く考えて、すじ道をたどって明らかにすること

ふむ。わたしの在り方を明らかにするなんて恥ずかしい。恥ずかしいならしなければいいじゃない?  でもほんとうはさらしたくないところを(読み手に伝わる形として)書いてみなければ、他の人に書くことのできないわたしの文章にはなっていかないような気がしている。京都育ちはさらすことが不得手だ。「明け透け」に美を感じないから、ものも婉曲に言う。

実のところ、ブログを書いた時の演技観と、今のわたしの演技観が変わっている。わたしを探求することが役柄の探求に通ずると思うようになった。きっかけは『イヴァナ・チャバックの演技術:俳優力で勝つための12段階メソッド』という本を読んだことだった(おお、雄々しいタイトル)。

イヴァナが本の中で促していたのは、「わたし」の探求でも、日頃わたしが目を背けている、わたしの均衡をぶらすもの、こと、ひとを掬いあげろというものだった。わたしの均衡をぶらすところに生のエネルギーが渦巻いており、わたしという人間の個性が潜むようなのである(それを演技に活用してねと)。俳優の演技術(の一つ、あくまでも)に興味のある方は、イヴァナの本を読んでみてくださいまし。

きっと、「わたしはわたしを探求することなく生きている」と書いたのは、そこここをうろうろしてもわたしは見つからないとわかっていたから。でも今のわたしから見るとその観点で止まっていて、変化に対しては意気地が乏しい。蓋をしてしまっている洞穴には目を向けられていない。

ムイテモ ムイテモ ナカミガナイ

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ある一日の終わり、お風呂からあがって濡れた髪を乾かしていると不意に聞こえてきた唄。陽にさらそう。さらしたとしてもたいしたことないんだからわたし。卑下しているのではない。そう自認すると、まだまだやっていないことあるぞ、やれるぞ、さし控えるなと熱い気持ちが湧いてくるのである。わたしわたし書きつらねてくどいやん。と思う京都らしき思考も、ひとまず剥いでしまおうぞ。

早織

早織
(さおり)

俳優。1988年5月29日生まれ。京都市左京区育ち。
15歳から俳優をはじめ幾星霜。立命館大学産業社会学部卒業。
大学時代、内田樹先生の著作を読み耽りミシマ社に辿りつく。
《近ごろの出演作》映画『リバー、流れないでよ』(山口淳太監督)、『遠いところ』(工藤将亮監督)、『NEU MIRRORS』(Keishi Kondo監督)、ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(大九明子監督)

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