第3回
『ちゃぶ台Vol.4』発刊! ミシマ社メンバーのおすすめ記事紹介
2018.10.19更新
いよいよ、本日発刊を迎える『ミシマ社の雑誌 ちゃぶ台Vol.4 「発酵×経済」号』。気になる特集から読むもよし、好きな作家さんのエッセイから読むもよし。また、一見ばらばらに配置されているような原稿も、最後まで読むとなんとなく「つながり」がみえてきたり。いろいろな楽しみ方ができる雑誌です。
そんな雑誌だから、誰が読んでも、「これはおもしろい!」という記事がきっとみつかるはず。十人十色のミシマ社メンバーも、それぞれ気に入った記事が見つかったようです。
というわけで、今回はメンバーの『ちゃぶ台Vol.4』のおすすめ記事をご紹介いたします! 読者のみなさんもお気に入りの記事を探してみてくださいませ。
益田ミリ 「魔法のポケット」
『ちゃぶ台』のゲラを読むときは、いつもミリさんのエッセイが読めるのを楽しみにしていました。これまでも『ちゃぶ台』でエッセイを書いてくださっていますが、ミリさんの言葉は、いつもすっと胸の中に入ってきます。今回のエッセイのタイトルは「魔法のポケット」。ミリさんが、ポケットがたくさんついたトートを作るところから始まります。身近にあるポケットの話で、こんなに世界が広がっていくなんて。読んでいると、一瞬でミリさんの描く日常の世界に入り込んでしまい、そのままちゃぶ台の世界へと誘われています。冒頭からミリさんのエッセイが読める贅沢は他にありません。(岡田千聖)
小倉ヒラク 「秋田で起きている『生命の復活』」
「菌特集」って最初は全然ピンときていませんでした。その認識がひっくりかえったのが、この記事です。中でも好きな話を、ひとつ。秋田の老舗「福禄寿酒造」の水は硬水で、一般に酒作りには不向きとされています。でもこれこそが、独自の旨みをひき出す重要なポイントに。なぜなら、日本酒にとって水は「命」、この水があったからこそ初代はここで蔵をひらいたはずだ、と現・代表は考えます。通説にとらわれず、まずは自分たちの足元を見、そこから本来の良さを引き出してゆく。これって、酒作り以外にもあてはまることで、読んでいて、私はとってもわくわくしました。この話はこの後も、いろんな方向へふくらみます。今号のつかみ! 最初に読んでください!(長谷川実央)
藤原辰史 「縁食論(3)ーー死者と食べる」
『ちゃぶ台』ではおなじみの、藤原辰史先生の「縁食論」。家族や共同体と食べる「共食」でもなく、ひとりぼっちで食べる「孤食」でもなく、食を通したゆるやかなつながりの形を藤原先生は「縁食」と名づけます。今回のテーマは「死者」。食というと、当然「食べる人、そして生きている人」の話が中心になってしまうところを、藤原先生は「死者とともに食べること」にスポットライトを当てます。「戦争が断ち切るもの、そして戦争でも断ち切れないもの」の話、そして食べものそれ自体も死者でもあるということ。自分の食べることへの想像力がいかに乏しかったかを痛感しました。そしてなんといっても最後の一文が本当に痺れます!! ぜひご一読くださいませ。(田渕洋二郎)
タルマーリー 渡邉格・麻里子 「天然菌が世の中の常識を変える!」
金本位制ならぬ"菌"本位制で、よりよい天然菌が降りてくる場所を求めて千葉、岡山、そして鳥取へと移り住み、独自のパンづくりを追求されてきたタルマーリーさん。発酵のエリート・イースト菌と雑多で生命力の高い天然菌のお話を聞いていると、まるで今の人間社会が抱えている葛藤を見ているようですごく興味深いです。均質で、合目的性・生産性の高いイースト菌的なあり方から、多様でアンコントローラブルなものを包摂しつつ、そのとき、その土地で生成するものを大切に調和させようとする天然菌的あり方へ。政治や、マネージメントにも当てはまりそうな話ですが、それがただの抽象論ではなく、「パン」という形で具体的に現れるタルマーリーさんの取り組みに、ますます目が離せなくなりました。(池畑索季)
榎本俊二 「ギャグマンガ家山陰移住ストーリー PART3」
あの榎本先生のマンガが読める! というのも『ちゃぶ台』の魅力だと私は声を大にして言いたい。「vol.2」に初掲載された榎本家のリアル移住ストーリーも今号でついに3回目。神奈川県から広島県三次市へ引っ越してまる8年。ラジオでカープ中継を聞くくらい、すっかり広島県人となった榎本先生が突如提唱した「広島南北問題」とは? ひとコマひとコマが濃くて面白くて、家族愛や土地への愛着が読んでいる私のほうまで染み渡ってきて、毎回ほっこりほがらかな読後感。心がポカポカするギャグマンガ。うー、たまらんです。うちの息子(小4)も大好きみたいでさっそく読んでいました。ぜひ家族みんなで回し読みしてみてください。(渡辺佑一)
近藤淳也 「賃貸物件に無垢材を使う」
以前賃貸物件を血眼で探していたとき、私の頭のなかには明確な家のイメージがありました。それは「できるだけ本物の木を使っている」「クッションフロアではない、クロスの壁紙とか貼ってない」「賃貸の」家。でも、ないんです。全然ないんです。有名不動産サイトもめっちゃ見ましたが、そのとき気づいたのは、まず大手のサイトには私が探してるような物件は載っていないことと、恐らく大多数の人は「重ねた月日が味を出す家」なんて探してないんだろうなということ。でも「無垢材の床の家」に住みたい人とか絶対に一定数いるのに、なんでやねん! わかってないわほんま! とめっちゃ思っていました。そうしたら『ちゃぶ台 Vol.4』で、見ているだけで楽しい不動産サイト「物件ファン」を運営する近藤淳也さんが、「賃貸物件に無垢材を使う」と題して、まさに私が疑問に思っていたことに応えてくれるような原稿を書いてくださったではありませんか(リクエストしたわけではありません。ミラクル!)。ええ、そんなことになっていたとは、不動産業界・・・闇・・・と思いながら、近藤さんの挑戦がもっと広がり、楽しい家が増えたらいいのになと思わずにいられません。住む家、たいせつ。(新居未希)
中村明珍 「猪突ちょっとずつ」
創刊号から連載してくださっている明珍さんの文章が好きです。先日、書籍の注文をメールでいただいたのですが、その冒頭「鳥居さま こんにちは! 田んぼから失礼します」。田んぼから本を発注する。こんなに心が沸き立つことってあるんでしょうか。夕暮れの畦でふと思い立ってメールを打つ姿が目に浮かびます。サイコー。相変わらず「百姓」としての日々を行ったり来たりされている生活をその文章から覗き見していると、島を駆け回り、多くの人と関わりながら、過去と現在さえも行ったり来たりしているような暮らしぶり。これからも変わらず変わり続けてほしいなと思います。(鳥居貴彦)
滝口悠生 「チャンドラモハン」
今回の『ちゃぶ台Vol.4』、北は札幌から南は沖縄まで、日本の各地で起こっているちょっと先の未来を捉えた一冊になりました。ただ、ここで終わらないのが今回のちゃぶ台です。なんと小説家の滝口悠生さんはアメリカのアイオワから原稿を届けてくださりました。現在アイオワ大学のインターナショナル・ライティング・プログラム(IWP)に参加中の滝口さん。そこで出会ったインドの詩人のお話です。私はこの原稿を読んで、生まれて初めて「チャンドラモハン」と口にしました。なんだか特別な気持ちになりました。そして、自分が転校生として入学した小学校1年生の時、ひとりで下校するのが心細くて、かなり勇気を出して近所に住む女の子に「一緒に帰ろう」と誘ったら、「やだ」と言われた日のことを思い出しました。誰かとの関係の途中、それを思える素敵なエッセイです。(野崎敬乃)
対談 内田樹×森田真生 「壊れゆく制度のなかで、教育は」
哲学者にして武道家の内田樹先生と、独立研究者の森田真生さんというタイプの違う知性ががっぷりと組み合い、読み応えがすごいです。対談というより往復書簡のようなボリュームの言葉を交わし合う中で、「人間と機械」「意味と無意味」「網と樹」など魅力的な二項対立が次々と出てきて、二つの焦点をもった楕円のように対話が進んでいきます。『ちゃぶ台Vol.4』の背骨と言うべきこの対談、必読です。(岡田森)
平川克美 「自分のふるさとをつくる」
「人の考えが発酵するのには時間がかかる。その時間に耐えることが大切なんだよね」――本書に収録された平川先生のインタビューには、私も同席させていただいていました。インタビューの最中、ときに1分くらいの沈黙を挟みながら、言葉を探して、選んで、じわりと語ってくださった、その場全体の雰囲気が、とても印象的でした。30年、40年という単位で、経験と思考を積み重ねてこられた先生の語りに耳を澄ませることで、発酵のただ中にある自分に住まう菌たちが、伸びやかに呼吸し出すような感覚。読者のみなさまにも、ぜひその体験を味わっていただきたいと思います。(星野友里)
益田ミリさんのエッセイに始まり、小倉ヒラクさんのロング寄稿文、近藤淳也さんの「賃貸物件に無垢材を使う」という試み、尾崎世界観さんの書き下ろし短編「祖父と」、滝口悠生さんの書き下ろしエッセイ、内田樹先生と森田真生さんの対談、仙台在住・佐藤ジュンコさんの「沖縄だより」、北海道地震の直後に執筆くださった札幌の書肆吉成・吉成さんのレポート、などなどを経て、平川克美さんへのインタビュー「自分のふるさとつくる」で終わる。すべてのページが、たまらなく面白いです。合言葉は、「お店で見つけたら迷わずレジへ!」。どうぞよろしくお願いいたします。(三島邦弘)
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どの記事も、自信を持っておすすめします。ぜひ、迷わずレジへ! また、本日2018年10月19日(金)、ミシマ社からはもう一冊の新刊が発売となります。アジカンのゴッチこと、後藤正文さんの『凍った脳みそ』。こちらもぜひ手にとってみてください。
編集部からのお知らせ
ちゃぶ台ツアー、やります!
ちゃぶ台Vol.4「発酵×経済」号の発刊を記念して、全国各地でイベントを開催予定です。
【11/7】ちゃぶ台Vol.4発刊記念 トークイベント
出演:松村圭一郎×三島邦弘
『うしろめたさの人類学』(ミシマ社)の著者でもあり、『ちゃぶ台Vol.4』には「人間の経済 商業の経済」をご寄稿くださった松村圭一郎さんをお招きして、編集長三島邦弘との対談イベントが実現します。
■開催日:2018年11月7日(水)
■場所:恵文社一乗寺店
〒606-8184京都市左京区一乗寺払殿町10
■タイトル:人間の経済をとりもどす!
■内容:『うしろめたさの人類学』でいきづまる世界に「スキマ」を空けた松村さん。年一度刊行の雑誌「ちゃぶ台」で、すでに始まっている未来の種をレポートする三島さん。ふたりが共通して求めるものに、「人間の経済」があります。「人間の経済 商品の経済」を『ちゃぶ台Vol.4』に寄稿した松村さんの考え、そして意図とは? 三島さんが雑誌づくり、出版社運営を通してめざす「経済」とは? 無二の親友でもある二人がこの日、ぞんぶんに語り合います。また、「ミニブックトーク」の時間を設け、「人間の経済」を取り戻すために必読といえる本も紹介してもらう予定です。
【11/15】香川県高松市に編集長三島邦弘が行きます!
『ちゃぶ台Vol.4』編集長三島邦弘によるトークイベントを開催します。
■開催日:2018年11月15日(木)
■場所:本屋ルヌガンガ
〒760-0050香川県高松市亀井町11番地の13 中村第二ビル1階
詳細は決定次第、お知らせいたします。
【11/16】高知県土佐町に編集長三島邦弘が行きます!
『ちゃぶ台Vol.4』の発売日に編集長三島邦弘によるトークイベントを開催します。
■開催日:2018年11月16日(金)18:30〜20:30
■場所:あこ
高知県土佐郡土佐町田井1485
■タイトル:「本」で世界を面白く。「一冊」が起こす豊かさ。
■内容:一冊の本と出会う。それが人生を変えることもある。
そんな大きな変化でなくても、日々の滋養のような効果が「紙の本」には宿っている。
そうした生命のような「一冊」を生み出し、明日の世界を一冊分面白くしようと、一冊一 冊に思いを込め出版しつづけている人がいる。 2006年10月に単身で出版社ミシマ社をたちあげた三島邦弘。彼はいま、11人のメンバーとともに、京都と東京(自由が丘)の二拠点で「原点回帰」の出版活動をおこなっている。出版業が厳しいと言われて久しいこの時代に、いったい、どのように発想をし、どのように一冊分ずつ世の中の面白みを積んでい るのか。明日、あなたが本に出会うのが今よりも一冊分わくわくするようになる、今回はそんな座談会。
【11/23】ちゃぶ台Vol.4発刊記念 トークイベント
出演:松村圭一郎×三島邦弘
さらに岡山でも、松村圭一郎さんとミシマ社代表三島邦弘による対談イベントが開催決定!
■タイトル:もういちど「近代」を考える:次の『ちゃぶ台』Vol.5はどうなるの?
■内容:雑誌『ちゃぶ台』で、つねに時代の流れのその先を見つめてきたミシマ社代表の三島邦弘さん。今春、スロウな本屋で日本の近代を問いなおした石牟礼道子作品の寺子屋をはじめた松村圭一郎さん。
20年来の旧知の仲であるお二人が、いまあらためて「近代(菌代?)」について語り合います。『ちゃぶ台 Vol.4「発酵×経済」号』が発刊されたばかりですが、お二人の目は、もう次の Vol.5 で何を世に問うかに向けられています。さて、お二人は「近代」という時代をどう乗り越えようとしているのか? 岡山の地で、はじめてその先の話があきらかに!
■開催日:2018年11月23日(金)
■場所:スロウな本屋
〒700-0807 岡山県岡山市北区南方2-9-7
ほかにも続々と計画中です。今後のちゃぶ台ツアーにぜひご期待ください!