第14回
若者は政治に興味がない? ーー2人の学生とちゃぶ台でお話しましたーー(2)
2020.03.15更新
こんにちは、デッチのヤマダです。
気候変動と政治という、自分の生活に関わってくる問題だとはわかっていつつも、ついつい見て見ぬふりをしてしまう2つの問題。この問題を「自分ごと」としてとらえ、実際に行動しているお二人に、ミシマ社代表のミシマを交え、お話ししていただきました。
(構成:山田真生)
宮崎紗矢香さん
立教大学4年生。グレタ・トゥンベリさんの訴えに共感した若者たちにより結成された環境活動団体、Fridays For Future Tokyo(以後、フライデーズ)のメンバー。大学3年生のときにスウェーデンをおとずれ、環境問題に対する意識の圧倒的な差を目の当たりにする。その後、就職活動を通じて、社会への憤りを感じていたころに、グレタさんのスピーチを聞き、共感を覚え、フライデーズのメンバーとなる。
角智春さん
東京外国語大学大学院修士課程1年生。2016年と2019年に、メキシコに在住し、先住民運動や女性の権利運動をはじめとした社会運動に参加する。みんなのミシマガジンに「すみちゃんのめひこ日記」を連載中。
同じ目的のはずなのに・・・
ミシマ 『ちゃぶ台 Vol.5「宗教×政治」号』の取材でサッカー元日本代表監督の岡田さんのお話を伺ったんです。岡田さんは昔、環境問題をずっと追っていて、世界の環境問題サミットに参加するために自費で南アフリカまで行ったりしていたんですね。そこで各環境団体の代表に話を聞くと、微妙に違いはあるものの、それぞれがそれぞれの立場で環境にとって大切なことを言っていた。だからまとまって多数派を形成すれば一気に地球環境をよくするほうへ動けるんじゃないかと提案したら、みんな口を揃えて「彼らがうちに入ってくればいいんだ」って。それは、構造としては権力と資本を結びつけてやってる人と変わらないなと思った、っておっしゃっていて。
スミ 運動の担い手同士の喧嘩は、もう、メキシコでも無限に経験しました(笑)。でも、10年20年と辛抱強く続けている人たちって、突き詰めると考え方に違いがあるとしても、だいたいの方向性さえ同じだったらお互いのことを「同志」って呼び合うんですよ。そういう共存のしかたがすごく大切だなと思います。グループが分裂してしまったときも、その結果だけを見ると悪い印象を受けるけど、「本来ばらばらな私たちが、一緒にやっていた瞬間もあった」ということを重視するほうに見方を転換したほうがいいですよね。
ミシマ 結局、権力側からしたら、色々なところで争って、お互いに潰しあってくれてるのが一番いいわけだからね。それをぜんぶ乗り越えて、ひとつの目標のために同志になろうぜ、っていうのが一番怖いわけだから。
ミヤザキ フライデーズには、世界的にそういう細かい違いを乗り越えて手を携えてやっていこうっていう機運があって。2月に東京で「学生気候危機サミット」というイベントが開催されましたが、それはフライデーズだけでなく、ほかの学生団体も一緒に企画運営して実現されました。グレタも言っていたように、これだけ世界中の若者がひとつの問題に対して一緒に立ち上がってるっていうのは、類を見ないことだと思うし、大事なことだと思います。
環境問題ではなく「宿題」として考える
ミシマ メキシコでは気候変動のことは言われてるの?
スミ 言われてます。たぶん、環境について言う人は日本よりも多いですね。日本では、私たちが小学生くらいのとき(2000年代)にエコや地球温暖化のテーマがよく取り上げられて、環境問題がブームのようになりました。でも、そのあとそんなに言われなくなった時期がありましたよね。その時期には、環境問題はテクノロジーで乗り越えていけるという論が目立ったりもして。一方でメキシコをはじめとするラテンアメリカでは、ある意味でもっと露骨に環境破壊が起きています。途上国ですから、国外の企業がどんどん入ってきて、鉱山開発や森林伐採といった資源搾取を人びとの生活領域で行ないます。テクノロジーを支える「裏側」がそこに展開している。だから環境破壊が、よりインパクトの強い現実的なものとして、多くの人の目に映っているんじゃないかなって思います。
ミシマ スミちゃんの言うように、日本における環境問題の言説はある時期を境に止まってしまったよね。一番は東日本大震災だったと思うんだけど。あと、日本経済が落ちていくことに対応しようとするなかで、環境問題に目をつぶったのもあると思う。
ミヤザキ フライデーズのメンバーは海外経験がある人が割と多くて、私も実際スウェーデンに行ったことが大きかったなって思ってます。たとえば、スウェーデンのスーパーは、環境ラベル付きの商品が大半を占めていたり、冷凍食品の陳列棚に「孫のためにすぐ扉を閉めよう」って掲示が貼られていたりするんです。バスも電車も飛行機も、すでにバイオガスが燃料になっていました。持続可能性がただのスローガンではなくて、生活の中で実現されているんですよね。でも、そういった他国の文化に触れる経験がなく、日本しか知らない人にとっては、たしかに小学生時代のブームのイメージで止まっているのかもしれないし、グレタの言っていることの実感がわかないだろうなって。去年は台風とかひどかったじゃないですか。あれも気候変動と関連してるんだよって言うと、驚く人のほうが多いですし。「環境問題」って言われると遠い存在に思えるんですけど。
だから私は、自分のやってることを環境問題だと思ってなくて、宿題だと思っているんですよね。去年、実はもう一回スウェーデン行こうって思ってたんですよ。でも、そんなことしてる場合じゃないなって思い直して。この10年でパラダイムシフトがないと、2030年には気温の変化がプラス1.5℃に到達してしまうかもしれないって言われているのに、自分の夢をのうのうと追いかけている場合じゃないなって。すべてがおじゃんになる前にどうにかしないと、自分たちの未来がなくなってしまう。そういう感覚は、グレタをはじめとする世界の若者たちから学びました。ボランティア精神ともちょっとちがう。気候変動の問題をどうにかしないと、自分のやりたいことができないなら、まずはその問題に立ち向かわなければ、という使命のようなものを感じたんです。
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デッチ・ヤマダの感想 今回の鼎談のなかで、「実感」という言葉がたびたびあがっていました。お二人は海外での経験をもとに得た実感を伝えるすべを模索してらっしゃいました。僕自身は、政治や環境問題などを喫緊の問題ととらえておらず、そのうち大きな変革が起きて解決するだろうくらいに思っている、「実感のない」人間でした。しかし、とくに気候変動の問題に関しては、次の10年のうちになにか大きな手を打たなければ取り返しのつかないことになるということを聞き、自分に大きく関わっている問題なのだと急に気づきました。このように現状をしっかりと知ることが、自分のなかに「実感」を生み出す第一歩なのではないかと感じました。
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【サポーター期間】2020年4月1日~2021年3月31日
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毎月ミシマ社から贈り物が届きます。以下の特典を少しずつ分けて、一年間お届けします。
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* 紙版ミシマガジン(非売品の雑誌。年2回発行・・・の予定です!)
*『ちゃぶ台』をはじめとした、2020年度のミシマ社新刊4〜5冊(何が届くかはお楽しみに!)
* ミシマ社手帳などのオリジナルグッズ
* サポーターさん限定イベントのご案内
* ミシマ社主催イベントの割引
・・・などを予定しております!(※特典の内容は変更になる場合もございます。ご了承くださいませ。)
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出版関係者にとどまらず、個人の方から企業の方まで、本取り組みを支えてくださる方々を募集いたします。
率直に申しますと、今回のシステムをしっかりと世に定着させるためには、最初の一年を乗り切れるかどうかが大きなポイントになります。具体的には、半年の間に、少なくとも1500万円を集める必要があると思っております。
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