月刊ちゃぶ台

第31回

本日発売!編集部が『ちゃぶ台10』をあつあつに語る(1)

2022.12.10更新

本日、『ちゃぶ台10』が書店先行発売を迎えました。2015年に創刊、2020年にリニューアル創刊した「生活者のための総合雑誌」。2022年12月5日の朝。届きたての『ちゃぶ台10』を手にした編集長の三島が突如、語り出し――。話すなかで浮かび上がってきたこの雑誌への思いを、お届けします。

(話し手:三島邦弘、聞き手:編集チーム野崎・角)

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ちゃぶ台10が完成しました!

いや〜みなさん、『ちゃぶ台10』できましたね。どうですか? めちゃくちゃいい仕上がりですね。これまで、創刊号からずっと『ちゃぶ台』のことを「生き物だ」と言ってきましたけど、今回の10号は、もっとも生命力の高い生き物が生まれたなと思っています。

『ちゃぶ台』は、つくり方自体が、料理のあつあつ状態をそのままお皿にのせているという感じです。あくまでも、日常で食べる「家の料理」。ですから、「お弁当」や「外食」でいただくお料理とはちょっと違うのです。

ミシマ社では、そこからさらに「整った料理」というのは、単行本というかたちでつくっていて、松村圭一郎さんの『くらしのアナキズム』や藤原辰史さんの『縁食論』、中村明珍さんの『ダンス・イン・ザ・ファーム』などになっています。

だから『ちゃぶ台』は、できて湯気ほやほやでそのまま口に入れたら火傷するぜ、というレベル感で挑戦しています。あつあつ。

生活者のための総合雑誌

そしてなんといっても「生活者のための総合雑誌」です。『ちゃぶ台10』は、この意味がもっとも出ている号でもあるんじゃないでしょうか。

ちゃぶ台を創刊した2015年のとき、今は総合雑誌が成り立たないと言われていて、二十数年前に僕が出版社に入った頃からすでに、総合雑誌が休刊や廃刊になるということが起きていました。

つまり、時代だとか、教養・知性とか、そういう括りでやれるものを総合的に一誌で論じるなんて不可能だ、成り立たなくなっている、ということが言われ、事実、部数的にも成り立たなくなっていました。

じゃあなぜ今「総合雑誌」なの?

これまでの総合雑誌は、いわゆる知識人といわれる、すでにいろいろなことをわかっている人たちが、上から、まだそこに気づいていない、わかっていない人たちに「与える」というかたちだったんだろうと思います。

出版社で働きはじめた頃からいち新人編集者として、そういう総合雑誌に距離を感じていました。が、一方で僕にとっての、あるいは自分の母親や父親や毎日生きることに必死な人たちにとって必要な読み物は、やっぱり専門書ではなくて、ありとあらゆる角度から扱ってくれている雑誌があってもいいんじゃないかと感じていた。ということを今この瞬間、話しながら思い出しました。

そういうことが、「生活者のための総合雑誌」という言葉に行き着いたんだと思っています。

わからないけど、知っておく必要がありそう

これまで毎回いろんな特集をやってきて、今回であれば「母語ボゴボゴ、土っ!」という特集にしましたが、編集者たちは、母語や土のことをわかっていて、これをみなさんこの時代にわかってくださいね、と読者に与える態度では企画・編集をしていません。

むしろ、わからないんだけれどもなんかこれを知っておく必要があるという直感のもと、走り続けた。少なくとも半年間という期間、そこに向けておもに編集メンバー4人と営業メンバーが、求め、探り続けたかたちが今回の『ちゃぶ台10』になっています。

そして、編集者たちがわからないものに、著者の方々も「この人たちの依頼はなんだろう」と思いながらも全力でみなさん応えてくださった。著者の方たちも、編集者に対して、じゃあ教えてあげようという視点ではなくて、一緒に、たしかにそれ気になる、というところで同じ目線から言葉を求め、そして書き記してくれた集積が今回の号になっているんじゃないかと思います。

『ちゃぶ台10』は、まさに総合雑誌、いまの分類で言ったら、人文、文芸、ノンフィクション、評論、などのジャンルを横断的にまたがって書かれています。その具体は次回、編集メンバーがします。ご期待ください!(つづく)

『ちゃぶ台10』
特集:母語ボゴボゴ、土っ! 目次

益田ミリ「英語と私」(エッセイ)
ウスビ・サコ「サコ先生、『母語』ってなんですか?」(インタビュー)

津村記久子「オブラートは永遠に」(エッセイ)
伊藤亜紗「会議の研究――話に花が咲く」(論考)
三好愛「近寄りたいのに」(絵と言葉)
斉藤倫「クリップの王さま」(児童文学)
いしいしんじ「こんにちは」(小説)
齋藤陽道「恩言語を宿らせる」(フォトエッセイ)
土井善晴「料理する動物」(随筆)
榎本俊二「ギャグマンガ家山陰移住ストーリーPART9」(漫画)
藤原辰史「民草論――山崎佳代子の言葉に触れて」(論考)
作・益田ミリ/絵・平澤一平「秋田犬 AKITAINU」(漫画)
書店、再び共有地(レポート)
SANJO PUBLISHING〈新潟・三条〉
本屋ルヌガンガ〈香川・高松〉
中村明珍「ボゴ・ダンス――日本語の話者としての」(エッセイ)
宮田正樹「土と私のあいだ」(インタビュー)
滝口悠生「泥棒と祭壇」(小説)
内田健太郎「はじまりの言葉」(エッセイ)
寄藤文平「未来の描き方 その4」(絵と言葉)
三島邦弘(ブックレビュー)
編集後記

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ミシマガ編集部
(みしまがへんしゅうぶ)

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