第35回
『ちゃぶ台11』、ついに表紙と読み物をご紹介します!
2023.05.21更新
こんにちは。『ちゃぶ台11』の校了を目前にし、燃え上がっている編集チームのスミです。
今号のリアル書店先行発売日は、6月9日(金)に決定しました! (ネット書店を含む全店での公式発売日は、6月14日(水)です。)
今回の特集は、「自分の中にぼけを持て」。
デザインも内容も完成に近づいた今、編集部の企画当初の予測をはるかに超えて、前代未聞の「ぼけ」号が出来上がりつつあります。
本日のミシマガは、そんな完成間近の『ちゃぶ台11』についてレポートいたします!
*編集長のミシマが今号の特集に寄せて綴った「巻頭文」も、こちらからお読みいただけたらうれしいです。
表紙は、平野愛さんの写真!
こちらをご覧ください!
本文の表紙(装丁ラフ)が公開となりました。
デザインは、第6号から本誌の装丁を手掛けてくださっている、tentoの漆原悠一さん。そして、表紙写真をご担当いただいたのは、写真家の平野愛さんです!
バックナンバーとはまたガラッと雰囲気の違う、とても素敵な表紙。
これまでも、榎本俊二さん(左)や益田ミリさん(右)といった方々に、装画を手掛けていただきました。
こちらは、漆原さんとのデザイン会議の模様です。
「ふれる、もれる、すくわれる」「『さびしい』が、ひっくり返る」、そして、今回の「自分の中にぼけを持て」など、ある意味でかなり無茶ぶりともいえる特集名にそって、毎号、編集部もびっくりのすばらしいデザインを考えてくださっています!
漆原さん(左)と編集長ミシマ(右)
そんな漆原さんと私たち編集部が、今号の表紙をお願いしたい! と願ったのが平野愛さんでした。
私たちは、今号で「ぼけ」の力にあらゆる角度から迫ってみたいと考えたとき、「写真家さんにとって、『ぼけ』ってどんなものだろう?」という素朴な疑問を持ちました。
そこで、平野愛さんにご寄稿を依頼したのです。
平野さんは2023年4月に新著『moving days』(誠光社)を上梓されました。
平野さんには、2021年夏と2022年春の2回、ミシマ社でオンラインの写真講座をしていただいていました。
2022年春に開催した「大人のためのスプリング講座 "この一枚を撮る"」
講座では、写真の超初心者である私たちに向けて、スマホやカメラを使って、日常の忘れたくない一瞬を素敵な写真に残しておくための「基本のき」を教えていただきました。
ミシマ社オフィスの一室にて、メンバーをモデルに撮影の実演をしていただいたのですが、背景のほどよい整え方、写る人への声がけのテンポなど、教えていただくひとつひとつのポイントが、「こんなふうにするのか!」と目から鱗のことばかり。
講座の様子。撮影前にティッシュ箱を片付けようとするミシマ社メンバー
とくに、撮影前に背景を整えている最中、平野さんが「ティッシュは生活感があるから好きなんです。片づけずに残しましょう」とおっしゃったのがとても印象的でした。
そんな講座を体験していた私たちは、写真を撮るときも、ピントをあわせたり、見栄えをよくしようとしたりするだけではなく、ある種の「余白」や「ぼけ」が重要なのでは? と、ふと感じたのです。
そこで平野さんに伺ってみると、「そのとおりです!」とのお答えが。
どんなふうに写真を撮っているのか、ぜひもっと教えてください! とお願いし、日ごろの撮影や作品づくりで大切にされていることを綴ったエッセイ「自分の中にぼけを持つための三箇条」をご寄稿いただきました。
目次を公開します!
今、社会で問題視されたり、ダメなものと思われがちな「ぼけ」を、ポジティブに捉えなおしたい。その思いで企画した今号は、ほかにもたくさんの著者の方々にご寄稿いただきました。
『ちゃぶ台11 特集:自分の中にぼけを持て』目次
村瀨孝生 随筆「僕の老い方研究」
益田ミリ 漫画「桜の下で」
斉藤倫 児童文学「ひぐれのうえき」
平野愛 エッセイ「自分の中にぼけを持つための三箇条」
津村記久子 エッセイ「共にぼける」
土井善晴 随筆「パンドラの箱を開けるな!」
上田誠 エッセイ「自分の中にぼけを持つための三箇条」
バッキー井上 コラム「あとはオボロ、オボロ影。そしてまた俺は、真俯瞰にいる。」
伊藤亜紗 論考「会議の研究(2) 建築現場の青空会議」
若林理砂 エッセイ「自分の中にぼけを持つための三箇条」
益田ミリ・平澤一平 漫画「宿題」
藤原辰史 論考「蛇と民の叙事詩」
齋藤陽道 フォトエッセイ「一枚と一枚のあいだに、ちいさな祈りがこもるとき」
榎本俊二 漫画「ギャグマンガ家山陰移住ストーリー PART10」
山極壽一 インタビュー「山極先生、ゴリラは『ぼけ』るんですか?」
尾崎世界観 小説「カット」
内田健太郎 エッセイ「メメント森田さん」
「書店、再び共有地」(レポート)
恭文堂書店〈東京・学芸大学〉
句読点〈島根・出雲〉
中村明珍 エッセイ「いぶしてこそ人生」
滝口悠生 小説「御身と御前」
寄藤文平 絵と言葉「動勢の話。未来の描き方その5」
三島邦弘 ブックレビュー
編集後記
老い、ゴリラ、死、地方移住、いろんな職業を持つ、写真、演劇、呼吸、ごきげんに暮らす、酒を飲む、店を続ける、コミュニケーション、祈り、他者と共に生きる・・・。特集の「ぼけ」をめぐって、さまざまな切り口の読み物が集まりました。
読めば心身がふわ~っとほぐれ、すこし、いえ、かなり息がしやすくなるはずです!
たとえば・・・
自分の中に「ぼけ」を吹き込む読み物をご紹介!
「ぼけ」の知られざる力に触れ、自分の中に「ぼけ」を吹き込む。そんな読み物の一部をご紹介します!
*「山極先生、ゴリラは『ぼけ』るんですか?」
ゴリラ研究の第一人者であり、京都大学前総長の山極壽一さんのインタビューです。
そもそも、「ぼけ」って人間だけのもの? という問いを持った私たちは、霊長類と人類史のエキスパートである山極先生にお話を伺うことにしました。
先生いわく、ゴリラもぼける(!)。でも、そのぼけ方は、人間とはぜんぜん違って・・・。
人類にとって、老いってなんだろう? 経済や産業の価値に拠らない、豊かな「時間」とは? 目の前にいる相手との付き合い方・・・などなど、ゴリラの話を起点に、話はどんどん深まっていきます。
*「僕の老い方研究」
本特集の原点である書籍『ぼけと利他』の著者・村瀨孝生さんによる随筆です。
特別養護老人ホーム「宅老所よりあい」の代表を務める村瀨さんは、35年間にわたって老人介護の現場に身を置くなかで、「老い方というものがあるのかもしれない」と感じるようになりました。
そして、還暦を目前にし、自分自身の老い方についても思いを馳せるようになった今、ぼけを「試練が小さく、救いの大きい」ものにするための鍵は、「始末のよさ」にあるのではないかと考えます。
始末のよい老いとは? こうしてはじまったのが、「僕の老い方研究」です。
第1回では、村瀨さんがこれまで付き合ってきたお年寄りたちの記憶を掘り起こします。テルさん、ヤエさん、トミオさん、101歳のお爺さん・・・ぼけの深まったお年寄りたちの、最高にチャーミングで鮮烈なエピソードが綴られています。
*「自分の中にぼけを持つための三箇条」
冒頭でご紹介した写真家の平野愛さん、そして、劇作家の上田誠さんと、鍼灸師の若林理沙さんに、「自分の中にぼけを持つための三箇条」をテーマにエッセイを綴っていただきました。
それぞれの分野で活躍されている三人は、どんなふうにして自分の中に「ぼけ」を生み出しているのでしょうか?
これがもう・・・、最高におもしろく、胸に刻んで、創作、仕事、人間関係、生活、あらゆる場面ですぐに生かしたい金言ばかり。
私個人は、「ああ、だから自分は無駄にキリキリ、イライラしてしまっていたんだ」「だからうまくいかなかったんだ」とわが身を省みるとともに、「今日から心の中でこれを唱えよう!」と思える、薬のような、お守りのような言葉にたくさん出会いました。
・・・まだまだご紹介したい読み物がたくさんあるのですが、ぜひ、実際に雑誌をお手に取って、楽しんでいただけましたらうれしいです。
『ちゃぶ台11』は、あと20日ほどで発刊です!
今後もミシマガで今号についての情報をお伝えしていきます。どうぞお楽しみに。