第14回
若者は政治に興味がない? ーー2人の学生とちゃぶ台でお話しましたーー(1)
2020.03.14更新
こんにちは。デッチのヤマダです。
気候変動と政治という、自分の生活に関わってくる問題だとはわかっていつつも、ついつい見て見ぬふりをしてしまう2つの問題。この問題を「自分ごと」としてとらえ、実際に行動しているお二人に、ミシマ社代表のミシマを交え、お話ししていただきました。
宮崎紗矢香さん
立教大学4年生。グレタ・トゥンベリさんの訴えに共感した若者たちにより結成された環境活動団体、Fridays For Future Tokyo(以後、フライデーズ)のメンバー。大学3年生のときにスウェーデンをおとずれ、環境問題に対する意識の圧倒的な差を目の当たりにする。その後、就職活動を通じて、社会への憤りを感じていたころに、グレタさんのスピーチを聞き、共感を覚え、フライデーズのメンバーとなる。
角智春さん
東京外国語大学大学院修士課程1年生。2016年と2019年に、メキシコに在住し、先住民運動や女性の権利運動をはじめとした社会運動に参加する。みんなのミシマガジンに「すみちゃんのめひこ日記」を連載中。
学生にとっての政治
ミシマ 昨日(2月2日)ちょうど京都市長選があったから、政治の話からいっていいですか? 学生って選挙に行くっていう機運はあります? 「行ってもあんまり変わんないんじゃない」みたいな空気が強い? 若い人たちにとって、「自分たちの行動によって社会がよくなっていく可能性がある」という感覚はありますか。
ミヤザキ 私はぶっちゃけ、政治には全く関心がなくて、だから自分がフライデーズでいわゆる「運動」をしていることが不思議なんです。でも、フライデーズで「気候非常事態宣言(気候変動を最大の脅威と捉え、政策的に取り組むべき最優先の事項であると議会等が宣言すること)」を求める請願書を去年の9月に東京都議会に出して、そこから私は、わけもわからず都議会の中に巻き込まれていったというか。
請願書とかも、政治に関心があったから出したわけではなくて、アルバイト先での経験とかをもとに考えていたことを文章にした結果、それが都議会に行くというかたちになった。都議会にはいろんな大人のしがらみとかもあると思うのですが、私は政治のことを右も左もわかっていなかったからこそ、逆に強かったというか。とにかく自分が伝えたいことを議員さんたちに話していって。そうしたら、政治的立場を別として話を聞いてくれた議員さんもいて。
ミシマ 自分の思ってることをダイレクトに伝えようとしたら、最後にすこしは届いたかんじが出てきたってことだよね。それは一番の民主政治だよね。
スミ 私は投票に行っていますし、政治にも関心があります。でも自分がそういう考えに至ったのは、「あのタイミングであの本をたまたま読んだから」とか、偶然に拠っている部分が大きい気がしていて。そのようなきっかけがなかった学生が、政治に関心を持たないことは、ある意味当然だろうなと思っています。共感するというか、自分もそうなっていたかもしれない、と。あと、私は自分が関心のあるテーマについて人とイベントや交流会をやることもあるんですが、その場を超えて動きが広がっていくことはどうしても少なくて。ミヤザキさんみたいに実際の行政と交渉したことがないので、結局は自分も政治とあんまり繋がっていないんじゃないか、と感じたりもします。
メキシコから見た日本
ミシマ ところでメキシコの若い子たちはどんな感じなの?
スミ 民衆の政治意識という点で言えば、やっぱりみんな政治のことはよく話題にしますし、政治家をいじったジョークも言うし、何か少しでもおかしいと思ったらデモに行きますよね。でもそれには、あまりに政府がひどいからみんなが問題に気づいて、行動が生まれている、という側面もあると思います。
ミシマ メキシコから見たら、いまの日本の状況ってどんなふうに映ると思う?
スミ すばらしい国だと思われるかもしれませんね(笑)。メキシコは政府の腐敗がすごいし、警察や軍が犯罪組織と公然と結託して、大量の殺人や拉致に加担しています。でも、だからそこはジレンマで。メキシコの人たちは問題があるとみんな立ち上がるけど、日本みたいな状況になれば、もしかしたら今のように政治に関わろうとしないかもしれないな、と。
ミシマ ある種日本は、政治もそのほかのものも、どんどん「グローバル」の基準まで下がっていこうとしていると思うんです。世界のほとんどの国は独裁で、民主政治がきちんと機能している国っていうのは少ないわけですからね。でも、だから日本はこのままでいい、という考えに落ち着いてしまうのもちがう。いまの日本の問題って、考える力を手放して現状に甘んじる姿勢からも生じている気がします。変えないといけないことが社会のあちこちに出てきているなかで、「沈んでいきつつもいまはまだ動いてるんだから、何か変えることで沈没するリスクを背負うよりは、変えずにいくのがいいんじゃないか」と考えている人が多いのだろうと思います。
実感に近い言葉も必要
ミシマ 選挙も気候変動にも、根本には同じ問題がひそんでると思います。何十万票とある中の自分の1票で変わるわけがない、自分一人の行動で地球の環境がよくなることはない、という具合に。だけど、数学ブックトークin東京(2月2日)で森田真生さんが言っていたように、「罪(ギルティ)と責任(レスポンシビリティ)はちがう」というのが大切な考え方だと思うんです。例えば、自分が一度車に乗っただけで気候が変動することはまずないんだけど、その積み重ねが10万年後の地球に影響を及ぼすことは明らかですよね。私たちの生活はそうしたことと無関係ではないから、「責任」はあるんだけど、でもいつも「罪」を感じる必要はない。自分の1票はささやかだけど政治に影響するし、車に乗るってこともそう。でも、それによって全てが変わるっていう考えは、自分を過大視しすぎ。良いことと悪いことのあいだを揺れ動きながら人間があることをわかったうえで、問題に向き合う姿勢が大切です。
スミ 自分を過大視しない、というのは重要だと思います。社会運動には、どれだけ非論理的であろうと未来への前向きな想像力とか感動的な言葉って絶対に必要だと思うんですけど、それと同じくらいに、実感により近い言葉が要ると思っていて。「いいことをしよう」「変えよう」っていう前向きな理念によって自分の行動を支えるのは大事ですが、それだけでいくと、それに当てはまらないものごとが悪ということなったり、過度な罪悪感が生まれたりする。自分自身のこともふくめて、なにかを追い込んでいるような気がして。
ミシマ そうだよね。そういうときに想像力を働かせながらやっていかないといけなくて。日々の生活だけでいっぱいいっぱいなのに、政治や環境問題について積極的に考える余裕はない、っていう人もいるわけじゃない。そこで、やってない人は偉くない、としてしまったら、逆に、認められてないとか、排除されてるという感情を生む。だから、無理やり行動してなくてもいいんだよってなかで、でも意識がすこしずつ別の方向に向いていく流れをどう作るかだよね。
ミヤザキ それは本当に肝だな、と思います。私自身も身に覚えがありますが、活動にのめり込むと、二項対立的な思考にどうしても陥ってしまいがちなんですよね。たとえば、化石燃料の使用を問題視するにしても、それが自分にとってどんなに正義でも、相手にとっては受け入れられないことがあるのが現実で。それを絶対にダメとしてしまうと、いくら正しくても、実感がわかない人との距離を生んでしまうし、自分が一番苦しくなってしまう。私たちのような立場で活動している人こそ、認識する必要のある点だと思いますね。
(つづく)
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* ミシマ社主催イベントの割引
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