月刊ちゃぶ台

第26回

『ちゃぶ台9』を発刊します。特集発表!

2022.04.19更新

 ミシマ社が半年に一度発刊している、生活者のための総合雑誌『ちゃぶ台』

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 最新刊『ちゃぶ台9』の発刊まで、いよいよあと1カ月となりました。5月27日(金)からリアル書店先行発売、そして、5月30日(月)にネット書店を含むすべてのお店での発売となります。

 2020年11月にリニューアル発刊して以来、「非常時代を明るく生きる」(6号)、「ふれる、もれる、すくわれる」(7号)、「『さびしい』が、ひっくり返る」(8号)という特集を組んできました。9号の特集は・・・

書店、再び共有地

 普段から直取引を基本として、本屋さんとお付き合いさせていただいてきたミシマ社が初めて取り組む、書店特集です。きっかけは、2月に刊行となった平川克美さんの著書『共有地をつくる』。現代に生きる「共有地」たりうる本屋さんを渾身取材してきました。

編集長より 特集「書店、再び共有地」に寄せて

社会を安定的に持続させてゆくためには、社会の片隅にでもいいから、社会的共有資本としての共有地、誰のものでもないが、誰もが立ち入り耕すことのできる共有地があると、わたしたちの生活はずいぶん風通しの良いものになるのではないか
――平川克美『共有地をつくる』

 この一文のあと平川さんは、「国家のものでもないし、『私』のものでもない」、「自分一人で生きてゆくのではなく、かといって誰かにもたれかかって生きているわけでもない場所」と共有地を定義づけます。たとえば、喫茶店、銭湯、居酒屋、縁側など。

 これを読んだときすぐに、間違いなく書店もそうだ、と直感しました。なぜなら、私たち(ミシマ社)は書店さんと日々、直取引をおこなうなかで、書店という場が読者、のみならず地域の人たちにとってどんどん「共有地化」しているのを感じていたからです。

 いえ、なにも急に起こった現象ではありません。むしろ逆で、かつてはほとんどすべての書店がそうだった。そして、一部はそうでなくなっていた。が、いま再び共有地となっている本屋さんが次々と現れている。同時にその姿はかつてと同じではない。つまり、強すぎる地縁や共同体意識などから解放されてある。

 かつてあった、ということは今もできるという裏返し。
 かつて、と違うかたちなのは、現代社会が希求するかたちへ変形したということ。
 現代の共有地はこうしたふたつの希望を抱えて現出してきつつあるのではないでしょうか。

 本特集では、現代に生きる共有地たりうる本屋さんを、普段よりお付き合いさせていただいているミシマ社の営業メンバーたちが取材しました。

本誌編集長 三島邦弘

 今回の特集にご登場くださったのは、こちらの10店舗です。

◎Seesaw Books(北海道・札幌)
 行き場を失った人のシェルターになる書店

◎ブックカフェ「フルハウス」(福島・南相馬)
 ただそこに居ることができる"魂の避難場所"

栞日しおりび(長野・松本)
 自分のスタバをつくりたかった!?

◎Antenna Books & Cafe ココシバ(埼玉・川口)
 移民の町で

◎ポルベニールブックストア(神奈川・鎌倉)
 「雑談懇親会」を開催する、町に開かれた本屋

◎ブックハウスひびうた(三重・津)
 マイノリティの居場所として

◎毎日食堂/MAINICHI STORE(兵庫・南あわじ)
 買い物で社会を変える

◎ウィー東城店(広島・庄原)
 お客さんの要望を聞くうちに、よろず屋に

◎汽水空港(鳥取・東伯)
 「食える公園」のある本屋

◎うなぎBOOKS 旧塚本邸(福岡・八女)
 景観保存と、外と内をつなぐ架け橋

そして、特別対談も収録いたします。

◎特集対談
平川克美×本屋「Title」店主 辻山良雄「小商いをはじめたら、共有地ができてしまった」

***

 それぞれの見出しタイトル(キャッチコピー)から一目瞭然ですが、北海道から九州まで、各地で「本屋」のイメージを大きく揺さぶり、いっそう豊かなものにする試みを続けている方々にご登場いただきました。
 今号は、これまで編集チームを中心におこなってきた雑誌づくりを一新。編集長・ミシマの言葉にもあった通り、営業チームのメンバーが全国各地へ取材に行ってきました。
 さまざまな人や言葉が行き交い、町の文化の中心地にもなりうる書店には、「共有地」の可能性が詰まっているに違いない。そんな予感のもとに取材がスタートしたわけですが、実際に営業チームから上がった原稿を見て、編集チームはしばし呆然。そして、なにこれ!? おもしろすぎる! と。
 シェルターを存続させるために「本屋」という形態を選んだお店。移民が集まる町で、あくまで「偶然に」、そして現実的に、クルドの人びとと関わりつづけているお店。さらには「スタバを目指す」「商社としてインドに進出したい」といった、私たちの予想を気持ちよく粉々に打ち砕く、しなやかな現場の声も聴こえてきました。

 たくさんのお店を取材させていただいた自由が丘の営業・スガは、熱くこう話します。

取材を終えて

 私も営業メンバーとして、本屋さんに取材してまいりました。普段からお世話になっている書店員さんたちとはいえ、書店が営業中の時間に長話はできないもの。今回は取材としてお時間をいただきながら、いつもより掘り下げたお話を、ときには本以外の活動についてまで伺い、いち営業としても本屋さんの考えを知ることができる、貴重な時間になりました。その後も書店員さん、そして編集チームと相談しながら、「確かに書店は町に欠かせない共有地だった」と告げる、興味深いレポートができたと自負しております。

 取材したどちらの書店も、予想外の形で「共有地」になっていました。決して奇抜な活動をしているわけではなく、人と人をつなげるという特性を持つ「本」を、書店員さんたちがみな大事にしているからこそ、さまざまな形でいきいきとした共有地を築かれている。その様子を目にして、自分の書店や本の見方が急速に変わるとともに、そんな場所が全国にあるという事実に元気をもらっています。

営業チーム 須賀紘也

おもしろい読み物ぞくぞく!

特集以外にも、本当におもしろい読み物がぞくぞく集まっています。ぜひ、あわせてお楽しみいただけたらうれしいです。

益田ミリ「いつもの今日」(漫画)
津村記久子「西京極の共有地」(エッセイ)
三好愛「でてきたよ」(絵と言葉)
中村明珍「何様ランド――共有地 in 周防大島」(エッセイ)
尾崎世界観(小説)
内田健太郎「ゆるやかな共有地」(エッセイ)
高橋久美子・渡邉麻里子「怒られの二人――それでも今、行動する理由」(対談)
滝口悠生「勝手と昼寝」(小説)
齋藤陽道「溶けて在る」(フォトエッセイ)
斉藤倫「ゆっくりながれぼし」(児童文学)
前田エマ「高校受験」(エッセイ)
土井善晴「おいしいもの」(随筆)
榎本俊二「ギャグマンガ家山陰移住ストーリー PART8」(漫画)
藤原辰史「シェアの痛みから考える」(論考)
松村圭一郎「『共有地の悲劇』が起きない理由」(論考)
益田ミリ・平澤一平「モギーさん郵便です」(漫画)
松嶋健「基盤的コミュニズムをめぐる断章――〈縁〉と多孔性」(論考)
寄藤文平「位置の話。 未来の描き方 その3」(絵と言葉)
編集後記

バックナンバーはこちら

『ちゃぶ台9』は、5月27日(金)からリアル書店先行発売、5月30日(月)にネット書店を含むすべてのお店での発売となります。
 現在、メンバー一同で心を込めて、怒涛の制作中です。ぜひ、お楽しみに!

ミシマガ編集部
(みしまがへんしゅうぶ)

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