月刊ちゃぶ台

第32回

編集部が『ちゃぶ台10』をあつあつに語る(2)

2022.12.12更新

 こんにちは! ミシマ社編集チームです。一昨日、『ちゃぶ台10』が書店先行発売日を迎えました。
 本誌は「生活者のための総合雑誌」を謳っています。生活者×総合雑誌って、どういうこと? そのあり方を、毎号、さまざまな特集や読み物を通じて実験してきました。(この言葉に込めた編集長の思いは、こちらから)

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 『ちゃぶ台』最大の特徴のひとつは、文芸、人文、ノンフィクション、評論といった、雑誌の世界で常識であるはずの分類をはるかに飛び越えて、多様な読み物が一誌に集まっていることです。本日は、そんなジャンルを横断して言葉を届ける『ちゃぶ台』の魅力をお伝えします!

「直感」から特集を組んだら・・・

発刊したてホヤホヤの『ちゃぶ台10』。その表紙には・・・。

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 さまざまな分野で執筆・表現されている著者の方々の名前が並んでいます。

 そして、今号の特集は「母語ボゴボゴ、土っ!」。

 12月10日(土)掲載の記事で編集長の三島が述べているように、私たち編集チームが「わからないんだけれどもなんかこれを知っておく必要がある」という熱い直感からこの特集を掲げ、さまざまな方へ取材や原稿依頼をしたところ、著者のみなさんも、「たしかにそれ気になる」といったように同じ目線から言葉を求め、綴ってくださいました。

 こうして集まった読み物が、こちらです。

【エッセイ】 益田ミリ「英語とわたし」
【インタビュー】 ウスビ・サコ「サコ先生、『母語』ってなんですか?」
【エッセイ】 津村記久子「オブラートは永遠に」
【論考】 伊藤亜紗「会議の研究――話に花が咲く」
【絵と言葉】 三好愛「近寄りたいのに」
【児童文学】 斉藤倫「クリップの王さま」
【小説】 いしいしんじ「こんにちは」
【フォトエッセイ】 齋藤陽道「恩言語を宿らせる」
【随筆】 土井善晴「料理する動物」
【漫画】 榎本俊二「ギャグマンガ家山陰移住ストーリーPART9」
【論考】 藤原辰史「民草論――山崎佳代子の言葉に触れて」
【漫画】 作・益田ミリ/絵・平澤一平「秋田犬 AKITAINU」
【レポート】 書店、再び共有地
  SANJO PUBLISHING〈新潟・三条〉
  本屋ルヌガンガ〈香川・高松〉
【エッセイ】 中村明珍「ボゴ・ダンス――日本語の話者としての」
【インタビュー】 宮田正樹「土と私のあいだ」
【小説】 滝口悠生「泥棒と祭壇」
【エッセイ】 内田健太郎「はじまりの言葉」
【絵と言葉】 寄藤文平「焦点の話。ーー未来の描き方 その4」
【ブックレビュー】 三島邦弘

 それでは、それぞれのジャンルや読み物が具体的にどんなものか、ご紹介いたします!

いま最も話を聞きたい方にインタビュー

『ちゃぶ台』は創刊以来、おもしろいことが起きているホットな現場へ赴き、会いたい方に話を聞き、全身で体験する「取材」を、ひとつの柱にしてきました。

 今回「母語ボゴボゴ、土っ!」を特集するにあたって、編集部が会いたいと切望したのが、「言葉」の達人であるウスビ・サコ先生と、「土」の達人である宮田正樹さんです。

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「母語」は大事、・・・である気がするものの、そもそも母語ってなんだろう? という疑問を抱えていた私たちは、オンラインイベントMSLive!「ちゃぶ台編集室」にサコ先生をお招きし、公開インタビューの形でお話を聞きました。
 マリ共和国出身で、日本で30年以上暮らし、6~7つの言語を話し、日本の大学で初めてのアフリカ出身の学長になったサコ先生。「英語を上手に話す」とか「グローバルな教育」といった話題からはいちど距離をおき、自分たちの生活の足元から、文化を身につけることや言葉を使うことの楽しさについて考えてみました。

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(母国語、国籍、アイデンティティなどについて、私たちのイメージを次々と覆すサコ先生のツッコミを、紙上再現!)

 もうひとつ、ぜひとも取り上げたかったのが、『ちゃぶ台』が第一号以来ずっと取材を続けている周防大島でした。
 島の農家・宮田正樹さんは、あるときこうおっしゃっていたのです。「野菜どうしは、離れて生えていても、根と根でコミュニケーションを取っている、そう感じるようになりました」。

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 自然農の方法で野菜を育て、並々ならぬ愛をもって土と接し、微生物のはたらきや生き物たちの「言葉」にずっと触れている宮田さんにお話を伺いました。農業の最前線、日本の地方の今を知るうえでも欠かせないレポートです。

話題の人文書の著者が連載中!

 ちゃぶ台には、いま話題の人文書の著者も寄稿くださっています。

 11月に『体はゆく』(文藝春秋)を上梓された美学者・伊藤亜紗さん。大反響を呼んだミシマガジンでの往復書簡が『ぼけと利他』として書籍化されましたが、今号より新たな連載がはじまります!

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 その名も、「会議の研究」。
 伊藤さんは、現代のさまざまな会議を観察したり、過去に行われた歴史的会議を参照したりしながら、「よい会議とは何か」を考えます。私たちが日頃、職場や学校で行っているやりとりは、微妙な駆け引きによって変化する「生モノ」のコミュニケーションであり、それが実は「民主主義とは何か」という問いへのヒントになるかもしれない。そう考える伊藤さんが最初に潜り込んだのは、ある育児系月刊誌の編集会議でした。

tamikusa.jpg(藤原辰史さんの論考は、榎本俊二さんの漫画と隣り合っています。これも雑誌ならではのおもしろさ!)

『歴史の屑拾い』(講談社)、『植物考』(生きのびるブックス)が続けて刊行となった歴史学者の藤原辰史さんも、「民」(たみ)をテーマとした論考を連載中です。
 今回のタイトルは「民草論」。旧ユーゴスラヴィアのベオグラードに暮らす詩人・山崎佳代子の文章を引用し、民の生命力を草にたとえた「民草」(たみくさ、たみぐさ)という言葉を糸口に、戦火に生きる市井の人びとのことを書かれています。どのような状況でもパンを分かちあい、言葉も分かちあい、生活に根を張って生きる人びとの「折れそうで折れない」つよさを綴った本エッセイは、ぜひ『中学生から知りたいウクライナのこと』(ミシマ社)とも合わせて読んでいただきたいです。

 そして、『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)、『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮社)、『ええかげん論』(ミシマ社)などが大きな話題を呼び、お茶の間の誰もが知っているといっても過言ではない料理研究家の土井善晴さん。土井先生にも『ちゃぶ台6』より長編の随筆を連載いただいています。
 今回は「料理する動物」について。「料理したことで私たちは人間になった」。「一汁一菜」に続く、土井先生の新たな料理論です。

みんなで言葉を味わい、楽しめる文芸作品

 最後に、世代を超えて言葉を味わえる小説をご紹介します。

『ポエトリー・ドッグス』(講談社)、『私立探検家学園』シリーズ(福音館書店)、『にだんべっど』(あかね書房)などの著者・斉藤倫さんは、『ちゃぶ台8』から登場くださっています。ちゃぶ台を、どんな生活の場にも溶け込み、どんな年齢や立場の人にも楽しんで読んでもらえるものにしたい。その強い思いから、「児童文学」というジャンルで、斉藤さんに寄稿をいただいています。
 子どもにも、おとなにも、ゆっくりと文字を追ったり、声に出して読んだりしながら、言葉を味わっていただきたいです。

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 また、いしいしんじさんによる小説「こんにちは」は、子どもたちと共同で小説をつくる、という新しい試みから生まれた作品です。
 今年8月に、かつていしいさんが暮らした長野の松本で行われたイベントで、6名の小学生といしいさんがおはなしをつくりました。本作は、それをもとに後日いしいさんが書き下ろした小説です。
 全国のいろいろな場所から参加した子どもたちといしいさんが、「みんなで松本で会うには、どうする?」「車を走らせていたら、何に出会った?」「松本のおいしい食べ物は?」と会話を広げていくうちに、なんと45分で共作の小説ができあがったのでした!
 本誌では、文章とともに、イベント当日に子どもたちが描いた絵や字も収録しています。言葉が生き生きと生まれ出てくる瞬間が紙上に再現されています。

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全方位に向かって、読む楽しさがいっぱい!

『ちゃぶ台』には、エッセイ、小説、インタビュー、絵、写真、漫画、論考、などなど、どんな年代や地域や属性の方にも「これは読んでみたい」と思っていただけるような、多彩な文章や作品が収録されています。
 ふだんは文芸しか読むことのない方や、人文書が好きな方、あるいは、イラストや写真に目を奪われた方・・・それぞれの入り口から『ちゃぶ台』に興味を持ってくださった方が、思いがけない言葉との出会いも楽しみ、また、「母語」や「土」というテーマについても、さまざまにイメージを膨らませてくださったらうれしいです。

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 言語、コミュニケーション、野菜や微生物、会議、詩、家庭料理、子どもと小説、おはなしが生まれる瞬間・・・。読み進めるうちに、あらゆる読み物が、ジャンルや内容をこえて、どこかでつながっていく。今号は期せずして、そんな、のびやかで、固有の、血の通った「母語」の力を感じられる一冊となりました。

 そして、いろいろな角度から雑誌を読む楽しさといえば、装丁も欠かせません!
 多様な読み物たちが、一つの雑誌としてどうデザインされているのでしょうか? 次回は、tentoの漆原悠一さんによる、他に類を見ない雑誌のデザインについてご紹介します!

(つづく)

ミシマガ編集部
(みしまがへんしゅうぶ)

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