月刊ちゃぶ台

第27回

おお!周防大島!合宿 レポート(前編)

2022.06.06更新

 5月27日、生活者のための総合雑誌『ちゃぶ台9』が発売となりました。
 2015年より刊行してきた『ちゃぶ台』も、今号で9号目。創刊以来、「仕事×移住」「発酵×経済」「『さびしい』が、ひっくり返る」といったさまざまなテーマで特集を組み、現場取材を大切にした「生きた雑誌づくり」を目指してきました。
 その原点はなんといっても、瀬戸内海に浮かぶ「周防大島すおうおおしま」です。代表のミシマは初めて周防大島を訪問した直後に、突然、「雑誌をつくります!」と宣言したのでした。この島で起こっていることがすごすぎる! ひとりでも多くの方に伝えたい! という思いは、つねに『ちゃぶ台』のプロジェクトを走らせる大きな原動力となってきました。

mishimagachabudai9.png『ちゃぶ台9 特集:書店、再び共有地』

 今回、『ちゃぶ台9』の完成を記念し、また、最高のかたちで次号(『ちゃぶ台10』2022年11月予定)の制作のスタートダッシュを切るために、編集チームのメンバーが周防大島で2泊3日の合宿をしてきました!
 5人の編集メンバーのうち、なんと、ホシノ、ノザキ、スミの3人(過半数!)は周防大島初上陸。「いや、なんで今まで行ってなかったの!?」というツッコミはなんとか堪えていただき、私たちが島での出来事にひとつひとつ感動している模様を見届けていただけたらうれしいです。「百聞は一見に如かず」の体感そのままに、2日間にわたってお届けします!

1日目 レポーター:ホシノ

 ついのついのついに!!! 周防大島に上陸しました。
 2015年の『ちゃぶ台』創刊から制作に携わり、中村明珍さんの『ダンス・イン・ザ・ファーム』の編集担当にもなり、7年間にわたって「周防大島」のあらゆる情報のシャワーを浴び続けて、満を持しての初上陸でした。

 書きたいこと、お伝えしたいことが溢れるほどあるのですが、すみませんが冒頭、どうでもよい話を書きます。

 今回、東京からの参加はホシノとスガの2名。新幹線で広島に向かい、京都からはミシマとノザキが乗ってくるので、各自、近くの席を予約しようという流れに。スガくんに気を遣わせまいと「とはいえすぐ隣の席とかじゃなくていいからね」と念のため伝えたところ、「となりにさせていただきました(ウフフマーク)」という全くかみ合わない返答が。なんでやねん! そして当日は朝から4時間、スガくんとの水入らずのトークからスタートしたのでした。

nsuo1-1.png 広島駅でこだまに乗り継ぎ、着いたのは新岩国駅、そこで出迎えてくれたのは、宇野千代さんの大看板! 「質実剛健」という四字熟語が頭に浮かぶような駅のつくりに圧倒されつつ、レンタカーに乗り込んで、周防大島に向けていざ! FM山口でたまたまかかったカーペンターズの調べや、途中から海沿いを走る車窓に、一同すでにハイテンションに。

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 そして。ふいに目に入ってきたのが、かの大島大橋でした。まず頭に浮かんだ感想は「信じられない」です。なぜかというと、『ちゃぶ台5』や『ダンス・イン・ザ・ファーム』に詳しいように、2018年10月に、この橋に船がぶつかり、40日間にわたり周防大島で断水が起こったということを知っていたからです。どう見ても、何かが衝突するような高さの橋ではない・・・車で橋を渡りながら、「どういうこと?」と声に出して何度もつぶやいてしまいました。恥ずかしながら、起こったことの異常さを肌身で感じられたのは、この橋を実際に見て初めてでした。

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 この橋の話にかぎらず、たとえば中村明珍さんが書かれていた、「イノシシが庭に出る」「豪雨のあとの土砂崩れがいたるところに」「免許を返納したおっちゃんとおばちゃんのために車を出す」といったことも、実際に島に来て初めて、リアリティをもって迫ってきました。百聞は一見に如かず・・・当初は取材を多く組み込んでいた『ちゃぶ台』も、コロナ下のこの数年、難しくなり、オンラインでのやりとりが増えていました。現場に身を置くということを、あらためてやっていきたいと思いました(今号の『ちゃぶ台9』では営業メンバーが書店さんの現場でたくさん取材させていただきましたので、ぜひお読みいただきたいです)。

 さて、車は周防大島を走り始めました。テンションがあがりすぎて「海に足をひたしたい」「みかんソフトクリームが食べたい」といった本能的な欲望が抑えられない一行。あとから考えれば、もう15分くらい車を走らせれば、いくらでもいい感じのビーチや大きな道の駅があったのですが、そこにいたる前の微妙なポイントで車を停車。ほかにお客さんがいない静かなJAで全員がミシマにみかんソフトをおごってもらい、普通は人が通らないような草むらをかき分けて無理やりビーチ的な場所にたどりつき、海に足をひたしました。でもこれ、なかなかにいい思い出です。

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 そして、この日のひとつめのクライマックスは、意外なところにありました。ご紹介が遅くなりましたが、この旅をともにしたキーパーソンが、文平銀座のカキウチさんです。とあるプロジェクトのために(詳細はスガのレポートをご参照ください)事前に周防大島を詳しくリサーチしていたカキウチさんが、ぜひとも行きましょうと激オシしたスポット、それは「がんもん」。他のメンバーの頭には「ピグモン」的な生物が浮かぶだけで、誰もどこに向かっているのかわからないまま、車を降りて颯爽と歩きだす垣内さんに続いて、ハードな階段を登り、そして降りていくとそこには、夕日に輝く絶景が。ちなみにカキウチさん、「巌門」の帰りの急な階段を登りながら、まあまあな声量で「海はひろいーな、大きいなー」と鼻歌を歌っておられました。素敵。

nsuo1-5.png 最後に、この日のふたつめのクライマックスは、中村家でのバーベキュー。かなり大きくなって立派な髭をたくわえたヤギの「コムギ」に見守られながら、『ダンス・イン・ザ・ファーム』に登場してくださっている方々に「はじめまして」のご挨拶をしながら、前述の島に出没するイノシシを地元の精肉屋さんがしとめて販売されているというジビエをいただきながら、これまで知らなかった周防大島のお話も、たくさんうかがいました。そして、同じ周防大島内でも、ひと山越えれば住んでいる方の年齢構成も違うというくらいに、あらゆることが個別具体的なのだということを実感しました。ただその個別具体的な悩みや試みは、日本のあらゆるところとつながっているはずで、これからも、ちゃぶ台やミシマガの連載を通して、周防大島の方々の現時点をお伝えしていけたらと思います。

nsuo1-6.png 周防大島に滞在した3日間、生命力あふれる方々にお会いし続け、おいしい自然の恵みをいただき続け、潮風と太陽を浴び続けた結果、旅の直前に寝違えた首は完治して、東京に戻ってからオフィスのモリくんに、「なんか、黒目がキラキラしてますね」と言われるほどに元気になりました。また行きたいです。

特別編「おお!すおうおおしま取材記『チン道中』」 レポーター:スガ

 ホシノが触れていた「とあるプロジェクト」。その名も「おお!すおうおおしま」。
 これは、周防大島の魅力を一枚にまとめて、八つ折りの地図「おお! すおうおおしまっぷ」を島の方々と一緒に制作するプロジェクトです。
 ちょうど3年前の春、周防大島でアートディレクターの寄藤文平さんによる「おお!すおうおおしま」ワークショップを開催しました。そこでは、事前に周防大島の皆様に、島の魅力をお寄せいただいたアンケート――このアンケートが本当におもしろくて、「嵩山展望台から周防大島周辺を一望できる!」というスケールの大きいものから、「ガソリンスタンドに表れるネコがかわいい」というご近所の人しか知らないであろう情報まで、「おお!」なところを余すことなくお伝えいただきました――を参考にしつつ、その場でもホールに詰めかけた島の方々に魅力を聞きながら、寄藤さんがホワイトボードに次々にキャラクターを生み出し続けた、伝説のイベントです(3年たった今でも、取材先で「あのときの続きですか!」と声をかけられたり、覚えていらっしゃる方がたくさんいらしゃいました)。
 この度、嬉しいことに3年ぶりにプロジェクトが再スタートすることになりました!

 周防大島に伺って2日目から、ミシマ社編集チームと「おお! すおうおおしま」取材班は別行動を取りました。取材班は中村明珍さんと寄藤さんが代表を務める「文平銀座」の垣内さんと、私スガの3人で構成されました。
 ミシマ社で周防大島といえばおなじみの中村明珍さん、この度3日間に渡る取材に全面的にご協力いただき、周防大島の端から端、橋を越えてとなりの沖家室島まで連れて行っていただくなど、本当にありがたかったです。

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夕日の丘展望台の幸せの鐘を鳴らす明珍さん

 垣内さんは、「おお! すおうおおしま」のイラストを担当される予定です。取材先では、少しでも多く記録を残すため、走りまわりながら360度撮影カメラで撮影する姿が印象的でした。

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沖家室島で360度カメラで撮影する垣内さん

 取材しながら、明珍さんに島の歴史について、いろいろ教わりました。周防大島には、88箇所の札所巡りの「島へんろ」があり、そのきっかけは、「四境の役」と呼ばれる幕末の戦いだったようです。松山の幕府軍と、山口の長州藩に挟まれる形になった周防大島は激戦地となりました。その犠牲になった方を弔うために、お寺のお坊さんが声を挙げて、始まりまったのが島へんろです。
 瀬戸内海でも3番目に広い周防大島は、もともと島全体のつながりは強くなく、島へんろが島全体を結ぶはじめてのプロジェクトだったようです。「おお!すおうおおしま」も、ご協力いただきながら、島の魅力を一枚に収め、島の方々をつなぐプロジェクトになると嬉しいです!

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 浄西寺の石垣に、その戦いの砲弾跡が残っていました

 『ダンス・イン・ザ・ファーム』にも描かれているように、食や命について考えながら、困難なときには島の方々と助け合われている明珍さんは、取材中も「また顔出してよ!」先々で声を掛けられていました。そんな朗らかな明珍さん(みなさんから「チンさん」と呼ばれています)と、元気いっぱいで取材先で物怖じしない姿が印象的な垣内さん、そしてドジの私スガの明るい3人組(?)は、「チン道中」と名づけられました。これからのプロジェクトの進行、そして地図の完成が楽しみです。

nsuo2-4.pngイノシシにも会いました


*怒涛の前編、いかがでしたでしょうか? すでに情報量が飽和している感もありますが、後編もこの調子で元気につづきます! スミによる「宮田正樹さん・喜美子さんの畑訪問レポート」、ノザキによる「内田健太郎さんの養蜂場潜入レポート」などをどうぞお楽しみに。

(つづく)

ミシマガ編集部
(みしまがへんしゅうぶ)

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