地域編集のこと

第37回

サーキュラーエコノミーから考える新しい言葉のはなし

2021.11.07更新

サーキュラーエコノミー実践』(学芸出版社)という、とても面白い本がある。オランダに住みながら、資源循環を実現したプロダクトやサービスを取材し続けた安居昭博くんが、『サーキュラーエコノミー』という言葉を旗印にして、廃棄を出さない循環型社会に向けたアクション事例を紹介している本で、僕はこれを読んでとにかくワクワクした。

地球環境に配慮したエコな活動や、サスティナブルな取り組みというのは、企業にとってCSR的な、儲からないけど仕方なくやる社会貢献活動な意味合いが強く、いわば経済活動に反するもののように思われ続けてきた。カーボンニュートラルにしろ、SDGsにしろ、日本の取組事例が表面的なPRに終始しがちな理由は、そこにあると僕はずっとそう思っている。

生命や日々の生活に深く関わるコロナ禍の対策においてなお、飲食店や旅館などへの直接支援ではなく、大企業に大きなマージンを与えるGoTo的な仕組みを優先するなど、いまの政府はある意味でとても狭義な経済に固執した施策ばかり進めるようにみえる。しかしそれに対して多くの国民は疑問を抱かず、それどころか緩やかに支持さえしていることが選挙結果で明らかになった。

つまり、喫緊の課題であるはずの地球環境保護についてすら、経済成長的な文脈に乗せなければ、一歩も前に進まないという現実に僕はずっと忸怩たる思いを抱き続けている。しかし「サーキュラーエコノミー」はこれまでの環境活動提案とは違う。単なるエコの推奨ではなく、エコノミーの推奨なのだ。

「捨てる」というフェーズを限りなく0に近づけることで、コストがカットされ、より効率的で安定的な経済を作っていくのが、サーキュラーエコノミー。それでいて地球環境に対する負荷が減るのだから、もはや、これ以外の何を目指すというのか?という話だ。

ただ、こんな風に言うと、そんな美味しい話があるわけないとか、非現実的で夢みたいなことを、などと言う人がいる。しかしそうだろうか、現状の仕組みこそ、現実から目を逸らしたものになってはいまいか。2月4日に大量廃棄される節分の巻寿司で多くの人たちが気づいたように、目先の数字を追いかけ続けた結果、大量のゴミを生産し続けていることの方がよっぽど非現実的だ。一個人で考えれば、あまりに非現実的で非効率だと判断するような決断や行動を、組織は平気でやる。そういった企業がみているのは、生活者ではなく消費者だ。

つまり、夢のようにも思えるこのサーキュラーエコノミーを実現させるためには、現在の経済活動がいかに多くの犠牲のもとで成立しているかという現実に向き合わなければけない。その気まずさを乗り越えるチカラを持つ組織がどれだけ出てくるかが、今後の大きなポイントだろう。

先日、この書籍の出版記念イベントへの登壇のオファーがあり二つ返事で引き受けた。すでに著書を拝読していたし、安居くんは僕にとっていまもっともお会いしたい人だったからだ。そのイベントのなかで、安居くん自ら、この『サーキュラーエコノミー』という言葉の長ったらしさをなんとかできないか? と相談された。しかし僕はこのサーキュラーエコノミーという言葉自体に魅力を感じていたし、この言葉をもって資源循環の取り組みをより推進させようとした安居くんの編集力に感服していたので、その場ではそれを考えようとすら思わなかったのだけど、確かにネットメディアの見出しには少々多い文字数ゆえ、より一層この考え方を広めるためには、もう少し言葉に向き合ってみても良い気がしてきた。

そこでそもそも魅力に感じていた「サーキュラー」と「エコノミー」という相反するイメージの組合せから、強くインスピレーションを受けて、浮かんだ言葉が

エコロミー

エコロジーとエコノミーは共存出来る。というメッセージを、経済最優先な人たちに、
エコロミーの実践
エコロミー事例
エコロミーな事業
エコロミー経営
エコロミーな未来
と、この言葉の展開をもって伝えられないだろうか?

と、思うので今後しばらく言い続けてみようかなと思う。こういった小さな言葉から、少しづつ世の中の空気を変えていくことが、編集者の大切な仕事だから。

藤本 智士

藤本 智士
(ふじもと・さとし)

1974 年兵庫県生まれ。編集者。有限会社りす代表。雑誌「Re:S」編集長を経て、秋田県発行フリーマガジン「のんびり」、webマガジン「なんも大学」の編集長に。 自著に『風と土の秋田』『ほんとうのニッポンに出会う旅』(共に、リトルモア)。イラストレーターの福田利之氏との共著に『いまからノート』(青幻舎)、編著として『池田修三木版画集 センチメンタルの青い旗』(ナナロク社)などがある。 編集・原稿執筆した『るろうにほん 熊本へ』(ワニブックス)、『ニッポンの嵐』(KADOKAWA)ほか、手がけた書籍多数。

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