第55回
仕事の悩みに効く!『仕事のお守り』座談会
2023.04.29更新
こんにちは。ミシマ社入社二年目の二シオです。
いきなり私事で恐縮ですが、私は仕事で迷いに迷っております。
いろいろやらかしてしまったり、あるいは自信のなさから受け身の仕事に転じてしまったり・・・。
苦しさや不安が心にある方は、ぜひこちらの本を手に取っていただければ嬉しいです(仕事が順調だ、という方は、さらにその調子をあげるためにぜひ)。
『仕事のお守り』(ミシマ社編)というタイトル通り、心が折れそうなとき、本気で何かを始めたいとき、身体がガチガチなとき、読みたい文字通り「お守り」のような本です。
今回は『仕事のお守り』を編集した入社14年目のホシノと入社5年目のスガ、入社2年目のニシオの3人で『仕事のお守り』を読む座談会をしました。それぞれどんな気持ちで『仕事のお守り』を受け取ったのでしょうか?
【メンバー紹介】
ホシノ
入社14年目。1982年生まれ。神奈川県出身。『仕事のお守り』の編集者。若手を引っ張る自由が丘の姉貴分。趣味はフラダンスと山歩き。今読んでいる本は『大地の母』全集。
スガ
入社5年目。1994年生まれ。神奈川県出身。「仕上がるまで終わらない!寄藤文平と営業・スガの時間無制限デザイン講座」ではデザイナーを務めた。趣味は都々逸と和菓子作り。プロ野球事情にとても詳しい。今読んでいる本は『亡命ロシア料理』と『チェス入門』。
ニシオ
入社2年目。1998年生まれ。千葉県出身。「新人」という肩書きを失い、日々の緊張感が増している。趣味はヨガとセルフマッサージ。今読んでいる本は『入社一年目の教科書』と『入社一年目 ビジネスマナーの教科書』。
ネジを外せる力
スガ まず『仕事のお守り』(ミシマ社編)を読んで、二シオくんはどんな仕事のお守りがほしいと思いましたか?
ニシオ 「お守り」と言いますか、仕事の枠の中で、はっちゃけられたり、勇気を持って物事をひっぱっていく力が欲しいです。潜在的にはそういう自分もいると思うんです。なので、そういう仕事の場で、仕事モードからネジを一本外せるドライバーのようなお守りがほしいですかね。
スガ ホシノさんは物事を引っ張っていく推進力がありますが、ということはホシノさんはネジが一本外れている、ということでしょうか?
ニシオ いやいやなんてひどい解釈・・・。ネジを外せるというか「殻を破る力」といった方が適切かもしれません。
ホシノ (笑)西尾くんは最近の合宿でひと皮むけて、タケノコの先っぽが土の上に出てきましたね。足の裏に感じるくらい。
ニシオ タケノコの先っぽ(汗)。あの葉っぱのところですよね? 食べられるくらいのところまで、がんばります。
そう「殻を破る力」という先の話と繋がる点で、とてもためになる言葉がありました。京セラ、KDDIの創業者 稲盛和夫氏の言葉です。
もうダメだと思ったときが仕事の始まり。(p.60)
たとえば、文章を書いて手が止まる。営業先で全く受注が取れずに落ち込む。普通、そこで止まってしまうところを、稲盛氏はここからがスタートだ、という。ストレートですが、グッとそうなんだ! と勇気をもらえるワンフレーズでした。
誠実であること
ニシオ スガさんは仕事のお守りにどんなものがほしいですか?
スガ もっと誠実でありたい、というのがありますね。自分でも自分のことを信頼できるようでありたい。どこか手を抜かないかなという、自分に対する信頼の無さがまだまだあるので。
ホシノ 自分が誠実であるか? 疑い続けられる、というだけで誠実な感じがしますね。
スガ この本で、数学者である岡潔さんがこんなことを書かれていました。
成熟は遅い方がよい。(p.203)
遅くても良い、遅ければ遅いほど良い、と言っていただけると、変に小手先の手を使わなくて済みそうです。すると、自然にもっと誠実になれるのかなという気がしました。
ホシノ これはあくまで文章の一部を引用しているわけですが、名著ってワンフレーズだけで「強い」ですよね。もしかしたら前後の文脈を踏まえると、感じられる意味がまた違うのかもしれないけれど、その一節だけからでも学べるというのが、名著のすごみだなあと思います。
みんなこういう時期をくぐっている
スガ ホシノさんはこの本の編集をされましたが、どこにグッときましたか?
ホシノ 私がこの本を編集した当時は、まだ編集の右も左もわからない時期だったんです。なので、この本で、行き詰まった時のエピソードを教えてください、と数々の著者さんに依頼しましたが、私自身が一番行き詰まっていたんですよね(笑)
ニシオ ホシノさんにもそういう時期があったんですね!
ホシノ 特に印象的だったのが、編集者・柿内芳文さんの「ぶざまに戦え」というタイトルでご寄稿いただいたものです。
深夜のカラオケボックスで、ミッシェル・ガン・エレファントを叫びながらダイブするほど、行きづまっていたことがあった。二四歳の頃だ。(p.46)
柿内芳文さんは編集者としてすでに大活躍されていたのですが、編集者になりたての頃の、苦悩していた様子が書かれていて、みんなそういう時期をくぐっているんだなあ、と思いました。
スガ みんなこういう思いをしているんだ、めっちゃ頑張って本を出したりしているんだ、というのは純粋に勇気をもらえますよね。
ホシノ そうですよね。
ビジネス本をあまり読まない方も
スガ 料理研究家の辰巳芳子さんの「『クレソンを食べると』を身にも心にも溜め込んでいる人間が、今の世のリーダーになれる資格だと思います」(p.88)という言葉があったり、これはお守り言葉ではないんですけど、ある書店員さんが、人に会うのも辛かったり、できなかったりするときは「煮込み料理」をすると、解決する。
料理が糸口になる場面が結構あって、それって普通のビジネス本ではあまりない広がりですよね。
ホシノ 王道のビジネス書とはまた違いますね。
ニシオ そうですね。またビジネス書でありながら、「行きづまり」に寄り添ってくれるというのは、あまり多くはない気もします。
ホシノ 平川克美さんの言葉に「明日は明日の風が吹く」(p.214)という言葉がありますが、もうその言葉だけで、すごく救われる感覚がありました。
ニシオ 続けて「実際には明日も今日と同じ風が吹くかもしれませんが、そう呟くだけでなんだか気持ちが楽になるような気がします」(p.214)とありますが、ほんとうにそうで、まさに「仕事のお守り」受け取った感覚があります。
スガ だから普段あまり自己啓発本やビジネス書を読む習慣のない方にも、ぜひ手に取っていただきたいですね。
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誰もが様々な形で向き合うことになる、働くということ。この本でも、働く喜びから働く大変さ、いずれの感情も『仕事のお守り』では扱われています。また書籍に赤の用紙が使われていたり、表紙に金と銀で箔を押されていたりと、見た目の縁起の良さも、この本の魅力のひとつです。ぜひ、「お守り本」としてお手元に置いていただけたら嬉しいです!