今月のミシマ社

第10回

今年の一冊座談会「これからのミシマ社に贈る本」(2)

2018.12.30更新

 ミシマ社では、毎年の終わりに「今年の一冊座談会」としてメンバーが今年読んでもっとも印象的だった本について語る会を行っています。今年のテーマは「これからのミシマ社に贈る本」。本について語ることを通して、これからのミシマ社を語る。そんな会が京都と自由が丘のそれぞれで行われました。昨日は京都メンバーによる座談会の様子をお伝えしました。今日は自由が丘メンバーの様子をお届けいたします。みなさんも、今年読んだ本を思い浮かべながら、ぜひお楽しみください。

***

イケハタがミシマ社に贈る本

イケハタ ぼくは『アナキズム 一丸となってバラバラに生きろ』(栗原康著、岩波新書)を選びました。

モリ まさかのアナーキー被り・・・(注:ミシマは『アナーキズム人類学のための断章』という本を紹介しました。詳しくは昨日の記事をご参照ください)

イケハタ アナキズムは「無政府主義」と訳されることも多いのですが、政府に限らず、あらゆる支配からの自由を目指した運動、生き方なのだということが、この本を読むとよくわかります。おカネ、規則、上下関係・・・etc. ぼくたちはとかく色々なものに縛られて生きている。同じルールに従わない人を見ると「なんでお前は従わないんだ」と圧力をかけたりもする。自分で自分の首を締めていることに気がつかずに・・・。

 ここで紹介されている、アナキズムの父・プルードンの言葉「あなたが他人にされたくないことを他人にしてはいけない。いつでもあなたがされたいとおもった善いことを他人にするのです」には、ハッとさせられました。

ミシマ 周防大島の事例がまさにそれだよね。

イケハタ ルールやマナーに縛られて、目の前の困っている人に素直に手を差し伸べられなくなっている自分たちへの戒めとして、『うしろめたさの人類学』とあわせて座右に置いておきたい一冊です。


モリがミシマ社に贈る本

モリ アナーキーな本が続いたんですが、違う方向の本を紹介します。『ワーク・ルールズ!』(ラズロ・ボック著、東洋経済新報社)。「世界最高の職場」と呼ばれるGoogleの人事や制度がどう設計され導入されたのかが明らかになる一冊です。

 この本を読むと、Googleの数々の施策が、実はとても地道な調査と実験を繰り返して組織に定着してきたことが分かります。
 モリはミシマ社にITシステムを導入していきたいのですが、ミシマ社に元々ある野生の要素、アナーキーな要素とシステムをうまくブレンドしていくのが課題だと思っています。Googleを見習って、コツコツ検証しながら手触りの良いシステムを作り、社内に浸透させていきます。

ミシマ それぞモリ君の役割だよ。


サトウがミシマ社に贈る本

サトウ 与那国島には「与那国馬」という小さくて、野生に近い形で暮らしている、たてがみがぼさぼさな馬がいて、その馬とくらす著者のお話です。著者の河田さんは「今の時代は心と体が一致していない人が多い」と仰っているのですが、この言葉、最近いろいろな人が指摘していることなような気がするんです。馬は、嫌なことは嫌だとはっきり言うし、興味があったり気持ちが高まっているときはダイレクトに体に表れるのだそうです。河田さんが見つけ出した馬との対話のしかたがすごくおもしろくて、馬語の実用書でもあるんです。実は、この本に影響されて乗馬に行きました。

モリ めっちゃ影響受けてる!

サトウ 那須高原の牧場はひろびろのびのびしていて、馬も心地好さそうで・・・。いつか与那国馬にも会ってみたいです。「のびのび生きる」が上手な馬。ミシマ社に「馬」を贈ります。

ミシマ 馬乗りたくなってきた・・・。


ホシノがミシマ社に贈る本

ホシノ 私は『されど愛しきお妻様 「大人の発達障害」の妻と「脳が壊れた」僕の18年間』(鈴木大介著、講談社)を選びました。妻の発達障害に、懸命に寄り添っていたつもりだった著者が、自身の脳梗塞とその後遺症を体験して、じつはわかっていなかったことの多さに打ちのめされ、そして回復に向かうにつれて、一度わかったはずの妻の感覚がまた薄れていく、という、その過程の心情と二人の関係の変化が、魅力的な文体で綴られています。
 私たちは、一番身近な、最愛の人のことでさえも、完全に理解することは難しいのだけれど、そのうえでなお、"ともにある"ということの儚さや大変さ、おもしろさを再確認できるような一冊でした。

***

 ミシマ社に贈る一冊、いかがでしたでしょうか。
 メンバーひとりひとり、個性が分かれつつも、なにか通底するものがあるような、面白いラインナップになりました。
 皆様も、来年の自分自身や自分の仲間に向けて贈る一冊、という視点で本を選んでみてはいかがでしょうか。きっと、一人で読むのとは違う読書体験ができるかと思います。

(終)

ミシマガ編集部

ミシマガ編集部
(みしましゃへんしゅうぶ)

 

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