今月のミシマ社

第10回

今年の一冊座談会「これからのミシマ社に贈る本」(1)

2018.12.29更新

 ミシマ社では、毎年の終わりに「今年の一冊座談会」としてメンバーが今年読んでもっとも印象的だった本について語る会を行っています。今年のテーマは「これからのミシマ社に贈る本」。本について語ることを通して、これからのミシマ社を語る。そんな会が京都と自由が丘のそれぞれで行われました。本日は京都メンバーによる座談会の様子を、明日は自由が丘メンバーの様子をお届けいたします。みなさんも、今年読んだ本を思い浮かべながら、ぜひお楽しみください。

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ミシマがミシマ社に贈る本

ミシマ 今年の一月に出た平川克美さんの『21世紀の楕円幻想論』は、多くの若手クリエイター、研究者たちに支持をされました。

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 それと、今年毎日出版文化賞特別賞をいただいた松村圭一郎さん『うしろめたさの人類学』が「これから」を語る上で欠かせない思想書なのだろうと思います。
 この二冊にもう一冊加えるとすると、本書です。発刊は2006年ですが、今年になって僕は読んだので選書に入れました。久しぶりに、全身揺さぶられるような読書体験でした。
 というのも、これまで、資本主義と対をなすのは社会主義、とあまり考えることなく思ってきましたが、グレーバーは、どちらも「消費者」をつくらないとなりたたないという点で同じと言い切ります。代わって、アナーキズムこそが、平川さんの言う楕円のひとつの焦点なのだと言う。それも、「大人のアナーキズム」が必要だと。そうすれば、無政府状態というのが、「混乱」ではなく、穏やかな秩序を生む力になりうる、と。これは、目から鱗でした。

ワタナベ なるほど。その考えは、松村先生が言う「世界に<スキマ>をつくる」ことにもなりそうですね。

ミシマ まさにそうです。たとえば、先日周防大島で断水がありました。島のライフラインが断たれたまま40日も放置、もはや行政や政府が機能しない時代に入ったことを露呈したと言えます。結局、自分たちでなんとかするしかない。そういうとき、本書の発想がすごく役立つと思うんですよね。

ノザキ 私もこの周防大島の一連の出来事がきっかけで、外側から何かに関わる場面があったときに、自分が何をできるのか、自分はどうするのか、そういうこと考える時間が増えました。私が今回選んだ一冊も、このことを受けて選んだんです。

ハセガワ 周防大島のこと、私、実家の親に話したんですよ。でも、こっちで思っているほどには、あんまり、伝わってないなーと感じました。ちょっと残念だったけど、でも、私はミシマ社を通してこのことが近くにあるからそうなだけで、だから、せめて近くにいる人には、誠実でありたいなーと思いました。

ミシマ そうですね。今回、僕たちはサポーター限定で寄付を募り、ご縁のある方々の少しでも助けになるのなら、という思いで始めたわけです。そうして、チンさんや内田健太郎さん(「ちゃぶ台」に4年連続で寄稿してくれている周防大島の養蜂家)たちが動いてくれた。それは、これからの時代を生きて行くのにすごく必要な「アナーキズム」的方法だったのかな、と今では思っています。


ハセガワがミシマ社に贈る本

ハセガワ この本では、同じ職場で働く、年代の違う3人のマリコが描かれているんですけど、20代のマリコにたくさんハッとさせられて、それがすごくショックで。下の子の気持ちに気づけてないことに、ガーンって(笑)。でも、どのマリコにも、いろんな思いや考えがあって、それぞれ間違ってなくて。

ミシマ そうだね、これが正しい、ってことじゃないもんねえ。

ハセガワ 自分の基準で物事を判断しがちなんだけど、それは本当によくないなと思って。「嘘っぽくなく働く」っていう言葉がでてくるんですけど、この本を描かれた益田ミリさんがまさにそうで、ミシマ社メンバーは、一緒にお仕事させてもらって、それを知ってるじゃないですか。だから、読んで感じることはそれぞれでも、この本の芯の部分の、大切なところは、みんな共通でわかるんじゃないかなと思って。

ミシマ すごい本だよねえ、これほんとに。ほんっと、すごいと思う・・・(ちょっと浸るミシマ)。


タブチがミシマ社に贈る本

タブチ 僕は斎藤孝さんの『偏愛マップ〜キラいな人がいなくなるコミュニケーションメソッド』を選びました。偏愛マップとは、自分が好きなもの(偏愛しているもの)を、1枚の白紙に描きまくったマップのことです。初対面の人でも、その人が偏愛するものを知れたら、グッと距離が縮まりますよね。僕自身、書店さんへの営業をしているときに、書店員さんに好きな本やおすすめの本を聞いてみて、その本を買って読むことがあります。そうするとその書店員さんの人となりがなんとなくわかり会話が繋がって、その後のコミュニケーションもいい感じになることが多いです。この「ミシマ社に贈る本」というテーマの選書も、まさにメンバーの「偏愛」が滲み出ていると思うのですが、お互いに偏愛しているものをさらけ出してクセをわかった上で、朗らかにやっていけたらいいなと思います。


ノザキがミシマ社に贈る本

ノザキ 私は、日上秀之さんの小説『はんぷくするもの』(河出書房新社)を選びました。震災から5年後の被災地で個人商店を営む主人公が、ツケ払いをした1人のお客さんへの3413円のツケをめぐって、考えたり、行動したり、行動するのをやめたりする、そんな日常のはなしです。
 私にとってこの本は、普段「普通に考えてダメでしょ」って思っているようなことが、本当にダメなことなのか、なぜダメなのかわからなくなる、改めて自分のなかの倫理観を問い直す、そんな一冊でした。ミシマ社の人間として行動しつつ、一人の個人として自分の頭でしっかり考えながら仕事をする、という宣言を込めて、この一冊をこれからのミシマ社に贈ります。

ワタナベ 手に取ったきっかけはあるんですか?

ノザキ 家の近くの本屋さんで文芸棚を端から順番に見て、この本が最もびびっときた一冊だったんです。


ワタナベがミシマ社に贈る本

ワタナベ この本は、夫と別れることになった書店員の花田さんが、とある出会い系サイトに登録し、そこで会う人に合いそうな本を勧める活動を始め・・・、という体験談的私小説で、まあとにかく面白いです。「向き合う」ことで道が切り拓かれていく、という真実のようなものが描かれているからです。向き合うのは、他人でもあるし、自分の気持ちでもある。ときにそれは本でもあるし、困難な状況に対してもそう。要は、自分の気持ちを目の前のことにちゃんと向けて、エクスキューズなく向き合い、そこに思いを寄せていけば、何かがちょっとずつ変化していく。その変化こそが「おもろい」につながる道だよな、と。この本はすごくまっとうで爽やかです。ぜひ読んでください。

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いかがしたか? 明日は自由が丘メンバーが選んだ本を紹介します。

ミシマガ編集部

ミシマガ編集部
(みしましゃへんしゅうぶ)

 

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